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②『さくら』/ 西加奈子

概要「家族」

陽気でまっすぐなお母さん、静かだけれど温かい愛のあるお父さん。

誰からも愛される容姿で、愛情をいっぱいに受けてきた長男一(はじめ)。

家族中の愛の中で育ち、かなり自由で目を見張るほどの美人な妹(美貴)。

そんな兄妹に挟まれつつも、平凡な毎日を幸せに思う主人公の次男(薫)。

そして家族を見守る愛犬さくら。

すべての穏やかな光が注がれていたような、世界が自分たちの味方であったかのような日々だったが、それも長男の事故で一変する。

【愛を伝えよう】機能不全家族/マイノリティ

今は結婚しない人も増えてきて、家族に対する価値観も変わりつつある。

それでも「家族」というのは、今だからこそ考えたい、私の中で伝えていきたいテーマの一つになっている。

(『さくら』では様々なマイノリティで悩む人にもぜひ読んでいただきたいが、とりあえず今回のテーマは「家族」ということで)

「機能不全家族」「毒親」「AC(アダルトチルドレン)」という言葉が流行し、親との関係や家族のことを考えた人も多くいるのではないだろうか。

日本人は「周りと合わせること、空気を読むこと」を大切にしてきて、それが思いやりだと思っている人も多くいると思う。

そのような側面もあるけれど、だからこそ我慢が蓄積され、上手く消化できていない人もいる。

親が仲が悪くても、ストレスをぶつけられても、手を出されても、何も言わない子供。

その子供の心を代弁したかのような、忘れられない歌詞がある。

『私の命は二人の愛の証。そこには一つだって嘘はない。

そうでしょう。そうだといってよ。(RADWIMPS/ふたりごと)』

すごくまっすぐな歌詞。高校生で出会って、忘れられない言葉。

でも、親もすごくすごく大変なんだよね。

お父さんの帰りが遅くなってきて、育児で辛いしさみしいのに伝えられないお母さんとか。

家族のために頑張っていたつもりが、家に帰った方がストレスだらけで、帰りたくなくなってきてしまったお父さんとか。

パートナーだったはずが、お互いを大切にできなくなってしまっている。

そんな状況を察して、ピエロを演じる子供。そんな家庭が多い気がする。

幸せな時期はあったけれど、遥か昔のよう。

『さくら』のような絵に描いた幸せのような家庭ですら、出来事一つで今ある幸せが崩れ去ってしまう。

それでも、「愛すること」と「幸せになること」を諦めないでほしい。

日々に甘んじ、その二つを放棄してしまったことから、機能不全家族はスタートする。

わかり合えない他人が一緒にいるからこそ、コミュニケーションは大切。

家族だから何を言ってもいいとか、言わなくてもいいとか、そんなのは甘え。

大切に思うのであれば、言葉でも、態度でも、どんな方法でもいいから伝えないといけない。

今ある当たり前に胡坐をかかず、目の前の人を大切にしよう。

恥ずかしがらずに愛を伝えよう、たくさん。

それが難しいようなら、まずは『さくら』を読んでほしい。

どんな方法であっても、大切な人に何かを伝えずにはいられなくなるはず。

残された家族四人と一匹の愛の叫びが詰まっている。

"What can you do to promote world peace?

- Go home and love your family." (Mother Teresa)

Ohana.

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