「正しい質問」と「聴く」を極めれば、営業成績はアップする。
中小企業を対象に飛び込み訪問営業をしていて、最近顕著に感じることがあります。
お客様を話せる機会が極端に少なくなりました。
零細企業の場合は、社長自身がプレイヤーであることが多くほとんど事務所にいません。10年前なら、そのような社長と会うために夜暗くなってから訪問したりしていましたが、昨今では、働き方改革などの影響もあり、夜暗くなってから訪問すると、「こんな時間に何の用だ」とあからさまに嫌な顔をされるケースが多くなりました。
また、社長が事務所にいる中小企業の場合は、事務所の入り口にインターホンや受付電話があり、事務所の中に入る前に電話で「アポを取ってから来て下さい」と撃退されてしまいます。
直接訪問がだめなら、電話営業でと考えて、アポ取り電話を行ってもBtoBの零細企業などの場合は、ほとんどの仕事のやり取りを携帯電話で行っているため、会社の電話には出ないケースも多いようです。
昨今では、個人法人を問わず買い物をする際は、まずネットで下調べをして見積もりを依頼し、問い合わせは顧客側からメールか電話で行うという方法で購入します。
お客様が買うメーカーや商品を選ぶ最初の段階で、営業マンが登場する機会はありません。
営業マンは、お客様がHPなどで会社や製品に興味を持ち、詳しい話を聞こうと思って連絡をくれた後に、始めて話すチャンスをもらえることになります。
このパターンは今後ますます定着していくと考えられますので、飛び込み訪問でアプローチをする営業手法は減少していかざるを得ないと思います。
インサイドセールス時代の到来
アメリカは、すでに数年前からこのような状態への対応策ができていて、インサイドセールスという営業方法に切り替わっています。
インサイドセールスというのは、お客様が商品を買う以前から、電話やメールなどの情報提供を通して、関係を構築しておき、お客様が買う段階の時には、一番に声が掛かるようにしておくことです。
現実に、自分自身の最近の販売内容を見ても、以前に名刺交換や商談をしたお客様からの電話がきっかけで販売に結びついたケースが圧倒的に多くなっています。すでに日本もアメリカと同じ現象が始まっています。
インサイドセールスは、営業マン一人で行うことは難しいので、マーケティング部と営業部が協力して行うのが一般的です。
ここでは、営業マンの個人スキルについて記述し、インサイドセールスの詳細については割愛します。
これから時代は営業マンに与えられるチャンスが一度であり、しかも他社との競合などが前提のレッドオーシャンで戦わなければならないということです。
商品やサービスの必要性を感じたお客様は、インターネットを経由して連絡をしてきます。
しかし、買う気になっているお客様から連絡があったからといって油断はできません。営業の世界では常識ですが、「起きている(すでにニーズが発生している)顧客に売るのは難しいからです。
買う気になっている人は当然、商品の内容や競合他社の価格などを調べているために、営業マンが勧めるまま買ってくれることはありません。
少しでもニーズと違うと感じられる商品やサービス内容だと、情報をたくさん持つお客様からカンタンに断られてしまいます。
ですから、営業マンはこのチャンスを確実にモノにしなくてはなりません。
サッカーに例えると、ゴール前で多くの敵ディフェンスを交わしながら、シュートを打つストライカーのような役目を果たさなければなりません。
そのために絶対的に必要なスキルが2つあります。
新時代の営業マンに絶対に必要なスキルとは。
「正しい質問ができること」と「お客様の話しをよく聴くこと」です。
理由は明らかです。お客様が本当に求めている商品やサービスを導入することで、得ようとしている真のニーズを掘り起こし、お客様の考えに寄り添うことで、競合他社と比較されない提案を行うことができるからです。
また、質問と傾聴からスタートすることで、初期段階での拒絶が減り、お客様との信頼関係を構築することもできます。
また、先にお客様の事情を詳しくつかんでおくと、クロージングの際に価格などで抵抗にあった時の切り返しもしやすくなるというメリットもあります。
では、「正しい質問」の具体的方法を考えます。
質問には、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンという種類があります。
オープンクエスチョンとは、相手が自由に答えられる質問形式のことです。
例えば、 質問者 「昨日、何をしていましたか?」 回答者 「昨日はゴルフに行きました」のようなやりとりです。
この質問のメリットは、話しが拡がりやすいことです。話題を拡げて話しを盛り上げたい時に用います。
ただし、デメリットもあります。
この方法で質問をされた相手は何を話そうかと考えて話さなければならないので、相手との信頼関係が構築されていない状況では、面倒だと感じて「なぜ、あなたにそんなことを言わなくちゃならないの?」と反感を買う恐れがありますので、どこまで踏み込んだ質問にするかを考えて使う必要があります。
クローズド・クエスチョンとは「ハイ」「いいえ」で答えられる質問形式です。
例えば、 質問者 「昨日、ゴルフに行きましたか?」 回答者 「ハイ、行きました」
このように「ハイ」「いいえ」と答えるだけなので、回答者する側はあまり考える必要がありませんので、答えやすくなります。
デメリットは、話しが拡がりにくく、会話が単発で終わってしまいやすいので、次の会話を考えなければなりません。
営業マンは商談のスタートでは、会話が拡がっていくように質問をしていくように心掛ける必要があります。ですから、まずオープン質問を使用します。
そして、その質問の答えの中にあるお客様の真のニーズを掘り起こしていきます。
お客様のニーズを掘り起こすための質問の中身は、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どんな方法で)を含めると、ニーズのあぶり出しがしやすくなります。
例えば、 「商品はいつ必要なのですか?」 「どこでご使用になるのですか?」 「使用するのは誰ですか?」 「何をしたいのですか?」 「なぜ、必要なのですか?」 「どんな方法で導入されますか?」
上記のように、提案に必要となる項目を質問により明らかにしていきます。
これらの質問をしていく上での注意点があります。
営業に不慣れな方にありがちなのですが、質問をしなければならないという意識が強すぎて、次から次に質問を繰り出す人がいます。
これでは、質問ではなく詰問(相手を責めて問ただすこと)になってしまいますので、相手に不快感を与えます。
このような状態にならないためには、質問して回答を得た後に聴き方のスキルとして「相づち」を入れることが大切です。
例えば、 質問者 「商品はいつ必要なのですか?」 回答者 「今月内には欲しいと思ってるんです」 質問者 「えっ、月内ですか? それは少し急がないといけませんね」
質問者 「ところでどこで使用されるんでしょうか?」 回答者 「この部屋に置いて使いたいんだけど」 質問者 「なるほど、ここならスペースも十分ですね!」
このように相づちを入れることで、違和感なく質問を続けることができます。
実は、5W1Hの質問の中で一つだけ聞く目的の違う重要な質問があります。
それは「なぜ?」の質問です。
「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」は状況を確認するための質問ですが、「なぜ」は導入の理由や目的を聞くための質問だからです。
この「なぜ」買おうと思っているのか? の答えの中にお客様の真のニーズが含まれています。
トヨタ自動車が「なぜ」を五回繰り返して、問題解決を図るというのは有名ですが、営業の場でも「なぜ」の答えをしっかりと聞き取り、お客様の真のニーズや本音をあぶり出すことがとても重要です。
ここがしっかりとヒアリングでき、お客様の本音に共感することができれば、「そう、こんなものを求めていたんだよ」と言って頂ける付加価値の高い提案ができるでしょう。
お客様のニーズを把握し、本音を探るための質問例
「なぜ、当社にお声を掛けて頂いたのでしょうか?」 「製品やサービスを利用して、どのような結果を求めておられるでしょうか?」
「聞く」と「聴く」の違いを理解しておきましょう。
英語で「きく」という単語には、「hear」と「listen」があります。
hearは、何か音が聞こえてくるとき listenは、何かを聞こうとして聞くときに使う
営業マンに必要なのは、「liten」の聞こうとして聞くという姿勢です。
受け身ではなく、積極的に聞くということです。
積極的に聞くとは、相手の話すことに集中して、理解しようと意志を持って聞くということです。
ですから、お客様の話しに耳を傾け、ノートにメモを取り、重要だと思われることは復唱するなどして聴いていることをアピールします。
また、「今、おっしゃったことはこういうことですか?」と確認するなどして、相互理解を深めます。
営業マンは普段、話すことばかり意識して、途中で相手の話しを遮ったりしてしまいがちです。グッと我慢して普段より間合いを多めに取り、相手の話しを最後まで聞くことを心掛けましょう。
相手の想いを全て受け止めるという気持ちで、ボディランゲージや表情、声の調子なども見逃さず、相手の考えていることに共感する姿勢を全身で表すと、話し手も、他の人には言わなかった本音を教えてくれるでしょう。
「正しい質問」と「聴く」スキルを極めれば、他の営業マンより多くの情報を得ることができ、お客様が本当に求めている提案ができるようになります。
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