80代のセンパイと暮らす。(31)

センパイには孫が2人いる。2人とも大学生。1人は隣の家に住んでいる。

センパイもセンパイの亡夫もそうだったが、孫にベッタリという姿を見たことがない。もちろんかわいいとは思っているようだが、一緒にお出かけするのは、小さい時からずっと変わらず、年に1-2回、近くに買い物に行くくらいだ。

最近、彼らにとって、センパイは唯一の祖父母になった。そのせいなのかは知らないが、ある日、突然、「紅葉を見にバスツアーに行かない?」と隣に住んでいる方の孫に誘われた。初めての展開にびっくりしたセンパイは孫に、

「あなた、友達いないの?」

と言ったらしい。
この話はセンパイから聞いたのだが、センパイらしすぎて大爆笑。センパイは「そう思ったから言ったんだけど、悪いことしたかしらねぇ」と、少し後悔していた。孫がどう思ったかは知らないが、バスツアーの計画は生きているようなので、それなりに受け入れたのだろう。

こういう時に、わかりやすい、誰もが期待している正解の反応をしないのがセンパイなのだ。「わー!ありがとう」とか言えばいいだけでしょ、普通。決して難しい訳じゃないのに、なぜかセンパイには出来ない。こんなシーンは何度も経験しているが、本当に毎回不思議で仕方ない。ここぞという時のおばあちゃんらしい、母らしい言葉は、この人の中には存在していないのか?それを母ではなく、センパイだと思うようになって、私は乗り越えた。そして、面白がれるようになった。

いつか孫にもセンパイをどう思っているか、聞いてみよう。センパイとして面白がれるようになる日がきたら、またそれを分かち合いたい。

#80代のセンパイ #エッセイ #備忘録 #ライフスタイル #人生を楽しむ #老いを楽しむ #孫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?