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劇場用アニメソング鑑賞会(その1) 恋しさとせつなさと心強さとSONG MAFIA

2020/06/16


 1994年の篠原涼子with t.komuroのシングル「恋しさとせつなさと心強さと」は、劇場アニメ「ストリートファイターII」の主題歌に起用され、大ヒットを記録。時代が経過しても様々なアーティストに歌い継がれる名曲だ。今回は僕がよく利用している第一興商のカラオケ録音・録画サイトDAM★ともでのエピソードも交えながら、篠原涼子with t.komuroのオリジナル版にはない魅力を持つ、後発のアーティストたちによるバージョンに注目してみた。

m.o.v.e「恋しさとせつなさと心強さと」
アルバム「anim.o.v.e 02」(2010年発売)、「anim.o.v.e BEST」(2012年発売)に収録。

 m.o.v.eはデビュー当初から一貫して聴き続けている贔屓のアーティスト。好きな曲はたくさんある。そもそも駄目な曲がただのひとつもない。まさしく僕のストライクゾーンにドンピシャリだ。でもDAM★ともで遊ぶ際には、自分のマイページの色との兼ね合いもある。いくら好きでも自分で歌って録音するのは、最初のうちは遠慮していた。
 だがそれも「恋しさとせつなさと心強さと」のカバーと出会ってからは状況が反転する。「よくぞこの曲をカバーして下さいました!」というのが心の底から湧いて出た。このバージョンと並べて置いとく分には、m.o.v.eの他のあらゆる楽曲にも手が出せる。
 やはりラッパー・motsuの存在感が光る。最近はYou TubeでDJプレイも披露。本職はラップの方なのに、こちらも面白く聴かせてくれる。自らのユニット・m.o.v.eのバージョンから、AAAの「恋しさとせつなさと心強さと」にスイッチするような繋ぎ方もしていた。バージョンだけチェンジして曲そのものは変わってないっていうね。こんなんアリかいな。あとはmotsuの回すglobeの「Get Wild」が聴けた回もあったな。嬉し過ぎて涙がチョチョ切れるかと思ったよ。
 鑑賞だけにとどまらず、カラオケでも楽しく利用しているm.o.v.eの「恋しさとせつなさと心強さと」。僕がDAM★ともでm.o.v.eを録るときの、軸になる一曲だ。

華原朋美「恋しさとせつなさと心強さと」
アルバム「MEMORIES -Kahara Covers-」(2014年発売)に収録。

 小室哲哉と破局後も紆余曲折ありながら、リリースを続けた華原朋美。作曲家が別の人物になってしまったら、華原朋美の歌も聴かなくなってしまうのかなという気はしながらも、僕もその後の活動を横目でチラチラと気にはしていた。しかし、作曲家が誰であろうと、華原朋美自身の歌声にはやっぱり魅力がある。特に「as a person」は、小室哲哉こそ絡んでいないが、何度もリピートしたお気に入りの曲だ。さすがに以前ほどの派手な売り上げ枚数は叩き出せなくなっていくが、頑張って欲しいなとは思っていた。
 そんな中、久々に小室哲哉の楽曲を歌う機会が彼女に訪れる。水を得た魚のように、伸び伸びと歌う姿を見ると、やっぱりこの組み合わせだよなあと再認識させられた。この「恋しさとせつなさと心強さと」も、最初から華原朋美に書き下ろされたかのような歌いっぷり。有名な歌なのに他人の歌を借りてきた感じがまるでしないのが驚きだ。
 このバージョンでは変拍子になるトリッキーな間奏が耳をひく。僕もカラオケで歌を録音したことがある。主旋律をなぞるのではない。既に上手く歌って公開してあるテイクの上から、脇役で重ね録りした。コーラスだと僕の身に余るが、m.o.v.eのラップ・パートを他のバージョンにも強引にはめ込んで遊ぶのは楽しい。
 だがこの間奏の変拍子がネックになって、どうにも入れずに困っていた。コーラスができないから苦肉の策でラップで加入しようとしているのに、それすらもできない。ある日突然うまい割り込み方が閃いたのだが、このときはヤッター!と思ったものだ。確か風呂上りだったかな。緊張状態から解放されて一気にリラックスモードに入ると、何かが産まれやすいよね。
 現在は表舞台から身を引いている両者だが、また元気な姿を見せて欲しいものだ。

なちゃもろーる「恋しさとせつなさと心強さと」
You Tubeチャンネル「なちゃもろーる」に掲載。

 You Tubeにアップされているカバー動画から。メジャー・レーベルから出ている音源ではないようだが、先のm.o.v.e、華原朋美から続けて聴いても見劣りしない力作だ。随所にギタリストの技を散りばめた、ロック色の強くなったアレンジに、低域の迫力抜群の、落ち着き払ったボーカルがよく似合う。Aメロでさりげなくフェイントをかましている伴奏もポイントだ。楽器隊だけではない。ボーカリストも、篠原涼子がオリジナルでは行なっていないコーラスをほんのりまぶして、このバージョンならではの新鮮味を加えている。これは相当、制作慣れしている方の所業だなと感じる。
 僕の心が一番揺さぶられたのは、アウトロのギターソロ。篠原涼子のオリジナル版では、ラストのボーカル・パートをピークに、アウトロの鳥山雄司によるギター演奏では、収束に入っている印象を受ける。こちらは対照的に歌い終わってからもさらにギアを一段上げにかかっている。奏者の映像もないのに弾いてる手元が目に浮かぶ、熱い演奏を聴くことができる。

 この他にも、MAXやRAMIによる「恋しさとせつなさと心強さと」がリリースされている。各々の音楽性を活かした、ダンス・ミュージック仕立て、ハード・ロック仕立ての熱く激しいアレンジだ。この上アニソン界からはMay'nの「恋しさとせつなさと心強さと」まで存在。一方で、吉川友のソフトな肌触りのバージョンもある。
 さらにオリジナル歌手の篠原涼子with t.komuroのシングル表題曲の他に、楽曲の尺を長くした、1995年発売のアルバム「Lady generation」収録バージョンや、かつて在籍したグループ・東京パフォーマンスドールがメンバーも新たに復活して2017年にリリースした「恋しさとせつなさと心強さと」も合わせると…
 一気に曲数が揃って、この一曲のバージョン違いだけで1枚のコンピレーション・アルバムが作れてしまいそうな勢いだ。小室哲哉の凄いところは、「Get Wild」以外にも波及力の広い楽曲がまだあることだ。こんな作曲家はそうそういない。


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