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ユグド通信Vol.47 兄妹愛憎 これまでとこれからと

  先週まで九領の話をしていましたが、その流れで宿命兄妹のこれまでの歩みを振り返りつつ再燃しそうな諸問題を考察したいと思います。二人の話は結構散逸しているので、この機会に改めておさらいしてみましょう。


1.訳ありの鬼剣士

ハルアキとの出会いは『霞の鬼剣士』まで遡ります。魔物討伐隊の救援に向かった義勇軍が出会ったのは苦戦中の傭兵部隊の中で唯一無傷の鬼剣士。どうにか魔物は撃退したものの新たに現れた魔物達のボスに窮地に追い込まれた義勇軍。そこへ先ほどの鬼剣士が駆けつけ一刀霧散。これが義勇軍とハルアキの出会いとなります。

ハルアキを狙う怪しい影。

 義勇軍の一員となったハルアキは自らが置かれた立場を義勇軍と共有します。一族の掟により長子でありながら廃嫡されて妹に命を狙われていること。更に継承順位が劣る側室一派が兄妹を亡きものにすべく刺客を送り込んできたこと。この事態を打開すべくハルアキはひとつの決断を下します。

(※)フリクエ『霞の鬼剣士』宿命の剣士ハルアキ『断てぬ鎖』参照

2.霞の刃と無音の剣

 トウカとの出会いは九領から遠く離れた聖都の酒場になります。一族の掟に従い不適格な長子を討つ為だけに育てられたトウカは義勇軍に紛れ込んでいた兄ハルアキを発見しますが、当主である父の急死と遺言状により相続権を失いました。

父を謀殺した兄に怒りをぶつけるトウカ。

 兄を討つ大義名分を失い相続権も失ったトウカに残されたのは父の仇に対する復讐心と一人の剣士として兄を超えたいという思いだけ。元は戦場で敵を撹乱する目的で生まれたトウカの無音の剣と、間合いを詰めた敵の急所を複数回切り刻むハルアキの霞の刃は二つで一つの連携技。トウカの心情はともかく二人は息の合ったコンビネーションで敵を退けたことで(側室一派の動きもあるし)一旦休戦することとなります。

(※)宿命の剣士トウカ参照

3.祭の空気にあてられて

 ツル姫の誘いもあって九領の祭を訪れた義勇軍。トウカもハルアキの誘いで浴衣を着ることになりました。復讐の対象とされながらも兄バカぶりを発揮するハルアキと自身の変化を受け入れがたく祭特有の空気に飲まれたと自戒するトウカ。それでも二人の関係性は徐々に変化していきます。

初めてのお祭りながらも自制するトウカ。

(※)踏破『ツル姫と夏祭り』浴衣の剣士トウカ参照

4.宿命と向き合う

父を謀殺した代償にトウカに恨まれる道を選んだハルアキと使命を果たせぬまま帰る場所を失ったトウカ。元凶である自分が口を出すのもおこがましいとハルアキが口をつぐんだ結果、トウカは自分を見失ってしまいます。そんな折に九領で相次いだ妖怪軍団の強襲とそれに乗じた側室一派の襲撃。義勇軍の仲間達の助言を受けて二人は新たな道を歩み出すこととなります。

 トウカに家族として受け入れてもらうには帰る家が必要。ハルアキは権力欲に取り付かれた側室一派から力付くで家を奪い返すことを決断。トウカと義勇軍の加勢もあり側室一派を屋敷から追放することに成功。

トウカも自身の生きる道を自ら決めました。

  とは言ってもそれだけではトウカの気は晴れません。なんせ父や側室にはまともに相手にもされず、唯一隠れて気遣ってくれたのがハルアキだけでしたから。だからこそトウカにとってハルアキと本気でやりあうことには宿命以上の意味があります。こうしてハルアキは家督を力でもぎ取りトウカの帰る場所を確保しました。しかしまだ側室一派との戦いは終わらないのですけどね。

(※)九領外伝『魔鬼動乱』参照

4.兄妹の新たな悩み

 側室一派を追い払った後の二人は変わらず義勇軍と共に黒の軍勢との戦いを続けます。

当主就任後初の大規模遠征。

 しかし側室派の刺客は後を絶たず日増しにその攻勢は形振り構わぬものと成り果てていました。このままでは義勇軍とトウカを巻き込みかねないと考えたハルアキは単身敵の拠点に乗り込もうとします。一方のトウカは罪を共に背負う覚悟を決めたにも拘わらず独断専行で過保護なハルアキに激昂、義勇軍と共に後を追うこととなります。

側室派を支える家臣の有力者。

 側室派との戦いを終えたハルアキは兄バカぶりが加速。如何に妹との距離感を縮めるのかに腐心しますが、それが返ってトウカの神経を逆撫ですることになってしまいます。義勇軍は万策尽きたハルアキに妹断ちを薦めますが症状を悪化させるだけに……
まずは帰るべき家の整理から始めることにしたハルアキはここで己がしでかしたものの結果と向き合う決意を固めます。

一方のトウカも自身の剣の切れに揺らぎがあることに苦悩します。かつては兄ハルアキを討つことのみに特化した剣に迷いはありませんでしたが、義勇軍のおかげで兄との和解に漕ぎ着けた結果、雑念が混じってしまい自身の存在意義とも言うべき剣術に自信が持てなくなります。そこに降って湧いた故郷の山賊騒動、トウカは自身の過去と向き合うことを決意します。

 二人は迷い苦悩しながらも己自身の過去と向き合うことで葛藤を乗り越え、愛憎入り交じった新しい家族の形を構築することとなりました。

(※)イベント『北の半島討伐戦』宿命の当主ハルアキ、寄り添いし刃トウカ参照。

5.その後の二人

 迷いを裁ち切ったハルアキと迷いながら歩むトウカ。 

 ハルアキの領地は第九領と領境を接する第三領の辺境にある小領。決して肥沃とも言えない土地ながらもハルアキの土地改良と新田開墾が功を奏し領民の暮らし向きは徐々に向上しつつあります。しかも第三領主ズイハが領境の反抗的な豪族を一掃したことで隣接する領地が全てハルアキの管理下に置かれ益々の発展を遂げています。(反面第三領と第九領の仲裁役としての責任も重くなりましたけど)その後も叔父御の介入、白き異形の来襲、魔神マストの強襲、オロチの出現とハルアキは幾度も難題に立たされますが、今ではズイハも重用する家臣としての地位を磐石なものへと押し上げています。

兄ハルアキが領地運営に辣腕を振るう中トウカは自分の目指すべき道に迷っていた。自分には兄のような領地運営は出来ない、剣術でも及ばない、武者修行にも出かけたものの答えは未だ見つからない。それでもトウカは迷い悩みながらも自身が強く成長していることを実感する。

6.今後の課題

●ハルアキの場合

 ハルアキの統治は領民にも慕われ農業の生産力も向上。君主であるズイハからも領主代行を任されるくらいには重用されています。過干渉な兄バカぶりも自制するようになりましたし、隣の第九領主ツル姫とも懇意にしており一見安泰に見えます。トウカからは国を取るくらいの野心を見せたらどうかと問われ言葉を濁していますが、果たして彼の本心は本当に安寧な日常かそれとも新たな野心なのでしょうか。

●トウカの場合

ハルアキのおかげで宿命から解放され、帰る家も手に入れたトウカ。兄に対する愛憎に決着はないでしょうし、当主としても剣士としても兄に及ばない自身の存在意義に悶々としながらも日々研鑽を重ねています。もしその答えが出るとすればトウカがハルアキに勝利する日となるでしょうね。

●その他の諸問題

・ズイハは外面の良すぎるハルアキを警戒しています。実際政治力に限ればハルアキの方が上でしょうからね。何れ衝突することもあるのでしょうか。

・側室一派を率いていた頭領は既に亡く、一味も霧散してしまいましたが、側室とその息子(継承順的にトウカの異母弟)は未だ健在。年月が過ぎる程に下剋上は困難となりそうですが、叔父御が加勢すればまだ可能性は残されていそうです。

・魔神マストは故郷の復興に帰っていなければハルアキの屋敷に居候していることになります。何かやらかすことはないでしょうけど今後どう動くのでしょう。

・男臭い絡みが多い傭兵のサコンですけど、実はここの兄妹との絡みも結構多かったりします。単なる腐れ縁で浮わついた話には発展しそうもないですけど今後も絡みそうですよね。

(※)宿命開闢の当主ハルアキ、宿命切り開きし刃トウカ、覇道の第三領主ズイハ、遠い日の記憶トウカ、アマツ篇 第8章『胎動』第10章『暦読』『白銀』第11章『翻意』イベント『影の魔神マスト襲来』参照

7.まとめ

ハルアキとトウカの今後はまだまだ道半ばですね。
元々チェンクロ自体が第二部を想定していなかったので外伝以降のエピソードは全て後付けとも言えます。
ハルアキの身の振り方、トウカの悩み、側室派の動向、居候の魔神、覇道の領主と今後再燃しそうなネタには尽きません。それよりも新世界にすらまだ行っていないわけですから異変で活躍する可能性も残されています。二人の今後はどうなるのでしょうね?

今回は以上です。

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