旅とわたし

世界中を旅するんだ。

そう言った19歳の僕。でもたった一カ国で世界中を旅することを諦めた。一つ目の国、ネパールで40人の子のパパになった奮闘記。

小学生になると同時にサッカーを始めた。

将来の夢はもちろんプロサッカー選手。

とにかくボールを蹴る時間が大好きで毎日暗くなるまで練習をしていた。

チームメイトは子どもの頃の夢を叶えてプロの世界にいる。そんなチームメイトのいる僕はチームキャプテン。だけど、試合の時はベンチに座っていた。

中学生になっても僕は同じ状況にいた。

高校の部活動では引退のかかった大会で一回戦負け。

大学生になっても諦められないサッカー。控えチームの控えだった。

これだけは負けたくない。そのサッカーで負けてきた自分が大嫌いだった。自信なんてずっとなかった。

大学一年の冬。

部活動から逃げるように旅に出た。友達とスケッチブックを掲げて日本を回った。ドリブルで日本を回った。たくさんの優しさに触れた。知らない仕事があった。思考や恋愛観、想いに触れた。

この日、この時間に旅をしたから出会えた人たち。いつか僕も、車内で多くの話をしてくれた人たちのように自分の人生を語れる人間になりたいな。


日本を回った数ヶ月後、僕は初めての海外へ。

知人がネパールに行っていた。これだけの理由でネパールへ行くことを決めた。

トランジットの空港泊は一睡もできなかった。空港でのビザの所得は二時間もかかった。初めてのタクシーでぼったくられ、ご飯でお腹も壊した。猿や犬にビビりながら歩いたのを覚えている。街にはキラキラした雑貨。山に登ると緑が広がった。

これが世界かぁ。世界ってすげぇ美しいんだな…なんてならなかった。

物乞いをする人たち。低賃金での労働。経済格差。差別やカースト問題。学校へ行けない子どもがいた。あらゆる問題が見えてきた。

ある日、40人の子どもたちと出会った。僕の持っていたサッカーボールを奪い蹴り出した。その時の笑顔は何より美しく輝かしかった。暗くなるまでボールを蹴った。家に帰る子どもたち。みんな同じ家。小さな子どもは机に行儀よく座っている。お兄ちゃんたちがご飯を注いでいる。豆スープをかけたお米。彼らは真っ先に僕のところへ持ってきた。先に食べてと差し出された。僕はいいよと言っても君はゲストだからと。少ないご飯を食べてみんなと話した。夢の話や好きな本の話。キラキラした目で話す子どもたち。日本はどんな国?ガールフレンドはいるか?次はいつネパールに来るんだ?そんなことを話して彼らは寝床についた。一つのベッドに二人が入った。

子どもたちと別れてから、こんなことを考え出した。このまま世界を旅していいのかな。自分のみたい世界ってどんな世界なんだろうな。

物心ついた頃に携帯電話を買ってもらった。お腹が空いたらコンビニに行けた。時には練習めんどくさいなって言いながらサッカーに通った。そんな環境で育った。欲しいものなんて口にできない。ご飯も満足に食べられない。サッカーが好きなのに勉強が好きなのに、それができない。なんでだろうな。こんなにも優しく純粋な子たちなのに。旅をして、素敵な出会いがあって、綺麗な景色を見て、思い出を心に残して、僕はそのあとどうなるのか想像もつかなかった。今、目の前にいる子どもたち。この子たちのために人生を注いだら、どうなるんだろうか。きっと、すごい笑えてる。絶対に後悔しない。なんか、そっちの方がしっくりくるな。僕はここで旅を諦める。この子たちと生きてみる。

初海外ネパールに一ヶ月滞在をして帰国。部活動を辞め、日本にいるときは学校に通いながら、子どもたちのために何ができるかを考えた。チャリティイベントを開いた。人が来なかった。街に出て募金活動をした。声を張り上げた。一円も集まらなかった。企業を回って頭を下げた。子どもたちの現状を必死に伝えた。そんなんじゃ社会でやっていけないよって笑われた。何も力になれない自分がいた。大学の休み期間が来たらボールを持ってネパールへ帰った。

おかえりと子どもたちがぎゅっと抱きしめてくれる。時間をともにすることが僕のできる唯一のことだった。

ある時、一人の子どもからこんなことを言われた。僕は学校に行くと親がいないことで嫌がらせを受けるんだ。でもサッカーをすると全て忘れられる。また頑張ろうと思える。そんな言葉に救われた。

かれこれ、活動を続けて四年が経つ。子どもたちの生活を必死に支えようと奮闘する日々。たくさん失敗した。たくさん笑われた。気が付けば、仲間も増えていた。イベントには年間何千人という人が参加してくれた。テレビやラジオに自分の姿があった。

旅はまだ途中みたい。ネパールを中心にいろんな国に遊びに行けるようになった。旅を諦めた僕が自由に世界を旅していた。旅先では、たくさんの子どもが僕の訪れを待っていてくれている気がする。多くの子どもたちと笑いたい。世界を旅しながら、その国とそこに住む人々としっかり向き合いたい。日本ではたくさんのご飯が破棄されている。途上国に支援されているご飯の量の倍の量。あの時、ご飯を分けてくれた子どもたちのように僕たちが世界に分けてあげれるように。僕たちが美味しいもの食べた分だけ、世界中の人たちが美味しいものを食べるんだ。僕たちが世界を旅した分だけ、世界に笑顔が増えるんだ。そんな素敵な世界をきっとつくれる。

僕たちは未来を生きる子どもたちに、今の地球を借りている。存分に楽しもう。そして素敵な地球を子どもたちに託そうよ。

#旅とわたし #tabippo

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たけなかしゅん

ネパールにて42人の孤児のパパ奮闘日記
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