800字チャレンジ#9「猫のふり」

※カゲプロ夢小説(孤児院組/学パロ)
※名前あり固定主
※800字チャレンジ100本ノックの自分用記事


「もしかしてカノが化けた猫って、アレルゲン出ない?」
「アレ、アレル何って?」
「ちょっと!僕の事化け猫みたいに呼ばないで欲しいんだけど!?」

よく晴れた日の昼下がりのことだった。
屋上を男女4人組が占領し、各々弁当や購買で買った総菜パンを頬張っている。
4人組の中の一人、マコが唐突に話題を口にした。

「アレルゲン。アレルギーを引き起こす要因の事。猫アレルギーの場合、猫の唾液や分泌物などに含まれる」
「Wikipediaっすか」
「マコ、お前まさか……」
「そうー!猫アレルギーなのー!!」

「毎日猫動画を見て癒される日々なのー!」わあわあと泣き真似をするマコを、キドが心から憐れんだ表情で眺め、「なんて哀れな奴なんだ……」悲愴に満ちた声を出す。

「猫カフェにも行けないの……」
「それは……可哀そうに……」
「キド、駅前の猫カフェの会員証、ゴールドランクっすもんね」
「可哀そうになぁ……」

セトの脇腹を殴りながら、キドは見えない涙を拭った。
猫。この世の幸福と愛をいっぱいに詰め込んだような崇高かつ愛らしい存在。そんな存在と触れ合えない人生を送っているのだ、目の前の少女は。なんて可哀そうなのだろう。

「よし、カノ。お前猫に化けてやれ」
「さっきからマコもキドもさぁ!目を欺くって言って欲しいんですけどぉ!?」
「同じようなもんでしょ」
「気分が全く違いますー!」

やんややんやと抗議するカノを、マコとキドはめんどくさそうに両手で払う仕草をする。
セトは未だ蹲ったままだ。

「まぁいいけど。化けるんじゃなくて目を欺いてるだけだから。本体は僕だからね、アレル、なんだっけ?」
「アレルゲン」
「そうそう、アレルゲンは出ないはずだよ」

ちょっと目を瞑って。カノにそう言われたように、マコは目を瞑る。程なくして「にゃおん」という鳴き声が聞こえた。
目を開くと、カノの髪と同じ淡い茶色を基調とした、キジトラの猫がお行儀よく座っていた。

「か、か、可愛いー!これだよ、これ!!」
「久しぶりに見たが、か、可愛いな……!」

なぁん、と愛らしく鳴く目の前の猫に、女子たちの鼻息が荒くなる。

「(もうちょっと女子らしく、「可愛いー♡」に留めて欲しかったんだけど……)」

愛らしい姿で目を欺いた本人がドン引きしている中、「ねぇ、触っていい!?触っていい!!?」マコの鼻息は荒くなる一方である。

「待つっす、マコ!」
「なんで!」
「猫に見えるけど、それはカノっす。思い出してください」

ほわんほわんほわんマコマコ~。
マコの脳内で、自分が目の前の猫をもふもふ愛でる姿が浮かぶ。愛らしい猫は、そのままカノに変換した。

「カノじゃもふれないじゃん!!!」

悲痛な声が屋上にこだまする。
哀し気な表情をしたキドが、マコの肩を慰めるようにぽん、と叩いた。

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