キーボード

(後編)Enterキーを強く叩く後輩をどう注意するか?

 きのう話したように、他人の癖を注意するのも一苦労だ。誰しも人間関係に余計な摩擦を生みたくないと思う。

 しかし、だからといって、望ましくない癖を放置し周囲はそれに耐えるべきだという話にはならない。短期間ならまだしも、職場のような閉鎖的な環境だと、ほんの少しのストレスが長期的には大きな問題になりうる。たかがEnterキーの強打ぐらいで…と笑って見過ごすわけにはいかないのだ。

 それでは、どう注意するのが良いのか?

 いろんな注意の仕方を7つに分類し、それぞれの良い面と悪い面を考えてみた。


① 直球ストレート型

「おい、お前!それ、うるせぇだろ!周りのこと考えろ!」
「おい、てめぇ!バカみたいにエンターキー押してんじゃねぇよ!」

(+)こっちは迷惑してるんだとの意志が明確に伝わる。

(−)強すぎる。直球すぎて響かない。必要以上の反感を買ってしまい、2chやTwitterでネタにされる可能性。


② 一般論・伝聞型

「えっと、これは一般論なんだけどさ、一般論でいうと、ちょっと強いよね。エンター押すの。そういえば、このあいだ雑誌のコラムでも読んだな。みんなキーボード強く押しがちなんだって。ぼくは別になんとも思わないけど」
「ここだけの話、龍門先輩がそれ気になるって言ってたよ。ぼくは別になんとも思わないけど」

(+)説得力が増す。自分の手が汚れない。

(−)なかなか姑息。


③ 人のふり見て我がふり直せ型

何も言わず、自分が後輩以上にキーボードを強打しまくる。

(+)後輩に周囲の気持ちを実感してもらえる。

(−)一定期間うるさい。逆に後輩から注意されるかもしれない。


④ 公務員型

「(別室に連れ出して)君のためを想って言いますけど、・・・」
「私も昔は散々同じミスをしましたけど、・・・」

(+)別室で叱ったり共感したり、一応、教科書的には正しい(と思う)。何よりも「ちゃんと注意した」という事実(アリバイ)ができるので、リスクを消すことが重要な公務員や大企業社員向け。

(−)タイピングひとつで仰々しい。どうしても「業務感」がでるので心理的なキョリができ、後輩も形式的な返答に終始する可能性。反省は一時的か。


⑤ 雑談・ジョーク型

「もしかしてドラムとかやってた?なかなかいいキータッチ音させるてるからさ!それ、どうやってんの?YOSHIKIってかっこいいよね」
「(後輩がEnterを押すたびに飛びはねながら)おいおい、おれ、実はそのボタンでジャンプするマリオだって知ってた?(笑)たまには休ませてーや(笑)」

(+)穏やかな雰囲気で話ができ、お互いイヤな気分にならない。

(−)遠回しすぎて注意だということに気付かれず、ただ雑談しただけになる恐れ。また、「先輩のジョークがイタい」と、2chやTwitterでネタにされる可能性。


⑥ 口当たりだけまろやかにしつつ、しっかりボディを打つ型

「いや、ぜんぜん大したことじゃないんだけど、それやめたほうがいいかも。気になるし」
「ごめん。悪気はないと思うんだけど、もう少し優しくタイピングできる?」

(+)バランスがとれていて実用的。

(−)自分の色が出せない。


⑦ 森の中に木を隠す型

「お前、あの資料の数字 間違ってたぞ?棒グラフの単位も抜けてたし、印刷は不鮮明だった。さすがにアカンだろ!今後気をつけろよ!あとタイピングも静かにやって」

(+)別件で自然に沸いた熱を利用しながら、ウォームダウンする過程でついでに注意できるので負担が少ない。

(−)内容的におまけになってしまい、軽く受け取られがち。

☆ ☆ ☆

 うーむ、考えれば考えるほど面倒くさいことになったな…。やっぱり⑥のバランス型が無難だろうか。でも、自分の色が出せないからな…(x_x) ここは、思い切って①の直球ストレート型で言ってみるのもアリかな…。

 ——しかし、まあ、こうしてあれこれ考えていると、自分が新人の頃いろいろと指導してくれた先輩への感謝の気持ちがこみ上げてくる。当時の僕は「いちいちうるさいな」と心の中で反発することもあったけど、きっとそう思われることも想定したうえで先輩は渋々注意してくれていたのだろう…。コイツがのちのち恥をかくことになるから、めんどうだけど言ってあげとくか、と。たしかに振り返ってみれば、あのとき先輩に見放されて自己流を続けていたら・・・、ぞっとする面が大いにある。

 だから、今度は僕が後輩を注意しないといけない。面倒くさいでは済まされない。とっさに上の7つのうちのどのセリフが出てくるかわからないけど、今ならどれを言ってもあんまり関係がない気がする。こういう時は、何をどう言うかではなく、「いちいちうるさいな」と思われる心の準備をしておくことこそが大切なのかもしれない。2chやTwitterでネタにされても別に死ぬわけじゃないんだし——。


 ところで、後輩にもいつかこうして僕に感謝する日がくるのだろうか?
 (なお、この文は、いつもより少し強めに叩いて改行しました。)

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