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寄稿♯9:「結果」と「一体感」で大学日本一へ~神戸大学フットサル部のフィロソフィー~

こんにちは!今回は9回目の寄稿になります。

いよいよ大学日本一を決める「第15回全日本大学フットサル大会」が8月23~25日に、大阪府の岸和田市総合体育館で開催されます。

関西代表として3年ぶりに出場する神戸大学(神大)。フットサルの実力に加え、広報活動にも熱心で、noteを開設してから注目してきました。

神大が所属する関西リーグ2部やインカレ関西大会の試合を観戦する中で、部員たちとのつながりもでき、今回寄稿を依頼しました。2010年以来の日本一を目指す部員の想いに触れてもらいたいと考えました。

また、全国大会に出場するほかの大学、全国に届かなかった多くの大学にも、苦労や喜びなど得がたい体験があったと思います。大学生たちがこの大会にかける気持ちの一端が伝われば嬉しいです。

筆者紹介

岡村拓海(おかむら・たくみ)

1997年生まれ、大阪府出身。小学校1年生でサッカーを始め、秦野FC→渋谷中学→千里高校でサッカー部に在籍。「日本一」に惹かれ、神大フットサル部に入部。3回生から学生監督に。フィクソとして強い守備や、視野の広いパスから攻撃を組み立てる攻守の要。兵庫県選抜メンバーでもある。

それでは本文です(記事の写真は関西学生フットサルリーグ広報様、神戸大学フットサル部様提供)。

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悪夢のようなシーズン

「学生日本一」

これが自分が神大フットサル部に入部を決意した理由。「フットサルという競技が好き」「学生主体のチームの雰囲気に惹かれて」など、入部する動機は人それぞれと思うが、自分は全国という舞台、その中でも日本一を目指すチームに惹かれた。

大学入学までに全国という舞台に立っていなかった悔しさがあった分、その舞台への憧れが強かった。全国という期待を胸に入部を決意した。そんな期待を持って入部したものの、現実は甘くなく、全国への道は遠く険しいものだった。

入部して間もなく迎えた1回生のインカレ。兵庫県大会は応援も行っていなかったので、知らないうちに関西大会へと進んでいた。強豪だから余裕なのかなって感じだった。インカレ関西大会は、初戦から因縁のライバル同志社大学と当たることになり、1点を争う拮抗した試合だった。

結局、スコアは0ー1。同志社の牙城を崩すことはできず、立ち上がりの1失点が試合を決定づけることになってしまった。1回生の自分は落胆したものの、その後の全国大会で活躍した同志社をみて、同志社と渡り合った神大なら全国でも絶対に良い結果を残せると確信し、来年ピッチに立って全国を決めると誓った。

インカレ敗退後は、オービットカップ(関西学生選手権)で優勝、冬の全日本フットサル選手権(サッカーでいう天皇杯にあたる)では関西ベスト4など、チームは好調であるように見えた。

2月の社会人・関西リーグ1部2部入れ替え戦。神大は入れ替え戦を何度も経験してきたが、なんとか勝利し続け、関西1部リーグ所属という「伝統」を守ってきた。

今のチームなら、今回も憧れの舞台を次につないでくれるであろうと思っていた。ヴェイル大阪(現・FC大阪楽笑)と対戦した試合は、早々に得点するも連続失点を許し、ビハインドの状況が続く。

スタンドにいて、いつもと全然違うチームに見えた。プレーが浮き足立っていた。その時、ピッチの選手が背負っている「重圧」を1回生ながらに感じた。あの時の先輩の表情、残り時間が少なくなるにつれてベンチもスタンドも焦り出すあの感覚は忘れもしない。

2ー3で敗戦。まさか降格はしないだろうという「まさか」が現実となってしまった。憧れの舞台、関西1部リーグから神大は退くこととなった。そこからは悪夢のようなシーズンだった。

去年のインカレ。ピッチに立たせてもらう立場として、チームを全国に導ける存在になりたいと強く思った。関西大会で優勝して全国にいくイメージを何度も何度も繰り返したのを覚えている。

結果は、決勝で甲南大学に3-5で負け、創部初の県大会敗退。悔しかった。不甲斐なかった。苦しかった。あの時のことは今でも思い出したくない。だけど鮮明に残っている。あの絶望感。


もちろんチームの雰囲気も結果が出なくなるにつれて悪くなっていく。ピッチでは、各々が好き勝手言うし、ハードワークも少なかった。「フットサルという競技自体を楽しめ」。これはチームでもよく言われていたが、全然結果が出ない状況の中で、自分に楽しむ余裕なんて1ミリもなかった。関西リーグも1年での1部復帰を誓ったものの、2部では上位リーグにも入れず、チームは低迷したままシーズンを終えた。

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学生監督として外部監督招へいの決断

3回生になった自分が学生監督としてチームを担う立場となった。正直、嫌だった。こんな苦しい状況で・・・って感じだった。

でもどうせやるならチームを変えたいと思った。現状を少しでも。チームを始動するにあたって、自分たちが一番大切にしたいことは何かを考えた。

その軸は「強い神大を取り戻す。結果を残すシーズンへ」というあくまで「結果」にこだわる神大の風土と、その上でチームの「一体感」を大事にするというものに定まった。それから昨シーズンのことを振り返った。

チームに不満が蔓延してなかったか、果たして応援したくなるチームだったか、チーム力・一体感は?貪欲に勝つためにできる準備を怠っていなかったか。課題は多くあったが、それに対して行動が取れてなかった去年の自分が情けなかった。

また戦術面でも「神大のプレースタイル・フィロソフィーが曖昧」や「スカウティングの質」などが挙げられた。去年の反省点やこれからの自分たちが目指していくところを総合的に考えたときに、外部監督を迎え入れるという判断に至った。

そこに至る経緯は長かった。理由は一つや二つではないし、ミーティングで一人一人の意見を吸い上げたり、話し合ったりと多くの時間をかけた。今までの学生主体というスタイル、伝統を守り続けるか否か、という問題ともぶつかった。

学生主体に魅力を感じている選手もいる。伝統を壊して結果が出なかったり、退部者が続出したり、チームが崩壊したとしたら自分の責任というプレッシャーとも戦った。

だけど、自分たちの一番大切にしたいことはなにか。「結果」と「一体感」。それが成し遂げられたと感じることができる瞬間が訪れることが、自分たちにとって一番幸せなんじゃないか。何度も原点に立ち返って考えたとき、2013年度卒のOBである梶本さんを外部監督としてチームに招くことを決断した。

去年からOB、指導者ライセンス保有、指導に意欲的、自分たちの活動に時間をかけてくれることができる梶本さんの名前は挙がっていた。

チームに入ることが決まるまでに3、4回僕と2人で話し合う機会があり、真剣にチームのことを考えてくれていた。人柄に触れ「任せられる」と思った。

今シーズン、まだまだチームとして完成していないし、至らない所も多々あると感じるが、目標であったインカレ全国大会の出場と、関西リーグ2部も首位で後期に折り返したことを考えると、順調には進んでいる。

外部監督を招いた1年目に結果が出ているのは、梶本さんの人柄がすぐにチームに受け入れられたからだ。チームに合流してすぐ全員の名前を覚えてくれたことや、スカウティング、練習メニューなどチームに対してかけてくれている時間、選手とのコミュニケーション、片づけやモップなどを率先して行ってくれる姿勢、ゴールが決まったら誰よりも大きなガッツポーズ。

梶本さんの行動の一つ一つが、自分たちにとって親しみやすく、そして尊敬するきっかけになった。チームとして良い選択ができたと思うし、梶本さんには感謝している。

チームのことを想った行動を皆が評価し、チームの末端までそういった行動が取れるようになれば、まだまだチームは良くなるはず。もっといいチームになれる。また梶本さんを招いたことで「チームに対する行動を一人一人が取る」という主体性の部分に関しても考えるきっかけになった。

外部から監督を迎え入れたことで、学生主体という今までの自分たちのスタイルを崩すことになる。部員一人一人の主体性がなくなることが懸念された。部員とも梶本さんとも話し合い、新たに「強化部」を新設した。

監督に練習や試合のスカウティングを全て任すのではなく、「強化部」として部員から働きかけていこうというもの。どれだけ主体性が上がったかはわからないが、少なくとも主体的に行動できる人の数は、明らかに増えた。

ある程度チームの体制が決まった後のチーム作りは、一人一人が考え、行動するようになったことで例年よりこだわることができた。目標を決めるにしても、日々の取り組みに対しても、一つ一つ目をつけ、考え、必要なことは残し、変えるべきところは徹底的に変えてきた。

何か行動を起こす時は、自分たちの大切にしたいことである「結果」と「一体感」にこだわる。その行動が「結果」や「一体感」にベクトルが向いているかどうか。どんな行動もそこがズレていては、自分たちの目指すところに近づかないと思った。

縦の繋がりを強くするために今年度から「ファミリーデー」という企画を始めた。1~4年の学年をまたいだグループ(ファミリー)を7~9人で作り、月に1回程度食事に出かけたり、ほかのスポーツに親しんだり、日ごろ聞けないことを話し合い、絆を深めた。

部内で賛否両論はあったし、外部やOBからはサークルみたいな活動と非難されることもあった。けれども、自分たちは「一体感」を高めることに意味があったと感じているし、フットサルをしているとき以外の人柄に触れる機会も必要だと思う。

インカレ関西大会のあの雰囲気にも繋がっていたのかな、とも。自分たちの幹を大切に、ブレずにやる。そこが大切だ。

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全国大会も『全員×自分= 』で戦う

あっという間に、関西リーグ開幕、インカレ県大会が始まった。特にインカレ県大会にかける気持ちはどこよりも強かった。去年の雪辱を晴らすためにできることは全部やった。

スカウティングも、チームの雰囲気も、コンディションに関しても最大限の準備をした。広報がやってくれたnote企画は、部員がインカレへのそれぞれの思いをリレー形式で綴っていった。文章を読んで色々感じることがあったし、思いを共有できたいい企画だった。

決勝では甲南大学に11ー1で去年の雪辱を晴らすことができ、その後の関西大会も準備を怠ることなく挑んだ。突破できて思ったことは、準備の重要性だ。

最大限の準備をしたら、あとはピッチで思いっきりプレーし、楽しみ、闘えばいい。自分たちも相手チームも死力を尽くす中で、最後に勝敗が決まるのは、運であったり、チーム力であったり。高いレベルになればなるほど、力の差は紙一重だから、普段のチームとして個人としての行動が出てくる。

今シーズンはギリギリな試合が多い。特にインカレ関西大会の初戦・摂南大学戦は厳しいゲームだった。2ー2の同点で迎えた相手の第2PK。昨年までだったら「ダメだ」という雰囲気が出ていたかもしれない。

でも今年の神大には、ピッチの選手も、ベンチも、スタンドも仲間を信じる「一体感」がある。3回生の竹本が第2PKを止め、残り39秒で2回生の山上が勝ち越し点を挙げ、3-2で勝つことができた。ギリギリの試合を何回も乗り越えて、関西大会の決定戦では立命館大学に6-1で勝ち、3年ぶりの全国出場を決めた。


自分たちは昨シーズン1番苦しい時を過ごしている。どん底を見た。でも今なら「あのときがあったからこそ今がある」と思える。自分たちの弱いところを知っている。だから強く闘える。今のチームは負ける気がしない。自信持っていこう。

自分たちが1番目指しているところだから、それぞれいろんな想いがある。個人の想いを大切にしたいし、みんなにも大切にしてほしい。思いっきりぶつける。

試合に出て結果で見せる人も、ベンチから雰囲気を作り出し鼓舞する人も、スカウティングで戦術面からサポートする人も、最善の状態で戦える環境をつくる人も、枯れた声で最後まで支え続ける人も。全員が自分のできることをやりきろう。

その個人のチームへの想い・行動が、チームをより強固なものにすると思うから。個人の失敗は、仲間が、チームがカバーしてくれる。だから恐れずに、胸張って堂々と全国に挑もう。最後まで手を抜くことなく出し切って、今まで通り泥臭く勝ちきっていこう。

個人がチームを引っ張り、チームがその個人の挑戦を支える。今年のスローガンを体現できると信じている。自分たちはまだ何も成し遂げていない。まだまだ通過点。全員で「日本一」成しとげよう。全国でもう1回、Championeを歌おう。19年シーズンチームスローガン『全員×自分= 』で臨む。

神戸大学フットサル部に関わる全ての方々、全国大会もチーム一丸となり、全員で泥臭く戦っていくつもりですので、応援のほどよろしくお願い致します。


岡村拓海

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