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吹奏楽リスナー目線で見たApple Music Classical

 ※先日X(Twitter)で投稿した以下の一連のpostのまとめです。note用に内容を一部加筆・修正しています。

 最近曲解説のnoteばかりでしたので気分転換も兼ねてたまには違う話題を。

 先月末、ついにApple Music Classicalのアプリが日本でもリリースされました!
 北米などでは昨年3月から利用出来るようになっており、SNSやネットニュースで紹介されているのを見て日本上陸が待ち遠しかったので、個人的には「ついに来たか…!」という気持ちです。

 配信開始から1ヶ月程度経っているため、色々な人がアプリの使用感などをレビューしていますが、「このアプリ、吹奏楽リスナー目線ではどうなのか?」という点に着目した紹介記事が無かったので、このnoteでその辺りを紹介出来ればなと思います。

 吹奏楽好き/吹奏楽の曲を聴きたい人でこのアプリをインストールするか迷っている方の参考になれば幸いです!


Apple Music Classical とは?

 AppleMusicのサブスク(月額1,080円。学生プランやファミリープランの割引あり。)利用者は追加料金なしで利用可能なアプリです。
 様々なサイトで詳しく紹介されているのでここでのアプリ自体の紹介は以下のポイントに絞ります。

  • 画面のUIが改善

  • 曲名、作曲者、指揮者、演奏者、楽曲などでソート可能

  • 日本語での検索がしやすくなった

画面のUIが改善

 AppleMusicClassicalではAppleMusicで地味に不便だった「曲名部分が長くて組曲のタイトルが分からない問題」が解消されました。

左:AppleMusic 右:AppleMusicClassical
右はバレエ音楽の曲名部分が折り返して表示されています。

 「組曲、オペラ、バレエ音楽の中の1曲だけ聴きたい!」という人にとっては特に嬉しい改善点だと思います。

曲名、作曲者、指揮者、演奏者などで絞り込み可能

 AppleMusicだけでなくその他のサブスクアプリでも同様ですが、クラシック曲は表記揺れのせいでお目当ての検索結果にならないことがしばしばありました。
 例えばバルトークのバレエ音楽『中国の不思議な役人』を聴きたい場合、日本語での検索ではなくドイツ語の「Der wunderbare Mandarin」や英語の「The Miraculous Mandarin」で検索しないとヒットしない…など。

 AppleMusicClassicalでは曲ごとに絞り込み可能となりこの問題が解消されました。

CDでの曲名表記揺れに悩まされることなく目的の楽曲にたどり着くことが可能に!

 「今日はラヴェルの曲を何か聴きたい気分だな〜」というときも、作曲者ごとのページが用意されているので簡単に聴くことが出来ます。

 お気に入りの指揮者、楽団(ソリスト)での検索も同じ方法で簡単に検索可能になりました。

今をときめく若手指揮者の原田さん。「ケイタロウ」はどんな字だっけ?に悩むことも無くなります。
ベルリンフィルが聴きたい場合、「ベルリン」だけの入力でも出てきます
トロンボーンの神様をリンドベルイ。
「クリスチャン/クリスティアン」や「リンドベルイ/リンドバーグ」の表記揺れに悩むことが無くなるなんて…!

日本語での検索がしやすくなった

 「曲名検索が簡単に〜」の部分の内容と若干被りますが日本語での検索が大幅にしやすくなりました。

 例えばAppleMusicでワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を検索すると、AppleMusicでは30~40枚程のアルバムしかヒットしません。
 原題の「Die Meistersinger von Nürnberg」だともっと沢山のCDがヒットしますが、わざわざ原題をネットで調べて、コピペして…というのも地味に手間です。
 AppleMusicClassicalではこの手間から解放されます。

左:AppleMusic 右:AppleMusicClassical
わざわざ原題で検索しなくともお目当ての楽曲にたどり着けるようになりました。

吹奏楽リスナー目線で見た使い勝手は?

 さて、ここからが本題です。

 オーケストラなどを中心に聴いている方にとっては非常に使いやすいアプリであることがここまでの前置きで分かったかと思いますが、「吹奏楽リスナー目線で見ても使いやすいの?」「吹奏楽曲のラインナップは?」という部分に触れていきたいと思います。

 私自身、普段は週末アマチュアオーケストラ奏者ではありますが普段聴く音楽としては吹奏楽6:オーケストラ3:それ以外(アンサンブル・ソロ曲、J-POP等)1という割合なので、どちらかと言うと吹奏楽リスナー寄りです。

 どのサブスクでも吹奏楽曲がそこまで入っておらず、AppleMusicも検索性に難アリというイメージだったので、いまだにCD購入→PC取込→ウォークマンへ転送というアナログな手段で音楽を聴いております…。

 私のような「吹奏楽を聴きたい人」にもAppleMusicClassicalはオススメ出来るのか?ということを確かめるため、今回アプリを使ってみて思ったことをまとめていきたいと思います。

前提:AppleMusicClassicalで吹奏楽を聴くために

 AppleMusicClassicalはアプリ内の見つける>ジャンルからオケ曲、室内楽曲などのジャンル毎の楽曲を探すことは出来ますが、現状「吹奏楽」はジャンル自体ありません。

 そのため、吹奏楽曲を聴くためには曲名/作曲者名/演奏団体名等で検索が前提となります。

作曲者で検索してみる(海外作曲者①:A.リード)

 まずは海外の吹奏楽曲の作曲者で検索してみます。手始めに吹奏楽の父とも称される「アルフレッド・リード」から。


はい、さすがに出てきますね。これで出てこなかったらどうしようかと思いました。
 アイコンが謎のモニュメント的なもの(リードの「R」文字?)なのがよく分かりませんが、アプリ使ううえでは特段困りません。

 そのままリードの作品リストへ。さすがにオーケストラの有名な作曲家の収録数には敵いませんが、代表曲は聴き比べ出来る程度の曲数がちゃんと入っています。
 収録数の少ない方まで行くと楽曲が英語表記になっていたりと若干表記揺れが気になりますが、これは他の作曲家でも同じなので致し方なしでしょう。

作曲者で検索してみる(海外作曲者②:B.アッペルモント)

 続けて他の作曲家も調べてみましょう。日本では近年急激に演奏頻度が増えた「ブリュッセル・レクイエム」の作曲家、ベルト・アッペルモントで調べてみます。

アッペルモントのトロンボーン協奏曲「Colors」のイチオシCD、『Visions』も聴けます
アレッシのソロも伴奏のバンドも上手すぎる…!

 リードはアメリカの作曲家、アッペルモントはベルギーの作曲家ですが、国に関係なくちゃんと検索で出てきますね。
 リードと違って作曲家ごとのページは出てきませんが、ちゃんとアッペルモントの楽曲が含まれるCDは検索に出てきます。

作曲者で検索してみる(邦人作曲者①:酒井格)

 日本人の吹奏楽曲作曲家でも調べてみます。まずは今年の課題曲3「メルヘン」の作曲家でもある酒井格さんから。

 こちらもリードと同じく作曲家個別のページが出てきますね。酒井格さんはnote執筆時点(2024年2月)で200作品以上を作曲していますが、AppleMusiClassicalだと18作品しか聴けないのは少々寂しいですね。

 CD別に見てみると海外レーベルから出ているCD:日本のレーベルから出ているCDの割合が7:3といったところでしょうか。
 海外レーベルの取扱が多いといってもデ・ハスケ社から出ている酒井格作品集は取扱が無かったりと、バラつきはありますね。

作曲者で検索してみる(邦人作曲者②:長生淳)

 続いて私が個人的に1番好きな邦人作曲家の長生淳さんを調べてみます。

 こちらもリード、酒井さんと同様に作曲家個別のページが出てきますね。

 酒井さんのときもそうでしたが、作曲家個別の作品リストのだと曲目が基本的に英語やドイツ語表記になっているので、人によってはこの辺りをどう考えるかという感じですね。
 日本語の曲名で検索してもちゃんとヒットするので個人的にはそこまで困らないとは思っています。

「英雄の時代」でも検索可能ですが作曲家の作品リスト上は「Die Heldenzeit」表記となっています。

演奏者で検索してみる(海外バンド)

 続いて演奏者(演奏団体)での検索がどれくらい機能するのか調べてみます。
 まずは200年近い歴史があるベルギーの王立軍楽隊「ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団」から。

右の画像中ほどのD.ブルジョワ「コッツウォルド交響曲」のCDがオススメです。

 バンド毎のページがヒットしますね!これは凄い。

 続いて、大編成の楽曲を得意とするスペインの楽団「ブニョール・ラ・アルティスティカ交響吹奏楽団」ではどうでしょうか。

 こちらは日本語の検索ではヒットせず…。ギィデと同じく海外バンドの中ではかなり有名なバンドだとは思っていたので少し残念。
 スペイン語の「Sociedad Musical "La Artística" de Buñol」の入力ではヒットします。(なんなら「Buñol」だけでもヒットします。)

ブニョール〜の中でも左のCDに収録されているヨハン・デ=メイ「エクストリーム・メイク・オーヴァー」、右のCDに収録されているフェラン「キリストの受難」などは特にオススメです。

 吹奏楽の新規レパートリーの開拓に熱心なユージン・コーポロン率いるノース・テキサス・ウィンド・シンフォニーなども検索出来ました。

右のCDに収録のシュワントナー「…そしてどこにも山の姿はない」など名盤多数です。

演奏者で検索してみる(国内バンド)

 続いて国内のバンドでも調べてみます。まずは日本を代表するプロ吹奏楽団、東京佼成ウインドオーケストラから。

近年の収録では左の「吹奏楽燦選ライヴ」シリーズがオススメです。
右の「邦人作品シリーズ」「フェイバリット・パスト・アルバム・シリーズ」も色褪せない素晴らしさです。

 ギィデと同じくバンドごとのページが用意されています。
 過去に佼成出版社から発売されていたCDから、近年の大井剛史さん指揮の力が入ったライヴCDまで幅広く聴くことが出来ます。

 ポニーキャニオンから発売されていた「陽炎の樹」「この地球を神と崇める」も近年発売されたCDではかなりオススメなのですがこちらはAppleMusicClassicalでは聴くことが出来ず…。

 続いて大阪の2つのプロ吹奏楽団「Osaka Shion Wind Orchestra(旧:大阪市音楽団)」「フィルハーモニック・ウインズ 大阪」でも調べてみました。
 どちらも実際にリリースされているCDはもっと多いですが、発売元によってAppleMusicClassicalで聴くことが出来ずやや寂しい収録数です。

そのほか音楽大学系のバンドのCDの取扱について調べてみます。

  • 東京藝大ウィンドオーケストラはヒットせず(近年ブレーンから発売されている作曲者別の作品集シリーズが素晴らしいのに…😭)

  • 武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブルはvol.1~5のCDのみ取扱あり(ホルジンガー『春になって、~』が収録されたvol.7が名盤なのに…)

  • 昭和ウインドシンフォニーはCAFUA社から発売されたCDのうち一部のみ取扱あり

  • 北海道教育大スーパーウィンズは団体個別ページあり👏

という結果でした。

その他AppleMusicClassicalで聴けるもの/聴けないもの

 その他、AppleMusicClassicalで聴けるもの/聴けないものを調べてみました。
 箇条書きで簡単にまとめます。

  • 吹奏楽コンクールの全国大会音源は2017~2021年のみ聴くことが可能

  • アンサンブルコンテストの全国大会音源は聴けない

  • バンド維新シリーズは2015~2017まで聴くことが可能

  • 響宴シリーズは聴けない

吹奏楽リスナー目線で見たApple Music Classical:まとめ

 私なりにこんな人にオススメ出来る/出来ないを考えてみました。

Apple Music Classicalはこんな人にオススメ①:海外作曲家の作品をよく聴く方

 邦人作曲家と比べて海外作曲家の作品の取扱が豊富なので、海外作品を色々聴いてみたい方には向いていると思います!

 また、海外レーベルのCDも(演奏や録音のクオリティも玉石混交ですが)豊富にあるので、宝探し感覚で海外作曲家のあまり日の目を見ない作品を探したい方などにもオススメ出来ます。

Apple Music Classicalはこんな人にオススメ②:特定の団体・指揮者縛りで曲を聴きたい方

 noteの前半でも触れましたが、演奏団体や指揮者ごとのCD検索精度はAppleMusicから大幅に向上しています。

 「この団体、いままで知らなかったけどすごく上手い!他にどんな曲を演奏しているのだろう🤔」「この指揮者、選曲のチョイスが自分好み!他のCDも漁ってみたい!👀」なんて探し方もApple Music Classicalだと簡単に出来るのでオススメです。

Apple Music Classicalはこんな人にオススメ③:オケ曲との聴き比べをしたい方

 吹奏楽曲のラインナップ充実も然ることながら、管弦楽曲のラインナップの充実度合いは本当に素晴らしいです。作品によっては吹奏楽曲の10倍以上のCDの取扱があります。

 これは現役の吹奏楽プレイヤーに向けた内容になってしまいますが、「吹奏楽コンクールや定期演奏会で管弦楽編曲の作品を演奏することになったけど原曲を聴いたことがない(あるいはコンクール/演奏会で抜粋する部分しか聴いたことがない)」というような場合に色んな指揮者・団体の原曲を聴くにはうってつけだと思います!🙋‍♂️

 個人的には吹奏楽しかやらないといって、吹奏楽以外のジャンルの曲を聴かないのは非常にもったいない…!と思うので、ぜひ色んな演奏を聴いてほしいです。

アーノルド『第六の~』の原曲やヨハン・デ=メイ『交響曲第1番 指輪物語』のオケ版も簡単に聴けます。

Apple Music Classicalが向かない人①:邦人作品をメインで聴く方

 海外作曲家と比べると邦人作曲家の作品の取扱数はかなり少なめです。

 また、発売元によってはCD取扱無しのレーベルもあります。(今後変わってくるかも知れませんが、現時点ではブレーン、ポニーキャニオン等の吹奏楽CDは取扱無し)

 そのため、邦人作品を沢山聴きたい!という方はApple Music Classicalのラインナップがもう少し充実するのを待った方が良いかもしれません。

Apple Music Classicalが向かない人②:作品名の日本語/英語表記揺れが気になる方

 検索精度がAppleMusicより向上しているので、日本語/英語どちらで検索しても目的の作品までたどり着けるのですが、作品名の表記はCDによってまちまちです。

 作曲者のページから作品リストを表示した際も同様で、日本語/英語の表記は統一されていません。
 例として以下の画像を見てみます。

 左はアルフレッド・リードの作品リストです。『吹奏楽のための第7組曲』は日本語表記ですが、第5組曲の方は『Fifth Suite for Band』表記です。
 右は酒井格さんの作品リストですが、一律英語表記です。『七五三』なんて逆に読みにくいですね…。

 この辺りの表記揺れが気になる人には地味にストレスとなるポイントかと思います。

最後に

 長々と書いてしまいましたが、音楽サブスクアプリの中ではAppleMusicClassicalは最も吹奏楽リスナー(クラシック音楽リスナー)に向いているアプリだと思いました!

 「色んな吹奏楽(クラシック)の楽曲を聴きたいけどCDをいちいち買うのは手間もお金もかかる…」という悩みをかかえた人にも、「普段吹奏楽部や吹奏楽団で活動していてコンクールや演奏会の候補曲や演奏曲の参考音源を探したい」という人にも是非使ってほしいアプリです。

 本noteで吹奏楽リスナーがAppleMusicClassicalを使う際の参考になれば幸いです🙇‍♂️

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