バックオフィス系Saas導入を成功させる為に知っておく事

こんな人向け

 ・人事/経理部門で、Saas検討を指示された担当者
 ・バックオフィス系SaasベンダーのCSメンバー/Mgr
 ・Saasってどんなの?と思い始めた人事/経理部門長

まとめ

ユーザー向け
 1)Saasには設定型と目的型の二種類がある
  ※設定型と目的型についてはこちら
 2)設定型はユーザーが自己責任で導入を進めなければならない
 3)導入が不安であれば、正直にベンダーに伝える

ベンダー向け
 1)ユーザーは導入未経験な事がほとんど
 2)ユーザーが、PJ管理をシステム部に丸投げしない様な状態を目指す事
 3)2の為にも、ユーザーのヘルプ依頼には真摯に向き合う事
  (契約以上の内容については、線引きの認識合わせをした上で対応検討する事)

前段

もともと人事・会計パッケージベンダーの導入コンサルを10年ほどやっていたのですが、当時のパッケージ導入PJと現在のSaas導入PJは似てるようで、様々な点で異なっている事に気づきました。
Saas/サブスクリプションという特徴から発生しているもの、Saas業界の現状から発生しているもの、ユーザー側の意識から発生しているものなど原因は様々ですが、Saas導入を成功させる為にはその特徴を事前に把握しておくことは大事だと思います。
特徴を述べただけにはなりますが、この記事が少しでも役立てれば幸いです。

Saasの種類

タイトルで"バックオフィス系Saas"と表現しましたが、Saasは大きく以下の二種類に分けられると考えています。

 設定型Saas:契約しただけではサービスを利用できず、一定の設定を行うことでサービスが利用できるようになるもの。
  ex)SmartHR/TeamSpirit/freee/MF会計など、主に管理部門系のシステム

 目的型Saas:契約したタイミングでサービスが利用できるもの。
  ex)Slack/SPEEDA/zoom/bellfaceなど、主にフロントで利用されることが多いシステム。
  ただし、SPEEDAなど部門を問わないものもある点に注意。

より簡単に表現すると、前者は「導入が必要」なサービスで、後者は「すぐに使える」サービスと言い換えが出来るかと思います。

後者については、導入(Saas界隈でいう"オンボード")自体が存在しないので、導入の成否はあまり議論の対象にならないです。ただし、本当に使いこなせているか?という部分がより大事になってくる為、運用フェーズにおけるサービスを利用した業務プロセスの定着が肝になって来ます。目的型Saasについては、別のnoteで改めて投稿したいと思います。

前者の設定型Saasについては、文字通り"設定作業"が導入プロセスの大部分を占める形になるのですが、今までのパッケージでは"設定作業"をSIerが強く主導する事で導入の成功が一定保証されていました。(裏で発生するコストには、一旦目をつぶりましょう)

しかし、現在のSaasにおいてはSIerが介在する隙がありません(なぜそうなったか?はまたの機会に)。その為、導入の成否はユーザーの覚悟の有無とは関係なしにユーザー側の自己責任となっているのが、設定型Saasすなわちバックオフィス系Saasでのお約束となります。

導入の自己責任とは

導入が成功するかしないかは、全てユーザーの導入担当者の責任です。

いくらベンダーの営業が「CS担当がつきます。導入のサポートしますよ。」と言った所で、サービスの設定内容や運用方法はユーザーが検討して意思決定をするものの為、最終的な責任はユーザーに帰結します。
なぜなら、CS担当者は(少なくとも、現時点のスキルにおいて)ユーザーの業務を理解して、自社製品の使い方を低コストで提案するスキルを持っていません。

今までの管理部門のシステム構築を振り返ってみましょう。

大昔は人がする計算をより速く・正確にする為にシステムがありました。

その次は、業務をシステム上で実現する事で、人のミスを減らしました。
このタイミングまでは、自社の業務を自社のシステム部門が構築していたので、システムに業務知識が反映されていました。
自社の業務が、そのままシステムで実現されたのですが、法改正などの外部環境の変化に対して、常に自社でシステム改修をする必要がありました。

そこで出て来たのが、パッケージシステムという概念です。ここでは"標準的な業務であれば"パッケージシステムのコンサルタントが業務知識を持っていました。ただし、自社固有業務はコンサルタントの知る由もありません。

そんなパッケージシステムですら、業界を席巻するまでに何年かかったでしょうか?

5年でしょうか?10年でしょうか?それともまだ席巻してないでしょうか?

人によって答えは様々ですが、少なくとも今のSaas業界が経験した年数では不足しているという答えが大半ではないでしょうか。
という事は、今のSaas業界にはユーザー企業の業務を理解して提案できるCS担当はほとんど居ないはずです(もしかすると、今あなたが関係しているCS担当は、ほとんど居ないスーパーエースかもしれませんが)。

何を押さえれば良いか?


ようこそ、導入がユーザーの自己責任な世界へ。

とはいえ、ユーザー企業において、会計システム導入経験者数10社・勤怠システム導入経験5社。みたいな導入のプロがいる状況は極めて稀でしょう。
と言う事は、何かしらのガイドが無いと、ユーザーは導入することが困難です。

まず始めにやる事は、ユーザーがベンダーに「導入をどう進めれば良いか?」を質問する事です。ベンダーもユーザーの成功を願っています。正確には、ユーザーが"短期間で導入を完了させる事"を望んでいます。ここが、SIer主導のパッケージ導入とは異なる点です。

少し脱線しますが、SIerのビジネスモデルを考えてみましょう。
彼らの収益モデルは人月です。ユーザーがどれだけ長期間SIerのコンサルを買ってくれるか?が勝負です。
極端に言うと、導入が失敗して長引けば長引くほど、SIerは利益が出る世界です。ユーザーのゴール(システムを早期に導入する事でコスト削減等の果実を得る)と、導入の責任を担うSIerのゴール(長期に渡ってコンサルタントを販売する)が真っ向からぶつかってしまいます。

一方、Saasにおいては、ベンダーはできる限り導入にコストを使いたくありません。早期に導入してもらい、継続的にユーザー自身でシステムを利用してもらう事で、追加コストを発生させずサービス利用料をもらい続ける事ができます。
ユーザーとSaasベンダーのゴールがぶつかる事はありません。
ここが、パッケージ導入とSaas導入の二つ目の大きな違いです。

ベンダーは共に歩んでくれる味方です。
味方に対しては正直なコミュニケーションを徹底しましょう。

ベンダーは、ユーザーの声を真摯に受け止め、ユーザーのレベルに応じてベンダーができる限りの適切な体制を整えることに注力してください。
もし、体制が構築できないのであれば、その旨を正直に伝えつつ、最善の方法をユーザーと共に考えて下さい。

導入の役割分担は?

ユーザーとベンダーが協力できる体制が整えば、やるべき事(タスク)が自ずと明確になっていく筈です。タスクが見えたら、次は、誰がそれをやるのか?を決める時です。

ここでも、冒頭の"ユーザーの自己責任"という言葉を思い出して下さい。

ユーザーとして、色々と助けてほしい事情はあると思います。しかし、ベンダーに全てをリクエストするのはお門違いです。
ユーザーが支払っているのは、あくまでもサービスの利用権に対しての対価です。一部の例外を除き、コンサルティングの対価は支払っていない筈です。

支払っていない以上、要求する事はできません。PJ管理・要件定義・設定・検証・稼働判定・ユーザー教育・データ移行などなど、全ての作業はユーザーが主体的に進める必要があります。

管理部門だけで進める事が難しい場合、システム部を仲間に入れたくなる時もあるでしょう。その際も、"ユーザーの自己責任"の言葉は忘れないでください。
なぜなら、システム部こそ、SIerと長年仕事をしてきた人達です。Saasの事をよく知らないシステム部だと、「PJ管理・要件定義・設定・検証・稼働判定・ユーザー教育・データ移行を、なぜSaasベンダーにやらせられないのか?」という無邪気な質問を返されるだけになるかもしれません。
場合によっては、「だからSaasなんて訳の分からないものを入れるのは反対なんだ。そもそもセキュリティが・・・」というやぶ蛇に陥るかもしれません。

ベンダーのCS担当としても、そうなっては困る(再度、同じような説明をシステム部に説明するために営業のアサインが必要になるなど)と思います。ユーザーの、PJ管理を始めとした様々なタスクを、できる範囲においてサポートする事がトータルコストを下げる近道かもしれませんよ。

PJ管理について

とはいえ、ユーザー側でいきなりPJ管理を100点の精度で実現するのは困難だと思います。

PJ管理をどのように進めて行くのが良いか?については、改めてツールも交えながらご紹介したいと思います。近日中にアップいたします。

長文で尻切れトンボ感は否めませんが、少しでも皆様のお役に立てたならば幸いです。

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