今年のカフェオレ部門は、ドトールの『ハニーカフェオレ』

 コーヒーが好きで、毎年、年末のこのくらいの時期になると「コーヒー大賞」をひとりで選考している。

 今年のカフェオレ部門は例年にもまして激戦だと言われたが、ついさきほど選考が終わり、ドトールの「ハニーカフェオレ(アイス)」の受賞が内定した。受賞理由は大きくわけて次の3つだ。

1.適度にスウィート

 ハニーカフェオレは、その名の通りハチミツの自然な甘さがメインで、甘いけど甘ったるくはない、絶妙なラインだ。

 派手に露出した服装で人目もはばからずイチャつくのが「フラペチーノちゃん*」の甘ったるさだとしたら、ハニーの甘さは、映画館で本編が始まるまでのあいだ、映画泥棒がクネクネしてるあいだに、暗闇でそっと手を重ねる程度の、控え目な甘さだといえる。

 おとなの日常はツラく苦々しいことの連続だから、ときにある種の甘さを必要とする。だが、その甘さにどっぷり浸かってしまうと、今度は、過酷な日常に戻るのがおっくうになる。その点、ハニー姉さんは、控え目な甘さで一時の休息を提供しつつも、最後はカフェオレのほんのりとした苦みで、ビターな日常に戻りゆく大人の背中をポンと押してくれる。

* カフェオレ部門の門戸は広く、純粋なコーヒーとジュース以外、ほぼすべてがノミネートされる。

2.目にもとまらぬスピード

 よく知られるように、ドトールの氷の敷き詰め方(密度)は尋常ではない。ただのカフェオレなのに、まるでこれからロシアへ輸送されるマグロのようにキンキンに冷やされる。体感温度は余裕でマイナスだ。

 その冷たさのおかげなのか、ひとくちストローで飲むと、ハニーカフェオレの美味しさは、光の速さで脳まで到達する。ストローに口をつけた、と意識するかどうかのところで、すでに脳はハニーを「受け取っている」。アマゾンで注文確定のクリックをしようとした瞬間に、自宅のインターホンが鳴り、ドアの前に宅配のお兄さんが待機している現象と同じだ。なにごとも速いにこしたことはない。

3.名前がキュート

 「ハニーカフェオレ」というシンプルな商品名は、ハニーの素朴な可愛さをよく表している。変にドトールらしさがないところに好感がもてる。

 僕のような地味なサラリーマンだと、名前がやたらと長くどこか気取った「フラペチーノ勢」を注文するのに、けっこうな勇気がいる。綺麗にライトアップされたフラペチーノ・ツリーは、インスタのど真ん中で生きる女子大生——パンケーキやプレッツェルを主食とする、キラついた女子大生——のために輝いているように思え、なかなか近寄りがたいのだ。

 ハニーカフェオレの注文も少しは恥ずかしいが、短くてぜんぜん言いやすいし、Tポイントカードを探すふりをしながら事務的に言えば、恥ずかしさもだいぶ緩和される。ハニーカフェオレは、可愛さをある程度アピールしつつも、かなりおじさんフレンドリーなネーミングといえるだろう。


 スウィート、スピード、そしてキュート——。以上の3点から、今年のカフェオレ部門はハニーカフェオレに決めた。これにて今年のコーヒー大賞:カフェオレ部門の講評は終了とする。


 ——最後にひとつ・・・。もうバレてるかもしれないが、じつはハニーに対する個人的な感情が、今回の選考に大いに影響している…。あけすけに言ってしまえば、これを書きながら僕は、ハニーを愛している自分に気が付いた。私情を挟むなんて、選考委員として失格だ…。

 振り返れば、ハニーと出会ってからもう半年以上がたつ。しかし僕は飽きもせず、ドトールに足繁く通い、必ずハニーのラージを注文する。仕事帰りに電車を一本遅らせればシートのはじっこに座れるのに、僕はギュウギュウの電車に乗りこむ。なぜか? 3分でも早くハニーに会うためだ。

 いくら注文しやすいからといって、同じ店舗で毎回ハニーハニー言ってれば、レジの女子大生に「ハニーカフェオレのやつ」として覚えられてしまう…。もしかしたら裏では「プーさん」というあだ名で笑われているかもしれない…。だが、僕はそれで一向にかまわない。なぜか? ハニーが好きだからだ!

 僕はハニーを心から愛している。その気持ちに嘘はない…。たとえいまは一方通行の愛だとしても、いつかきっと振り向いてくれる日がくると信じ、僕はハニーを愛しつづける。

 僕のハニーハントは、始まったばかりだ。


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なお、正式名称は『アイスハニーカフェ・オレ』です。→ドトールのサイト
その他、過去のおすすめnoteはこちらにまとめてます。

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七瀬 充

コメント1件

コーヒーが飲めないので、裏山です
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