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詩ノ梯子

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詩の礫
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静かな音楽のあとで

静かな音楽のあとで

静かな音楽のあとで わたしたちは                   語りださなくてはならない どんなに                  それぞれが 小さくて弱い人間で                    ひとつひとつのことに傷ついているのかを

静かな音楽のあとで わたしたちは                   語り 涙を拭かなくてはならない どんなに               とめどな

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独楽俳句

独楽俳句

黄金の案山子の影に鳩卵

黄落す精神の山秋刀魚飯

山城を明け渡すのか秋の蝶

秋天の牛乳瓶の底青海湖

フスマの戸開けてはならぬボラの群れ

秋に靴脱ぎ捨てられて無人窟

背もたれに滅びの美学生パスタ

百舌来るランドセルには丸い螺子

脳天に朝陽照らされ蛸壺へ

青空に出自変えたき南瓜蹴る

冬の雁背中歩いて羽根配り

足先に小鬼集まり梅小玉

早駆けの馬の茎あり安達ヶ原

八重歯抜く男が試す

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黄金短歌

黄金短歌

少年の決意が丘で口笛す草に染まりし白球が飛び

アブラゼミのぼりし影が電柱に脱け殻ひとつ稲妻黙る

迷うまま小道の先の蜘蛛の足アサガオめぐり蔓と絡まり

白雲をポケットに入れ太陽へ虫取り網を振り回せば雹

遠雷を耳にせぬまま薔薇の庭の藪に遊ぶクワガタムシよ

地図帳を開けば過ぎる靴の音故郷を遠ざかるのかたくさんの足

黄金の線路を跨ぎたどりつく少年の夢隣町の丘

WAR

WAR

 丘に行こう 風が少しも吹かないのに暴風雨が続いている あの丘へ行こう歴史の無い鷹の影に追われてここまで駆けてきた 遠くで岩の転がる音が 聞こえない 聞こえない 

           シジュウカラが燃えているから ヤマセミが雨になって降って来るから ヒヨドリがばらばらに切られてきみのナワバリの木漏れ陽になっているから フクロウが俺の瞼の裏で黒く光っているから 光っているから 

   恐ろしい

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ゆふぐれ短歌

ゆふぐれ短歌

消防の鐘は夜空に吊り提げて町の豆腐をすべて食べよう

麦秋の血の色をして夜となりそんなゆふぐれ泡吹く蟹よ

寒月のどこかに指紋を押印し動物の血は降ってくるのだ

チョコレート嘗め続ける汝(な)の唇(くち)に濡れる夏雲光る銀紙

鶏頭の首をひねりて何もなし首をひねりて何もなし

何処へと問わば遠い過去になりすまし空気を抱いた蛙よあわれ

川俣町よ

煙る雨つぶやく迷いを復唱し雨を見ているビク

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羽根が落ちている

羽根が落ちている

羽根が落ちている あたかも世界の皮膚の上に溜まった 表層的な軽い宣告であるかのように 

 *

背後に誰も乗らない大型バスがゆっくりと近づいてきている 真夜中の陽射しの強さはメッセージが届いていないことをこちらに伝えている

 *

影は数多くの湖を飲み込んで巨大なヒメマスの激情を修正液で塗りつぶす



判明しない鉄塔を記憶の無い犀が角を光らせながら倒していく

 *

白い服を着たアス

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