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薄ピンクのオタクがDIALOGUE+朗読イベント「世界はこじつけでできている。」を観に行った件

7月16日に開催された、DIALOGUE+朗読イベント「世界はこじつけでできている。」を観劇してきた。

昼夜両公演ともに約1時間という短い公演時間ではあったが、舞台劇に近い形式での朗読劇や既存曲のアレンジバージョンでの披露、新曲の発表もあるなど、見所がしっかりとあるイベントだった。

劇のストーリーも良かった。
劇本編の中で主軸として登場する「ある事件」は明確に解決されないまま、ある意味「投げっぱなし」で終わるのだが、その投げっぱなしにもちゃんと意味を持たせた終わり方だったのが個人的に好感触だった。


今回の記事は、その「投げっぱなし」となる理由に絡めた話だ。


物語後半、特典として配布された台本で言うところの「シーンN」での教頭のセリフ。

教頭  永遠よりも、期限付きの輝きのほうが大切で──だから私は、世界に理由をこじつける遊びを開発したんだ。

このセリフを聴いたとき、どうしても僕はふたつのあるものが頭に浮かんだ。

ひとつは、先日配信が開始され、8月24日にCDが発売されるDIALOGUE+の7thシングル「デネブとスピカ」だ。

僕は先日、この曲について「田淵智也による呪いではないか?」という記事を書いた。

「デネブとスピカ」は間違いなく「呪い」だ。


そして、今回の朗読劇「世界はこじつけでできている。」も「呪い」だと思っている。



そして、もうひとつ。

いまや日本を代表するエンターテインメント企業となったLDH JAPANが手がける人気プロジェクトに「HiGH&LOW」という作品がある。

この「HiGH&LOW」という作品を象徴するものとして知られる、有名なセリフを紹介しよう。


「永遠じゃねえ。無限だよ」


「HiGH&LOW」の登場人物が、人生におけるひとつの感動に「この瞬間が永遠に続けばいいのにな」と語ったことに対して、その相棒が返した言葉だ。

永遠というものは存在しない。すべてのものには必ず終わりが来る。
しかし、限られた時間の中で精一杯輝いたものは、その先に無限の可能性をもたらし、次へと拡がっていく。
これは「HiGH&LOW」という作品のテーマだ。


この「永遠じゃねえ。無限だよ」という言葉が、観劇中に思い浮かんだものの「もうひとつ」だ。


「永遠じゃねえ。無限だよ」は「青春」をテーマとするあらゆるモノに通じる。
それは映画やドラマ、アニメ、漫画、ゲームといった作品だけではない。リアルの人間関係。部活動やサークル。友人。
そして、バンドやアイドルという「グループ」も「青春」の物語だ。
そこに年齢や男女の違いは関わってこない。

「世界はこじつけでできている。」は青春の1ページを描いた物語であり、この朗読劇を演じたDIALOGUE+というユニットも、青春の1ページの物語だ。

先述した、朗読劇の中での教頭のセリフ。

教頭  永遠よりも、期限付きの輝きのほうが大切で──だから私は、世界に理由をこじつける遊びを開発したんだ。

これはまさに、「HiGH&LOW」で出てきた「永遠じゃねえ。無限だよ」と同じなのだ。



教頭のセリフと同じく「シーンN」に登場する、主人公のセリフ。

主人公  うーん。どうしてって言われても、特にないですよ。私は毎日に期待してなくて。途切れない幸せとか、永遠に続く楽しさなんて、ないと思ってるだけですもん。

この物語の主人公は、こんなつまらない日々がいつまで続くのかと、繰り返される平凡な毎日に疑問を抱いて生きている冷めた高校生だ。

そんな主人公に対して教頭は、自身も同じことを考えていた時期があったと話し、そこから「捉え方を変えてみた」という経験を語った。

教頭  繰り返される日々であることから目を背けることもしなかった。かといって、繰り返しを、悲観的に見ることもしなかった。私たちはいつも、いろんなものの中間の、どこでもないところにいるからね。

そして、そこからの主人公との会話の中で、先述のあのセリフが出てくるのだ。

劇中、ポイントとなる場面で歌唱パートが挟まれる。
この「シーンN」で流れるのが「Sincere Grace」。

どんな時も忘れないでいたいな
この今が宝物だってこと
ずっと笑っていたいから
Sincere Grace fo me


永遠に続くものはない。しかし、輝かしいほどに楽しい一瞬は作れる。

物語の中で登場する「ある事件」。
この事件は「死傷事件」であると作中で明示されている。
どう考えても楽しい話ではない。

しかし主人公たち「日常研究部」は、この事件の謎を自分たちの考えでこじつけ、それを自分たちの中での真相にする。
部のルールである「真実よりも面白く!」に則り、部長は言う。

部長  それ、採用!

すべては、今を楽しくするためだ。

こうして、事件の真相は明らかにされないまま、物語はエピローグを迎える。
つまらないような毎日でも、無理やりこじつければ楽しい今日に変えられる。だからそのために、この毎日がずっと続きますように。
そう主人公たちが語り、物語は幕を閉じる。


「HiGH&LOW」の「永遠じゃねえ。無限だよ」は、「世界はこじつけでできている。」のテーマと同じなのだ。

そして、これは「デネブとスピカ」の歌詞ともシンクロしている。

だからジュリエットとロミオさえ
イブとアダムさえ知らないような凸凹を楽しもう
星が幾年も巡回して大人になる頃に
どんな結末を迎えてても笑い話にしよう

物語に必ず終わりは来る。しかし、その先の未来で笑っていられるために、今を精一杯楽しもう。

「永遠じゃねえ。無限だよ」の精神なのだ。


「永遠じゃねえ。無限だよ」の精神。

どうもここ最近のDIALOGUE+は意図的にこのメッセージを投げかけてきているように感じる。

我々DIALOGUE+のオタクは、「このユニットが永遠に続けばいいのにな」と思いがちなのだが、それに対して、公式側から「いつか終わりは来る。だから、終わった後に『あの日々は楽しかった』と思えるように『今』を楽しんでみないか?」とハッキリと提案されている気がする。


これは優しい提案だ。


そして、同時に「呪い」だ。


「デネブとスピカ」は田淵智也からの呪いである。
そして、「世界はこじつけでできている。」はDIALOGUE+と、彼女たちを愛してくれる脚本担当の屋久ユウキ先生からの呪いだ。


4年目に突入し、ユニットとして最大の試練の渦中にいるDIALOGUE+。

彼女たちがこれからどう進んでいき、どこに着地するのか。
何をどう考えているのか。

それは我々オタクには何もわからない。



でも、だからこそ、「こじつけ」という工夫で、楽しい今を作れる。

このいつもと変わらない毎日が──いつまでもずっと、続きますように。

世界はこじつけでできている。

「DIALOGUE+」もこじつけでできている。

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