見出し画像

八ヶ岳の豊かな食材をどう活かすか 仲間とともに抱く野望 食対談|山本×寺澤×齋藤×坂本

多彩なメンバーが在籍する8Peaks。中でも今回は“食”の事業に携わる4名が集まり、八ヶ岳の豊かな自然がうみだす食の魅力や現在の活動にかける思いを語り合った。

<メンバー紹介>
山本 敦史
「たてしな自由農園」代表
寺澤 宣法
「オーベルジュテラ」オーナー
齋藤 由馬
「8Peaks BREWING」代表
坂本 育也
「レストランピーター」ベーコン・ハム・ソーセージ職人

美味しい食材が当たり前にある環境

−今回は“食”座談会ということで、改めてみなさんの活動についてお聞きしたいと思います。簡単に自己紹介からお願いしましょうか。まずは「たてしな自由農園」代表の(山本)敦史さんから。

山本:「たてしな自由農園」は地元の美味しい農産物を取り揃えた直売所です。創業者は父で、僕が2代目になります。うちの店の一番の目的はこの地域のよさを知ってもらうことなので、生産者と消費者のつなぎ役になれたらいいなと思っています。

「たてしな自由農園」代表 :山本 敦史

−では続いて「オーベルジュテラ」オーナーのテラ(寺澤)さん、お願いします。

寺澤:「オーベルジュテラ」という食に特化した滞在施設のオーナーをやっています。「たてしな自由農園」の野菜をはじめ、この座談会の面々が手がけた地元のものを使って、ストーリー性のある食とサービスを提供しています。みなさんの魅力も一緒に売り込むことで、地域のリピーターを増やすのが僕のミッションだと思っています。実際、うちのお客さまの9割が「たてしな自由農園」に行かれていますよ。僕も「満足度200%です!」と言って送り出しています(笑)。

山本:ありがとうございます(笑)。

「オーベルジュテラ」オーナー:寺澤 宣法
シェフである妻と

−テラさんは東京出身だそうですが、なぜ蓼科高原でオーベルジュを?

寺澤:「たてしな自由農園」で毎日買い物がしたかったから…というのももちろんありますけど、もともとは前身の「オーベルジュ ドゥ シェマリー」に自分がお客として通っていたんです。うちの奥さんが料理人ということもあり、色々なご縁が重なって夫婦でお店を引き継ぐことになりました。経緯としてはそんな感じですけど、この地域の食に魅せられたというのも大きいと思います。

−蓼科高原や八ヶ岳エリアは、全国有数の高原野菜の産地でもありますよね。

山本:標高が高い分、紫外線量が多いので野菜が元気に育つし、昼夜の寒暖差で甘さも増します。土地の特性を活かした農業が地域に根ざしているおかげで、美味しいものが当たり前にあるし、僕らが少し口添えするだけで魅力を広げることができる。そういった意味では、食に対するアプローチはしやすい地域だと思います。

寺澤:うちのお客さまの中でも、一番厳しい目を持っていらっしゃるのは農家の方なんですよ。なぜなら、野菜が美味しいことを知っているから。

山本:一番いい状態を知っているからね。

寺澤:地元の美味しい食材を使うからには、こっちも中途半端なものは出せないし、足し算ではなく掛け算的な美味しさを追求していかないといけない。そんなところもこの地域の面白さだと思います。

存在意義を守りながら、新たな価値を発信する

−では続きまして「8Peaks BREWINIG」の由馬(齋藤)さん、自己紹介をお願いします。

齋藤:八ヶ岳山麓で「8Peaks BREWING」というブランドの地ビールを製造しています。この地域の食と自然に合うビールを目指して、一番美味しく感じられるシーンやライフスタイルも一緒に提案していきたいと思っています。

「8Peaks BREWING」代表:齋藤 由馬

−ブランド名の由来は?

齋藤:八ヶ岳の名前をお借りして「8Peaks」なんですけど、一説では、山の稜線がギザギザしていて数え切れないほどあることから「八百万(やおよろず)の岳=八ヶ岳」と言われているらしいんです。数あるものづくりの頂点の中で、その一つになれるようなビールを造りたいという思いを込めました。

−由馬さんは長野の上田市出身ですが、八ヶ岳でビール製造を始めた理由を教えてください。

齋藤:地元の上田でやればいいじゃんって話ですよね。長くなるけどいい?

寺澤:4時までコースかな?

−3時まででお願いします(笑)。*取材時点で夜の21時

齋藤:僕の実家は花農家なんですけど、自分には合わなくて、地元を飛び出して東京に行って、製薬会社に就職したんです。それで漢方薬の製造部に配属されたんですけど、原料はほとんど植物でできているので、結局花についても知っておかないといけなくなりました。

−花との関係は切れなかったんですね。

齋藤:そうなんです。中には実家で栽培していた「竜胆(りんどう)」という花も使われていて、研究していく中で花に対する見方が変わっていきました。だんだん植物の作用の方に興味が湧くようになって、飾るだけで終わっちゃう花ってもったいないなと感じ始めたんですよね。それで、ビールの原料のホップだったら、花農家の存在意義を守りながら新しい価値も発信できるんじゃないかと思って、ホップ栽培の発祥と言われる八ヶ岳でビール造りを始めました。

寺澤:僕はお客さまに「上田の花農家の息子が、ビールの原料のホップもお花なのでその魅力に目覚めて、単身ドイツに渡って、うまい地ビールを造りたいって八ヶ岳に来て、東京とか名古屋でも売ればいいって声はあるのに、醸造所の煙突を見ながら飲むビールが地ビールだから、飲みに来てもらえるような存在になりたいっていう、そんなビールです」って説明しています(笑)。

齋藤:最高(笑)。ありがとう。

人生を変える食と人との出会い

−ビールといえばソーセージということで、「レストランピーター」の育也(坂本)さん、最後に自己紹介をお願いします。

坂本:親父が48年前に始めた「レストランピーター」で、2代目職人としてハムとソーセージを作っています。おかげさまで、2009年にドイツで開かれたソーセージの大会では金賞をいただきました。

一同:(拍手)。

「レストランピーター」ハム・ソーセージ職人:坂本 育也
「レストランピーター」 ベーコンの製造風景

坂本:5年前に兄弟3人で経営を引き継いで、今は長男の洋食、次男の和食、僕のソーセージの三本柱でやっています。親父とは違うブランドを立ち上げたいと思って、最近は地元の素材やジビエを使ったソーセージにも挑戦しています。美味しい牛肉や豚肉を焼いて美味しいなら、そっちの方が安いし早いじゃないですか。だから加工するからには、美味しいものをさらに美味しくするっていう付加価値を付けないとダメだなと思っています。

−ソーセージ作りを始めたきっかけは?
 
坂本:たまたまですね。物心ついた頃には中華の料理人になろうと思っていたんですよ。小学校の文集にもそう書いていました。

寺澤:イクヤさんのエビチリとか食べてみたいけど。

一同:絶対うまい!

坂本:(笑)。しかもなぜか小学校を卒業したタイミングで、香港と台北とシンガポールに中華料理の勉強に行ったりしているんですよ。

−すごい!そんな早くから。

坂本:香港の麻婆豆腐が辛すぎて、衝撃だったのを覚えています。そんなこともありつつ、長男と次男は大阪の辻調理師専門学校に進んで、僕は東京農大に行きました。長男はその後、鉄人・坂井シェフのもとで修行して、次男は京都で割烹、築地で寿司の修行をして。

齋藤:じゃあ次男、リクエストしたら寿司も握れるの!?

坂本:握れるし、何ならフグもスッポンも捌ける。でも鰻が好きだから、鰻をメインでやっています。

−ポテンシャルがすごいですね!イクヤさんは大学を卒業してからソーセージ作りを?
 
坂本:そうですね。レストランのソーセージが軌道に乗ったので、僕もソーセージをやってほしいと言われて。それで帰ってきたんですけど、半年後に親父が体調を崩したんですよ。何とか指示に従って作りはするけど、当然同じような味は出せない。見るに見かねた母親が、茨城に住んでいる親父の知り合いに応援を頼んだんです。今となっては師匠にあたる、ドイツのマイスターの称号も持っている方なんですけど。ちょうどそれがお歳暮需要で忙しくなる11月で、スタッドレスタイヤを装備してわざわざこっちに来てくださって。そこで初めてソーセージ作りについて事細かに教えていただきました。400セット分のお歳暮のソーセージも一緒に作ってくださって、本当に感謝してもしきれないくらい。母や兄たちもさすがにお礼を渡そうとしたんですけど、「僕はお金のために来たんじゃない」って。

−かっこいい…。
 
坂本:「何もできなかったですけど、頑張ります」って伝えたら、「頑張らなくていい。続けてくれればいい」って言ってくださって。あの瞬間、僕の人生は変わりました。
 
齋藤:神じゃん。

坂本:本当にそう。でも僕が世界レベルのソーセージを作ろうと思ったきっかけは、ユウマくんでもあるんですよ。

齋藤:そうなの?

坂本:ユウマくんのビールを初めて飲んだ時、明らかに濃かった。これまでのソーセージだと負けちゃうんです。日本のビールに合うソーセージももちろん美味しいけど、ユウマくんが思いを込めて造ったビールの濃さに奮い立たされたというか。このビールを飲んで、僕のソーセージを食べて、さらにまたこのビールが飲みたくなるような味に挑戦したいなと思ったんですよね。

寺澤:いい話ですね。
 
山本:八ヶ岳エリアって、チャレンジ精神を持ち続けてきた地域だと思うんです。基本冬場は何もできないから、暖かい時期にどれだけ効率よく生産するかとか、他の地域の農業とは違った工夫も必要だし、生産者たちが攻めの姿勢で真面目に向き合ってきたからこそ、今まで繋いできた確かな品質がある。そういう基盤に魅力を感じてエリア外からも農業や畜産を学びたいという人がやって来るし、うちの店もそれに応えるために研究心を持って事業を永続させていかないといけないし、そうすることでまた生産者たちも潤っていくし。って、何か真面目な話ばかりですみません(笑)。

でも本当に、生み出す人と活かす人相互の存在がなければ発展していかないので、テラさん、由馬さん、育也さんのような人たちの力がすごく重要なんです。

坂本:僕もそういう人たちとの出会いがあったから、今までやってこられたと思います。

蓼科高原のモニターツアーにて提供された朝食。
たてしな自由農園、レストランピーターの食材を寺澤夫妻が調理したサンドイッチ、ポトフ、デザートと「8Peaks BREWING」のビールが並ぶ

−八ヶ岳エリアがさらに盛り上がっていくよう、これからも応援しています!

一同:頑張ります!

対談メンバー4名が携わったモニターツアー「八ヶ岳プレミアム・ブレックファスト in 蓼科高原」の様子も是非ご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?