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【競馬】ミルコの恋人ネオユニヴァースは「叩き上げのエリート」だった

あまりにも名馬の訃報が相次ぐもので追悼記事を書くのもちょっとしんどくなってくるが、こうして彼らの功績を語り継ぐのも、その勇姿を見届けた我々の務め。先日、種付け中の事故で亡くなったネオユニヴァースについても自分なりに書き残しておきたい。

何と言ってもミルコ・デムーロの馬ですよ、ネオユニヴァースは。福永祐一が、同じ瀬戸口勉厩舎のエイシンチャンプに騎乗することで回ってきた手綱。スプリングSで初めてコンビを組みトライアルを制すと、勢いに乗って皐月賞・日本ダービーも連勝。短期免許の外国人ジョッキーとして初めて日本ダービーを勝利し、涙と笑顔のウイニングランで大観衆の声援に応え続けた姿は今も鮮明に覚えている。
外国人のジョッキーが、日本のダービーを勝ってこれほどまでに喜んでくれていることが、日本人の競馬ファンとしても誇らしく感じられた。そうか、涙まで流してくれるのかと。
その後、菊花賞は本来であれば短期免許の取得期間が終了しているにもかかわらず、ルール改正により「特例」で騎乗が認められた。残念ながら三冠達成はならなかったが、このコンビが残してくれたインパクトは大きかった。

ミルコとネオユニヴァースの物語はまだ終わらない。その7年後、産駒のヴィクトワールピサで有馬記念を制覇。翌年にはドバイワールドCも制し、東日本大震災が起こった直後の日本に明るい話題を提供してくれた。
さらに16年にはヴィクトワールピサの娘ジュエラーで桜花賞も優勝。この時すでにJRAの通年免許を取得していたミルコにとっては、ネオユニヴァースは日本でのジョッキーとしての成功を象徴するような存在といえるだろう。
もしジュエラーの仔で「親子四代G1制覇」が成し遂げられればとてつもない物語が完成するのだが、ミルコとの絆がある限り奇跡が起こる可能性は十分あるんじゃないだろうか。

個人的には、「最初からそんなに注目されてたわけじゃないよね?」という印象が残っている。何しろ母ポインテッドパスといえば兄がチョウカイリョウガやアグネスプラネットといった、重賞にも手が届かないレベルで..しょせんその弟というイメージが強かった。新馬戦も1400mを使われているし、バリバリのエリート候補という扱いではなかったと記憶している。
新馬戦こそ勝ったものの、次の中京2歳Sはあっさり負けてるし。白梅賞の勝ち方だって、現地で見ていたけどそこまで印象に残るものではなかった。むしろウインクリューガーが降着になったことの方がインパクト強しw

そんな見る目がガラリと変わったのが、きさらぎ賞。人気はマッキーマックスやサイレントディールに譲ったが、重馬場を力強く抜け出しての快勝だった。前を行くダイワブレスイングが4角で外にヨレた影響で大外まで膨れてしまったのだが、そんなものはお構いなしとばかりに末脚を伸ばしての完勝。ようやくこの一戦でクラシック候補として強烈なアピールを残したのだった。
続くスプリングSでは当時世代ナンバーワンの呼び声も高かったサクラプレジデントを軽く一蹴。休み明けの相手に対して使われてきている優位性はあったとはいえ、すでにこの勝利には何の驚きもなかった。

思えば瀬戸口厩舎の管理馬らしく、レースを多く使っていくスタイルで鍛えられていったのかもしれない。同厩の後輩二冠馬・メイショウサムソンのヒーロー列伝ポスターには「走るごとに強く、勝つごとに逞しく」とキャッチコピーが記されているが、ネオユニヴァースにも同じことが言える気がする。つい社台レースホースのサンデーサイレンス産駒だと、最初から超エリート路線をイメージしてしまうけど。何と言っても二冠制覇後に宝塚記念までチャレンジする厩舎ですしねw

デビュー時から圧倒的な存在感を放つG1ホースもいれば、ジワジワと力をつけて一気に頂点へ駆け上がることも。「叩き上げのエリート」ネオユニヴァースが歩んだサクセスストーリーは、間違いなく後者であった。

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