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どんな選曲方法なら、推しバンドのプレイリストを楽しく作れるのか

 音楽ストリーミングサービスの、大きな楽しみ・プレイリスト。近年では、生まれて最初に触れる音楽再生手段が、これだという世代も出始めていることだろう。筆者はカセットテープの時代を知っている。音源探しや録音・編集において、今とは比べものにならないほど制約の多い中でも、選曲・曲順に頭を悩ませながら、一本のミックス・テープを仕上げるのを楽しんだものだ。昔よりもはるかに便利で手軽に、お気に入りの楽曲をまとめる環境ができている。今こそ、プレイリストで音楽鑑賞を楽しんでみてはいかがだろうか。

 筆者が利用しているのは、世界最大手のSpotify。まずは無料プランからのスタートだったが、それでもフルコーラス再生できるのが大きな決め手だった。

 当時はまだまだ邦楽のラインナップが弱かった。筆者がよく聴くアーティストのうちでも、有名どころの安室奈美恵やB'zも未解禁。『CAN YOU CELEBRATE?』や『Love Phantom』さえも入っていない頃があった。90年代のヒットチャートを知るリスナーなら、基本中の基本すら抜け落ちていると感じるだろう。

 これではお金は払えないと思っていたが、安室奈美恵の解禁を機に、有料プランに切り替えた。後にB'zも解禁され、邦楽ラインナップへの不満な点は、かなり減ってきている。あとは世界一のお気に入り・V2『背徳の瞳』が加われば、相当満足度の高いラインナップになるのだが。

 有料プランに切り替えると、制約が解けてプレイリストを作るのが俄然楽しくなってくる。作りたてのときは、カセット・テープを編集していた頃の延長のような感覚でやっていたが、昔は音源の収集ひとつとっても、人気アーティストの新譜だと、レンタル・ショップに行っても先客に在庫をすべて借りられていて、発売日に即、入手というわけにはいかなかった。今はこのような心配はない。

 自分の好きなジャンルやアーティストの音源をひたすら追いかけるだけでも十分楽しいが、他にも楽しみ方がある。それは他のリスナーのセンスを自分のプレイリストに組み込むこと。

 今、筆者が注目しているバンドが、MINT SPECだ。邦楽のカバーをYouTubeに掲載し、リスナーからのリクエスト曲に応える生配信も行う。そんな彼らの活動を追いながら自作しているプレイリストがある。単に彼らの作品のカバー元の方を制作順にリストアップするだけだと、誰が作っても同じ結果にしかならない。そこで、生配信で歌われた楽曲も選曲対象に入れる。

 さらに、そのときどきのトレンドに、筆者が強くプッシュしたいアーティストや楽曲なんかも混ぜてみる。プレイリストの全曲を自分の選曲で固めるのではなく、MINT SPEC本人たちと、その視聴者の選曲もミックスされているのがポイントだ。

 組み始めではプレイリストの材料となる楽曲たちが、脈絡なく並んでいる状態。ここから音楽鑑賞を盛り上げるために必要なものをピックアップして、関連づけながら並べ替える。こういう組み方をすると、自分からはまず掘らないような角度からもDigすることができて、思わぬ新発見につながる。

 実例を挙げよう。この方法でDigったとびきりのイチオシ曲がある。KICK THE CAN CREWのMCUがソロ活動で2009年にリリースしたアルバムに収録されている、『STILL LOVE』。客演ボーカルにGLAYのTERUを迎えたコラボレーション作だ。KICK THE CAN CREWとGLAY、どちらも比較的良い印象のあるアーティストではあるものの、それぞれのソロ活動まで追いかけるほど、強い熱を持っているわけではない。だが、プレイリストに一貫性を出すためにあれこれ工面しているうちに、素晴らしい曲と巡り合えた。

 Spotifyは年末に、ユーザーが頻繁に再生した曲をランキング化して知らせてくれる、Spotify Wrappedという企画がある。そこで、昨年の筆者の再生回数トップ5入りしたのがMCUの『STILL LOVE』なのである。これはMINT SPECのプレイリストを作っていなければ、知らないままだったろう。

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 ここでのこだわりは、直前・直後の楽曲で、何らかの関連性をなるべく持たせること。

 例えば、ToshI『チキンライス』と天野愛莉(CV:水樹奈々),姫神紗乃(CV:Raychell)『WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーブメント~』を並べるにあたっては、カバー元の歌手が浜田雅功(H Jungle with t)という共通点がある。

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 別な例も挙げよう。THE ALFEE『メリーアン』と、観月ありさ『ヒトミノチカラ』を並べるにあたっては、作曲家がどちらも高見沢俊彦という共通点がある。GLAY『ずっと2人で…』と、中島美嘉『一色』も、共通の作曲家・TAKUROに注目したつなぎ方だ。

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 収録曲を点で見ると、何のまとまりもないように見えるが、実は細い糸でギリギリ繋がっていて、どうにかこうにか一貫性を保たせている。

 また、トータル・タイムは2時間で収めることにしている。これはMINT SPECの生配信が2時間に設定されていることにちなんでいる。時間制限をかけると、お気に入りの曲も泣く泣くカットせざるを得ないが、最初から最後まで聴くとなれば、このあたりが良い案配だろう。7~8時間あるプレイリストもよく見かけるが、作った本人さえも全部は聴ききれないんじゃないかと思う。

 あとは、現時点でも彼らの活動の軸になっている、X JAPANの楽曲はレギュラーでリストインさせることにしている。なんと言っても彼らのTwitterアカウントはYOSHIKI本人にもフォローされていることだし、これはYouTube生配信のX JAPAN縛りが続く限り継続するつもりだ。

 MINT SPECが新しいアクションを起こすたびに、プレイリストの内容も変わっていくので、作り手の筆者自身にも新しい発見が度々ある。これが楽しい。

 お気に入りアーティストのプレイリストを作るのに慣れてきたら、今度は公式プレイリストや一般ユーザーの作るプレイリストから面白そうなものを見つけて、そのエッセンスを拝借してみてはいかがだろうか。年末の再生ランキングが、自分でも予想できないような意外な結果になることだろう。

Spotify / ALL OF MINT SPEC and more...

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