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【ガンバ大阪】石川慧に伝えたいことが3つある

ピッチ上に突っ伏す石川慧の背中からは、まるでJ2降格でも決まったかのような絶望感がにじみ出ていた。そりゃそうである。自らのとんでもないミスで、99%モノにしかけていた勝利を文字通り手放したのだから。しかも相手は川崎フロンターレ。チーム全員で走り、戦い、エースを失っても、王者の反撃に遭ってもなおリードを奪う反発力を見せた。今年こそ変わるぞ、強くなるぞという第一歩を踏みしめる大切な節目となるはずの勝利が、あと少しのところでこぼれ落ちていった事実は変わらない。

だからこそ、石川慧に伝えたいことがある。しかも3つもある。

まずは、今季ここまでのパフォーマンスが本当にすばらしいということ。正直、昨年までちゃんと存在を認識していたかどうか怪しいレベル。東口がずっとケガなく出ていたことで、ほぼ出場機会なし。しかもほら、ここ数年サブGKって結構コロコロ出入りしてたじゃないですか。だから顔も名前も全く把握できてなくて..だから開幕スタメンに石川の名があった時は不安しかなかった。ただでさえ攻め込まれる展開を覚悟しているというのに、シュートストップに定評のある守護神を欠くとかどないせえと。

ところがフタを開けてみれば鹿島の猛攻を3点に抑える奮闘ぶり。冗談じゃなく彼のセーブがなければ7点くらいは取られてた。そしてそして浦和戦では勝利に直結するクリーンシート。序盤のピンチを耐え抜くと、後半にも相手のFKをドンピシャでセーブ。あのどこかの場面で先制を許していたら、まず間違いなく負けていた展開だけに、紛れもない勝利の立役者だった。
だから浦和戦で3ポイント、でこの試合で-2ポイントでまだお釣りがくるほど。これで責められる筋合いなどない。

2つ目は、ガンバサポのGKやらかし耐性をなめんなよということ。東口がいてくれる今でこそGKは安泰な雰囲気がありますけど、その前任の藤ヶ谷さんは相手サポからも散々ネタにされるレベルでやらかしてましたからね。同時期にレギュラーを争ってた松代さんもこれまたやらかし属性持ちで。09年の名古屋戦なんてホーム&アウェイ両方で後半ロスタイムに自身のミスで決勝点を取られてるくらい。一時期は「キーパーとはやらかすもの」という諦めに近い共通認識のもとで生きていたんですよ我々は。なのでこれしきのミス一発で責任を追及しようだなんて微塵も思いませんわ。

自らも悔しい経験をしてきた男の言葉は重い。

そして最後に、口は悪いが心はアツいのがガンバサポであるということ。試合後にはあろうことかスタジアムからブーイングが聞かれたらしいが、ついついヒートアップした試合直後のことだけに許してほしい。きっと次の試合では、その名を呼ばれたとき誰よりも大きな拍手で迎えられるはず。落ち込んでいる選手にほど暖かいのがガンバゴール裏の伝統。最近はあまりスタジアムに行けてないが、それが続いていることを願うばかり。まあスタメンGKは最初に名前を呼ばれるんで比較が難しいけども。

それにしても感情の忙しい試合であった。まずは、日程の利があるとはいえ川崎相手にここまで戦えた充実感がありがたい。だから引き分けに終わっても前を向いていられる。失った勝点2より、得られた手応えの方がずっと価値がある。だから結果だけを見てブーイングしてたヤツらは自らサッカーを見る目がないということを白状しているようなもんである。

そして宇佐美の負傷。あの傷み方からして尋常ではないアクシデントが発生したことはすぐに察してしまった。パッと見の印象ではアキレス腱..戦力どうこう以上に、彼のサッカー選手生命を脅かすレベルの負傷なのではと思うとあまりにもつらい。だからこそせめてこの試合の勝利を捧げたかったのだが..

ましてそれが小野瀬の決勝点という形なら最高だった。確か高村美砂さんのコラムか何かで、宇佐美と仲良しで開幕戦のゴールもめちゃ喜んでくれた的な話を読んだ。それだけに彼がピッチを去ってからの小野瀬の気迫は相当なものがあったはず。だからこそ(以下同文

しかし選手の顔ぶれが少しずつ整って、意識付けが進むことで短期間でここまで進歩するもんかね。この試合で感じた一番の変化は、「後ろの選手のボール保持意識」。前プレにびびらず、簡単にボールを他に渡さない。いなす、剥がす、つなぐ。特に前半はこれが徹底されていたからいつもの防戦一方の展開にならなかった。

先制の場面もその特長がよく出てる。相手ペナ内まで攻められ、弾き返したボールが自陣左サイドの際どいところに転がって..いつもなら「とりあえずあっち行け~!」とロングボール蹴って相手に回収されるところを、冷静に周りのフリーの選手に預けて逆サイ展開。ここから攻撃へと転じることになる。
右サイドで預かった高尾も、得意のにょろにょろしたドリブルで相手を何人か引き付けた上でパス。こういう動きがあるとボールホルダーへの圧力も分散され、めずらしくパスをつないでペナ内まで侵入し最後は浮き球を山本がボレーで沈めた。一連の動きが素晴らしすぎて、このゴールだけで軽く泣けてきそうな勢いだった。

次の試合が待ち遠しいという気持ちで一週間を過ごせるだけでも格段の進歩。次は磐田戦らしいので「あの人」にもええとこを見せたい。

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