Webにおける体験型イベント(体験型イベントAdvent Calendar)

 体験型イベントAdvent Calenderの5日目です。ギリギリです。

(この記事では様々な謎解きイベントの形について書いていますが、決してそれらについて優劣を決めようということではないことを予めご了承ください)

 webで流行っている脱出ゲームを現実に起こし、実際に人を閉じ込める。それが「リアル脱出ゲーム」であり、「体験型イベント」ブームに火をつけることになりました。
 体験型イベントは、お決まりの文句「皆さんが実際に〇〇していただく」というのが肝です。体を動かし頭を捻り、見て聞いて触って喋って(時には嗅いだり味わったりして)物語の中へと引き込まれていく。画面越しでは到底成し得ないような体験が、そこにはあります。

 では、web上で「体験型イベント」を行うことは出来ないのでしょうか?
 まず挙がってくるのが「web謎」だと思います。「リアル謎解きゲーム」の「謎解き」をピックアップして、web上でいつでも楽しむことができる。解くのも、作るのも、リアルイベントよりハードルが低く、今年に入ってからはアクア城やリアル脱出ゲームTVの影響で盛んに出しあい解きあいが行われています。

 しかし、いわゆるweb謎というものは、あまり体験の要素がありません。
 NAZOPLAや東狼研究所のような画像謎は基本的に1問で完結し、そこに用意されているのは正解にたどり着く達成感です。
 様々な団体が続いたアクア城シリーズや、ヤミネコが毎月公開していたようなサイトを利用したweb謎(一般的にweb謎といえばこれでしょう)は、60分規模のリアル公演の謎要素をまるっとwebで実装したようなものです。解きごたえや物語の体験度など、非常にクオリティの高いものも次々に現れています。しかし、他のブラウザゲーム同様、どんなに凝ったストーリーでイラストや音楽が素晴らしくても、画面を閉じてしまえばそこにはいつものデスクトップがあるだけです。体験という視点で考えれば、一般的なデジタルゲームと同程度といったところでしょうか。
 ブラウザの枠を超えたweb謎も、いくつか存在します。ネタバレになりかねないので伏せますが、「16○○○」とか「13○○○」とかですね。前者はリアル脱出ゲームを解いているような感じ、後者は非常に現実に近い演出によって物語へ引き込まれる感じがしました。これらの謎解きには、多少クリアタイムの競争はあれど、基本的に「自分」しか登場しません。誰がプレイしても、同じストーリーを楽しむことになるのです。


 次にあげられるのが、「あんたがた」やARGといったイベントです。最近では「3D小説」が大盛り上がりでしたね。一人では解けない、途方もなく大きな問題を、皆で協力して解き進めていく。何十人何百人という一つのチームで、日本に仕掛けられた謎を解き明かしていくのは、とても楽しい経験となるに違いありません。しかも物語の現象が、現実世界で繰り広げられるのです。こんなに夢中になれるものはそうそうないでしょう。

 しかし、このようなイベントでは、参加している全ての人が同じ体験をするわけではありません。提示された問題は最初に誰かが解けば充分ですし、その日に現地に行けなければあまり意味はありません。大きなチームゆえに、大仕事を果たす人、貢献度が小さいままの人、いろいろな状態の人がいる中で、イベントは完遂されてしまいます。特に現地へ行くような行動は、体験できた人にとっては大きなインパクトを与えますが、それをネット越しに見ている人にとっては、そこまでの熱量が伝わらないかもしれません。


 そこで、満を持して登場するのが「個人戦」というスタイルです。具体的に言えば、「謎解き王トーナメント」であり、「三億遊戯」であります。(ステマではない)

 謎解き王トーナメントは、従来のweb謎によくある形で、早く解いた者が勝者となるルールですが、それよりも大きな枠組みが存在していました。それは「ブロックの選択」です。このトーナメントに参加するためには、エントリーして予選ブロックを選択する必要がありました。これにより、界隈で有名な方のエントリーが話題になり、ライバルの状況を考えて自分のブロックを選ぶといったドラマが、一人ひとりの中で生まれるようになりました。名だたる強敵が居並ぶブロックを選択した時、貴方は間違いなく主人公で、このトーナメントを観客席からではなく、競技場から体験したはずです。

 「三億遊戯」については知らない方も多いを思うので、第一回三億遊戯「PrimeNth」の様子をまとめたtogetterを貼っておきますね(編集してくださった方本当にありがとうございます)。たった数ツイートのルールが公開された後、ゲームは始まります。貴方は普通に数字を送って、結果を待ちます。そして発表された結果に、貴方は度肝を抜かれるのです。勝者は、圧倒的な勝利を収めていたのですから。深淵なる数学や超越した論理を駆使して、何人いるともしれない他プレイヤー全員を出し抜き勝利をおさめる。それが「三億遊戯」なのです。このゲームは完全に現実でありながら、その結果はマンガやアニメのように暴力的。実際、結果がどうなるかは誰にも、企画者にもわかりません。ひねくれた回答が山のように押し寄せる中で、素直に数字を送った人が2位に食い込んだりするなんてこともありました。それもまたこの「遊戯」の醍醐味と言えるでしょう。化け物のようなプレイヤーが暴れまわる中で、どんな文面で送れば勝てるのか。それを考えている時、貴方はまぎれもなく主人公になっているはずです。

 これらの「個人戦」イベントでは、一人ひとりに自分視点の物語が生まれています。イベント開催者が物語を用意したわけではありません。ただお膳立てをしただけです。プレイヤーによって物語は動きはじめ、次第にそれはとても大きな流れとなって全国各地の人を巻き込んでいきます。なんて素晴らしいんでしょう。こんなものを考えたのは一体どこの団体でしょうか。なるほど、謎解き王トーナメントは零狐春、そして三億遊戯はZER0KIT……? 

   「個人戦」と勝手に名づけたこのスタイルにも、もちろん問題はあります。それは「モブ」です。対戦しているゲームである以上、そこには勝者がいて、敗者がいます。勝者を絞れば絞るほど、参加規模が大きくなればなるほど、敗者は増え、結果を見た際には蹴散らされた「モブ」と認識されかねない。ARGにおける、ずっと追っていたけど特段貢献せずに終わってしまった人と同じ、もしくはそれ以上のガッカリ感が残ってしまうかもしれません。わざわざ蹴散らされるために参加しようとは思いませんものね。ではどうすれば打開策となるか。それは、参加者全員が「圧倒的主人公」になれるようなイベントを開催することです。具体的にどんなゲームかって?その構想はあるのですが、かなりあるのですが、ここで書いてしまうのはもったいない。ゲーム開催時にドドーンと発表したほうが、盛り上がるというものでしょう? 

 普段は100文字程度のつぶやきしか書いていない人間が、珍しく長々と書き連ねてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。あんたがたも3D小説もREGAMEもまともにやってない「にわか」が何を書いてるんだという気持ちにもなりましたが、たまにはこうやって公開するのも悪くはないでしょう。アドベントカレンダーですし!クリスマスですし!! 

 ……さて、三億遊戯の裏話をもういくつか。
 ルールは自分で考えてます。審判はわんどさん始め「つよい人」に頼っています。2回やって、わかってる人はわかってると思いますが、「どの数字を選べばいいのかな~」っていうゲームとして作られてはいません。特に一回戦は。そういうゲームも別枠でやりたい欲はあるのですが、そこまでの余裕を持てていません。ルールについては、適当に考えているように見えて実はしっかり考えられているように視えて適当に考えています。完全に見切り発車で開催してますが、今後は一旦ブラッシュアップをかけてからやりたいなーと思ってます。黄金鉄道999の三回戦?や、やりますよ、キット……(震え声)一応改案ルールは決まってるのですが、時間的人的余裕ががが 誰かかわりに運営してくれませんかね? 

 三億遊戯のストックは、今現在24個あるそうです。txtファイルを開くと一文だけ書いてあるだけというよくわからないものもありますが。全部やりきれるんだろうか。生きているうちに。
 他にもいろいろwebで出来そうなイベントはあるんですが、自分一人では難しいですし、ZER0KITメンツもたいがい忙殺されてますし、零狐春には次から次へとリアル案件が舞い込んでくるしで、全然実行に移せていないのが現状です。
 最初アレですよ、トーナメントは9月開催とか言ってたんですよ。信じられない。まあ、第一回を超えるトーナメントが開催されるはずです。乞うご期待。

 この記事を通して伝えたかったこと。謎解きがこんなに広まって、いろんな世代、そしていろんな地方の人がつながってきたタイミングで、日本全体を使ったイベントを作らない手はないでしょうということです。おおがかりなARGは企業様に任せて、もっとシンプルに(※)盛り上がれるモノを、作ってください。だれか。参加したいから。

 (※)シンプルにと書きましたが、これは決して作るのが楽ということではありません。トーナメントでは都合7つのweb謎を一晩で公開する(さらに鯖落ちに気をつけながら大会運営も遂行する)という前代未聞の荒業のために、デザインさんとか動画さんとかwebさんが何回か死んだと聞きますし、三億遊戯は事前準備こそほとんどないもののいざ始まったらルールを蹂躙する皆様のせいで運営(主に審判)が地獄を見ます。熱狂の裏には発狂があるものなのです。

さてさて、ココらへんで記事もオシマイにしましょう。こんなに長い(ツイッターと比べて)文章を書いたのは久しぶりなもので、読みにくかったかもしれませんが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。次の記事はいつ書かれるか知りませんが、その時までごきげんよう。もしかしたら、謎解き大学で「三億遊戯–the REAL-」なんてのをやるかもしれません……

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