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言語表現できないキオク

例えば自分の好きな本の中で出会った最高に素敵な1小説とか、何度も観た映画の中の忘れ得ぬ風景。そうした言葉だったり映像だったりの中から、着想をせずにはいられない事がある。きっと自分の癖か性癖に近い何かなんだろうけど

それは 匂い

人間の思い出や記憶というのは、実体験として出来事を記憶しているのがほとんどなんだろうけど、私はそれ以上の強烈な記憶の中に その時の その場所の その人の その時代の 匂いを思い出す。だから、小説や映画の物語の中で、匂いを連想させる話が好きだ。勿論自分がその物語や、情景から着想した空想だとしても。私の好きな思い出や小説や映画や人物には、ちゃんと匂いがする。

生きてきた記憶の中にある、子供の頃に住んでいた街や学校帰りの空気とか、南の土地に旅をした際のそこはかとなく漂うエキゾチックな草花の香り、愛して止まない存在から伝わる肌と香の記憶は、どれも忘れ得ぬものだけれど、その時に感じていた匂いというのは、言葉や絵で表す事が難しく、その時と同じ匂いを再び察知する事でしかあの頃を呼び起こせない。

匂いというのはもうそこにあるものではないのに、いつまでも脳裏に焼きついているから不思議だ。

そして私は、匂いから脳に伝わる追憶に浸る瞬間が大好きだ。何でだろうって考えたけれど、多分言葉を失ってしまうから。あゝ何だか懐かしい と言葉を口走るより早く感受性が快速で走ってきて追い越す。するとこう、記憶が蘇ると同時にどうした事か泣いてしまうような 。というか泣いてしまう。

きっと匂いの記憶というのは言葉に出来ないものだからこそ、私の中でどうしようもなく儚く 切なくて 艶めかしい。

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