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MINT SPECがIZAM司会の音楽番組にゲスト出演・前編

はじめに:この度は記事執筆にあたり、MINT SPECサイドから写真使用の許諾をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございます。
記事前編では、執筆時点での最新のアーティスト写真、後編では番組出演時の使用機材の写真を掲載させていただきました。

 YouTubeをメインの活動舞台とする2人組ロックバンド・MINT SPECが、IZAM(SHAZNA)が総合司会を務める音楽番組『MiX MUSiC』の5月1日の放送にゲスト出演した。

 この番組はMusic Champというアプリをダウンロードすると見ることができる。筆者は初めて利用した。過去の出演者には米倉利紀・玉置成実・上木彩矢、MINT SPECの後にも松本英子といった、ヒットチャートで名前を見かけた面々が見受けられる。この並びにMINT SPECが入るのか!と思うと感慨深くもある。こちらのトーク番組とは別に、このアプリ内では元KalafinaのHikaruが近々配信活動を始めるようだ。

 MINT SPECの登場前からコメント欄の賑わいように、司会のIZAMも驚きをみせていた。冒頭では、IZAMが彼らのプロフィールを読み上げる。おおむね、次のように紹介されていた。

 MINT SPECは2019年7月1日結成。YouTubeチャンネルにX JAPANなどのカバー動画を投稿(編注:作品はYOSHIKI本人の目にも留まっており、Twitterで相互フォローとなっている)。総再生回数は1000万回。チャンネル登録者数は45000人以上。昨年はフジテレビNEXTの番組『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村』に出演した。
 ボーカルのMiiは沖縄県沖縄市出身。幼少のころから歌好きで、同郷の安室奈美恵・SPEED・Kiroroに憧れ、歌手を目指す。2016年1月に上京し、地下アイドルとして秋葉原などでライブを中心に活動していた。

 ギターのTsukushiは東京都葛飾区出身。中学生のとき坂崎幸之助(THE ALFEE)に憧れてアコースティック・ギターを始める。その後のビジュアル系ブームを経てエレキ・ギターやレコーディングにも興味を持つようになり、高校生から作曲を始める。DTMによる、他アーティストへの楽曲提供を行なってきた。

 原稿を読み終えたIZAMが、いよいよ本格的にトークを開始した。結成の経緯を尋ねると、Miiが答える。地下アイドルの活動に活路を見出せず、単独でYouTubeチャンネルを立ち上げるも、思った結果が得られない日々が続く。(このときのアーティスト名義は藤崎未花。チャンネル名も"藤崎未花のうたちゃんねる"で、現在とは違っていた)。
 この状況を打開すべく、裏方で活動していたTsukushiをMiiが誘って2人組になる。ここから状況が好転しだした。
 今度はIZAMがTsukushiに話を振る。誘いを受けてどう感じたのかを尋ねると、「あ、ちょっと勘弁して下さい!」と、手を横に振って拒絶するジェスチャーを交えながら、Tsukushiが最初この誘いには乗らなかったと答えた。表舞台に立つのは気恥ずかしく、裏方稼業の方が性に合っていると思っているようだ。しかし何度断られてもMiiは諦めず、最終的にはTsukushiが根負けするような形でバンド結成に至ったように映る。IZAMも当時のTsukushiの心情について「しつこいなあ、この女!と思っていたの?」と問いかける。話の進め方が面白い。
 
 もともとは、作曲活動をしていたTsukushiの作品がMiiの目に留まり、デモ音源制作の際の仮歌シンガーにMiiが応募した。これが2人の最初の出会い。そこでの印象をIZAMがTsukushiに尋ねると、
 「そうですね。安いお値段でやってくれるので助かりました」というTsukushiの答えに、「ちょっと、安い女みたいに言うのやめてもらっていいですか?」とMiiが返し、一同、笑いが巻き起こる。IZAMとしては、歌声の印象など、音楽活動につながるような返事が返ってくるものだとばかり思っていたのかも知れない。
 Miiも自ら「リーズナブルです、どうもー!」と自虐ネタを挟み込み、笑いをブーストさせていた。
 
 筆者もMINT SPECの結成当初の状況や、藤崎未花名義でソロ歌手として活動していたときのことは、後日談で断片的にしか知らなかったので、こうして正式にインタビュアーを立てて話が聞けたのは良かった。
 2人組ユニットが立ち上がるのは、往々にして作曲をする側がボーカリストの歌声にほれ込んでとか、自分の音楽を表現してくれる存在に出会えて、といったケースを想像しがちだ。B'zやaccessもそう。だが、MINT SPECについてはまったく逆で、発起人はMiiなのである。これはYouTubeの生配信で以前に話されたこともある。
 初めて知ったときは、Tsukushiが誘われる立場だったことにかなり驚いた。与えられた曲を与えられた場所で歌うだけではなく、バンドを立ち上げるというような、自らアクションを起こしていくようなイメージを、筆者はMiiには持っていなかったからだ。

 トークが進んでくると、やがてMiiの歌声の印象の話になってくる。Miiの歌声には癖がない。IZAMは、ここを拾って話を広げてきた。癖がなく、まっすぐ歌える人というのは、実は少ない。癖があると、確かにその人の色にはなるが、プロデューサーの中には、まっすぐ歌って欲しいと考えている人は多い。このような説明で、Miiの歌声の魅力のクローズアップを図っていたようにも思える。
 制作者のTsukushiの印象としては「使い勝手が良い」というものらしい。どうも声自体にはあまり深い思い入れはなさそうに映るのが、見ているこちらとしては面白い。
 ここまで見てきて、たしかに仮歌シンガーなら恰好の素材だなと筆者も思った。TsukushiがMiiと活動を共にしている理由も合点がいく。癖が強ければ強いほど、本チャンテイクを歌う歌手にとっては、歌いまわしの想像の余地がなくなっていく。仮歌のイメージに引っ張られ過ぎるのは、作品の仕上がりにあまり良い影響にはならない。メロディーの輪郭以外の、余計な情報を混ぜ込まない方が、デモ音源としては望ましい。
 ただし、オリジナル・シンガーとなると、この余計な情報は唯一無二の個性となり、持ち主としては必要不可欠な要素。現在、Tsukushiはここに葛藤を抱えながら制作をしているのではないだろうか。

 IZAMは、Tsukushiを見ていて、「良い人」感がすごく出ているとも話していた。Twitterに投稿された、番組出演の告知動画の2人を見ても、Miiが懸命にPRをする傍らで、短く相槌を打つだけのTsukushi。ミュージシャンというのは斜に構えているイメージが強い。ギタリストともなれば、尚更ギラついていそうなものだ。こんなギャップを、IZAMは面白く感じていたようだ。Tsukushiは「あれで精一杯なんです」と答えていた。リハーサルを少し聴いたIZAMは、その勢いよく攻め上げた出音からは、緊張のかけらも感じなかったようだ。だが弾いている本人がこれとは裏腹に、こんな優し気な好青年だとは、想像もつかなかったのだろう。

 それから、男女ユニットならではの苦労について話題が移る。女性の周期的な浮き沈みは、男性には察知できない。今までに話したことのない、活動中に困ったことは何かないかIZAMが尋ねると、Tsukushiの意外な回答が返ってきた。
「いつも困っているので」
 これには筆者もズッコケながら笑ってしまった。ことのつまりは、求める歌声がなかなか得られないということのようだ。Miiの歌について「たまに調子が良い」など、Tsukushiの一言に場が盛り上がる。

 Tsukushiには彼なりの理想とするボーカリスト像が確固としてあって、現状、Miiの歌唱技術がその域に達していないのもうっすらと伺い知れる。しかし、Miiにはそれを補って余りあるチャームポイントがある。頑張る姿を見せることで、人の心を熱く震わすエネルギーに満ち溢れているのだ。バンドのフロントマンにとっては重要な素養だ。これに歌唱力が追いついたとき、MINT SPECは更なる躍進を遂げるだろう。
(後編へ続く)

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