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落合陽一らのDeepWearプロジェクト最新版、機械学習の生成画像の質はパタンナーにあまり影響せず

BalenciagaMicrosoftなどアパレルの分野で機械学習を取り入れる取り組みや研究はよく行われてきた。しかし、デザイン画は作成できても、それを元に実際に服を作れるかどうかや、服の製造の上流から下流まで全てを機械化する取り組みに関しては疑問がもたれていた。

服の製造を全て機械化できる可能性はどれくらいあるのだろうか?また、そのためにどういったことをしていく必要があるのだろうか?

生成画像の質はあまり影響せず

2019年3月11日から、フランスで行われた第10回Augmented Human International Conferenceで落合陽一が代表を務める筑波大学のデジタルネイチャー研究室「機械学習によるデザイン生成画像がどの程度のクオリティだと、パタンナーによるパターンの制作が可能なのか」を調査した論文を発表した。

これは同研究室が2017年から行なっている、深い畳み込み生成的対立ネットワーク(DCGANs)を衣服設計のために使用するDeepWearプロジェクトの一環だ。

今回の論文では(データの量を増やすと結果が大きく変わる可能性もあるが、)意外にも解析度などのデザイン画の精度は、そこまで重要ではないことが示された。
パタンナーにとってデザイン画は参考にする程度で、それよりもパタンナーのブランドへの知識や経験が重要だという。

Image Credit : デジタルネイチャー推進戦略研究基盤

今回の論文ではパタンナーに着目

今回の論文の独創的なポイントは、服の製造において、パタンナーに着目したことだ。
パタンナーは平面のデザイン画から3Dの服を製造するのに必要な作業全般を担っており、服の製造を全て機械化することを考えた時に、欠かせない存在となるからだ。

【服の製造】
①デザイナーがデザイン画を作成
②パタンナーがデザイン画を元にパターン(型紙)をおこす
③パターンを元に服を生成する

デザイン画をAIで置き換える取り組みはよくデザイナーに着目される。
しかし現実的に服をつくることを考えると、パタンナーに着目する方が合理的かもしれない。

Image Credit : デジタルネイチャー推進戦略研究基盤

パタンナーはテクノロジーでは置き換えられないか?

一見論文の結果だけだと、パタンナーはテクノロジーでは置き換われないのかと思ってしまいそうだ。しかし論文では、機械学習に読みこませる画像の選別に関して可能性を示唆していた。

In addition, it may be possible to automatically generate a pattern tied to the generated design image by learning pattern data and sketch image as bilateral translation. In order to realize this, a large amount , It is necessary to construct a scheme that can obtain large quantities of pattern data drawn on the paper which is usually discarded as an intermediate product in digitally processable form.
(パターン画とスケッチ画を学習していくことで、生成画像からパターン画を自動的に生成することも可能になるかもしれない。そのために、中間生産物として普段なら無視されるような、スケッチ程度のパターン画のデータも大量に含む仕様を作っていく必要があるだろう。)

また、あえて論文を批判的にみてみると、デザイナーをGANで置き換える研究の割に、GANの枠組みに独創性を高める工夫などが為されていない点が気になる。今回得られた生成モデルは、過去の作品を学習して データの分布を理解しているだけなので、過去の作品を何らかの点で超えようとするような仕組みは組み込まれていない
独創性を高める工夫は、研究が進んでいる絵画生成を参考にすると、また違った結果が出てきたかもしれない。

Image Credit : デジタルネイチャー推進戦略研究基盤

この論文が意味するものとは

「パタンナーにとって、デザイン画の解析度はそこまで重要ではない」ということは、一見ファッション関係者からみれば当たり前に感じてしまうかもしれない。また結果だけみてしまうと、デザイナーやパタンナーはテクノロジーにとって代われないと思ってしまう人もいるだろう。しかし今後テクノロジーをファッションに取りいれることを考えると、今回の研究のように一つずつの可能性をしっかりと検証し、今後の可能性を探っていくこと自体に意味があるのかもしれない。


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