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こんな時だからバーチャルNY留学してみた 第二話

第一話はこちら↓

遡ること数時間前。

私はPCの前で、優柔不断の鬼と化していた。

そもそもどのクラスを選べばいいのか。

HBスタジオにはさすが、というべきか、とにかく本当にたくさんのクラスがある。

「アクティング」「シーンスタディー」「アクティングwithカメラ」「スピーチ」、「ボイスムーブメント」、「ミュージカルシンギング」「zoomオーディションのための対策」、「アクティングforティーン」、果ては「俳優と税金」のクラスまで。

もうそれはそれは至れり尽くせり。学びたいことはこれで全部網羅できるでしょ?と言わんばかりのラインナップ。しかも、今現在これらのクラスすべてがオンラインだから、世界中どこからでも受けられる!
なんて素晴らしい!

ところで、「アクティング」と「シーンスタディ―」の違いって何だろう?

何となくこうかな?っていうぼんやりとした感覚はあるけれど、わざわざ分けるほどかな?分けた場合、カリキュラムはどう組まれているんだろう?

とりあえず、私が専門としている「シーンスタディ―」は絶対見ておきたい。ただ「シーンスタディ―」は何をやるのかが明確な反面、「アクティング」はわからないから、こちらもものすごく気になる…

うんうんと悩むこと数時間。(この時点で半日が経過)


「うん、両方聴講しよう。」


優柔不断のくせに、悩みすぎると吹っ切れるパターン。0か100かで振り切っていくスタイル。ザッツマイスタイル。

さ、次はどの時間の、どの講師のクラスを聴講するか。

クラスを決めるための優先順位は…

1.ウタ・ハーゲンテクニックをメインに教えている。

2.ウタ・ハーゲンから教わっていたことがある。

3.クラスの日程

特に上の二つは絶対に外せない。HBスタジオに通いたいと長年願い続けてきた理由がこの二つだから。

私の演技のベースであるウタ・ハーゲンテクニックをもっともっと知りたい、習得したい。それをきちんと教えられるレベルにまで高めたい。

それが、私が多大な時間とお金を投資して、学びを続けているモチベーションに他ならない。

絶対に揺るがない優先順位を胸に、講師の紹介ページでひとりひとりの経歴やメッセージを読んでいく。


はぁ…さすがHBスタジオ。

ウタ・ハーゲンから直接教わっていた講師が、「シーンスタディ―」3クラス中、2クラスを受け持っている。軽々と優先順位をクリアしてきたな。

「アクティング」の方は直接ウタ・ハーゲンに教わった講師はいないけれど、ウタ・ハーゲンテクニックにフォーカスしている講師はいる。

よしよし。それじゃ、スケジュールを確認していこうかな。

えっと、見てみたい講師のクラスは、毎週火曜の2:30から5:00。もしくは、毎週金曜の12:30から3:00ね。んー、どっちでもいいなー。



ちょっと待て。


ニューヨークって日本と時差何時間だっけ?


「OK、Google。ニューヨークと日本の時差を教えて?」

「13ジカン(当時夏時間)デス。」



じゅ、じゅ、じゅうさんじかんーーー!!??



おいおいおいおいおいおい、昼夜ぴったり真逆じゃんか!

LAはこんなしんどくなかったよ!?普通の時間に日本に電話とかしてたよ?私!


ってことは、つまり、毎週火曜日の2:30 pm-5:00 pm(ニューヨーク時間)の日本時間は

水曜日の


3:30 amから6:00 amーーー!?



いや、ナニコレ。

これ、「今日は早起きして朝活しました!」とかそういうレベルじゃないよね?

寝なきゃいいってことか?いや、でもこれ、平日だからこの後普通に出勤なんですが?


膨らんだ希望が、しゅるしゅると現実の前に萎んでいく気配。

この「現実」ってヤツが、隣に座って親しげに話しかけてきたら要注意だ。
ヤツは私のことを理解している顔をする。
優しい顔で、優しい言葉をたくさん投げ掛けてくる。
安心させようとしてくる。

だけど、ヤツが本当に私を理解していることはない。

絶対にない。

これだけは断言できる。

ヤツは私の心を知りはしない。

むしろ、私の中の柔い部分を、人としての核を、「大人なんだし」とか「みんなそうやって生きてるんだから」とか、そんな風な、いかにも正しそうな鎖で縛りつけて封印しようとしてくる。

私は一度、それで私の心を壊死寸前まで追い込んでしまったことがある。

そんなことになるとは、もちろん思いもしなかった。
ただ当たり前のように「現実を見なきゃ」と思っただけだ。そう思って、誰もが当たり前にしていることを、当たり前にしていただけだ。

だけど、結果、それは私自身をひどく、ひどく傷つけて、裏切ることになった。

それ以来、私は「現実」という名前のヤツが発する、肌触りのいい安心感や言葉より、どんなにつたなくても、優柔不断でも、不完全でも、私の心の方を大切にすることにしている。


ヤツが隣に座り込む前に、さっさと立ち上がってしまおう。

「はい、金曜日に決定」

やりたい!と思った気持ちの風船が、針をさされて一瞬ではじけ飛ぶ前に、私は悩みまくった半日などまったくなかったかのように、ものの5分でメールを作成し、送信ボタンを押したのだった。


→次回、初めての聴講。そこで待ち受けていたものは…

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