沢木監督が描く『写真を撮りたいチーム』とは〜村上晃一さんとの対談を読んで〜

日比谷シャンテの地下に、宝塚グッズ専門の店『キャトルレーブ』がある。決して男性が入り込めない店内の左奥に宝塚の舞台写真が売っている。税抜き1枚300円2Lサイズ。絶妙な値段設定。空いた時間帯を狙いそのエリアに迷わず突入、宝塚屈指の実力派トップスター望海風斗、ニックネーム『だいもん』の写真を手に取る。なんで美しいのか。どの写真も、大人の男の愛と哀しみが溢れている。選んで買おうと心に決めながら、気がつくと片手に余る量を抱えレジで5000円札を出している。だいもんはこの上なく美しい。仕方がないのだ。

昨日、キャノンイーグルス監督沢木敬介さんとジャーナリスト村上晃一さんの対談がネットに挙げられていた。numberで取り上げられたばかりなのに、沢木さんの人気と期待の高さは日を追うごとに増すばかりだ。

今回は大分準備をされてきたのだろうか。沢木さんが『例え話』を口にするのは珍しい。状況把握の正確さと表現する言葉を選ぶ的確さが 沢木さんの持ち味だと思っている。今回は切り口を変えたい何らかの理由をお持ちだったのだろう。

『写真を撮りたいチーム』

言い得て妙、というか、親会社の看板商品を意識したことを差し引いても、キャノンというチームの目指す場所を的確に表現されていると思う。

これにはいくつかの意味が含まれているのだろう。以下、勝手に想像してみる。

一つは被写体としての選手の在り方だ。

『だいもん』の写真が美しいのは顔が端正だから、だけではない。それはおまけだ。肩の位置、顎の位置、腕の位置、なにより目線の位置。あらゆる所作が男役として完成されているからこそどの写真も美しい。

ラグビー選手も同じ事だ。走る、蹴る、タックルする等あらゆるスキルを身につけて試合に臨む。より高度で正確なスキルを持った選手は、いつシャッターを切っても美しい被写体となる。田村選手がいい例だ。彼は『キックをするため』に立っている。どこに体重を乗せ、次の瞬間どこに体重を移していくのか、それを理解している立ち姿なのであって、単に突っ立っている訳ではない。だから美しいのだ。

その意味で沢木さんの究極の理想は

『いつシャッターを切ってもいいチーム』

『試合中写真を撮り続けたいチーム』

なのだろう。

もう一つ、今度は撮る側になってみた場合の選手の在り方だ。

神戸製鋼と対戦して不用意にタックルをくらったら、その瞬間は神戸製鋼の選手が主役でキャノン選手は引き立て役になる。そんな写真はいらないだろう。自分がキャノンの高性能カメラだったとして『ここでこんな写真を撮る』とシャッターを切った瞬間に、思い描いた通りの光景をフィールド上に自分で作り出す、そんなイメージは私の考えすぎか。

あるいは沢木監督がカメラマンで『次のこの瞬間こういう位置どりでこんなショットにしたい』とシャッターを切った瞬間、フィールド上に選手達がその絵を自然に作り出している、そんな感じか。

言葉というのは読み手によって勝手にどこまでも膨らむから面白い。沢木さんは全然別の事を考えていらっしゃる可能性もあるが💦その場合は素人の独り言としてお許し下さい🙇‍♀️🙇‍♀️🙇‍♀️

沢木さんがこうも続けて取材を受けられるのは、単にキャノンを盛り上げたい、ということではないと思う。コロナによって完全に寸断されてしまった

『W杯の成功とトップリーグの成功、ラグビー熱の高まり』

誰かが再び結びつけ、新リーグを盛り上げる必要がある。沢木さんは監督としてその旗振り役という覚悟がおありなのかもしれない。今日までの指導者としての実績、ラグビー解説者としての人気、そして女性ファン獲得に十分貢献するビジュアル、この全てが武器になることを沢木さんは理解されているのだ、きっと。

来季日本人監督は現時点で5人。箕内監督、堀川監督、神鳥監督、浅野監督、そして沢木監督だ。びっくりする程キャラが被らない。沢木さんお1人が背負う事なく5人がそれぞれのアプローチで、明日のトップリーグを盛り上げてほしい。

だいもんは、トップになる前に、ミュージカルの金字塔『エリザベート』で皇后エリザベート暗殺者ルイジ・ルキーニ役を務めている。ルキーニは歌う。

♪皇后は 遂に気づき始める その美貌が 役に立つと♪

沢木監督は既に気付いている。その力量も、性格も、美貌も、明日のラグビー界の役に立つと。



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