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ボイスロイド技術交流オフ「ボイロテック」開催(随時更新)

 2019年10月6日、横浜産業貿易センターで、ボイスロイド技術交流オフ会「ボイロテック」が開催されました。歌ボ・トーク両方の調声テクニックを聞けるお得イベントでした。

 一般参加者さんは約50名、スタッフ&登壇者さんが約20名。

【内容】

第1部 ボイロ技術発表会(12~15.5時)

ボイロの調声に関する15分くらいの短い発表・講座が12件くらいあります。
1.スズモフさん:主催挨拶
2.にじみこんいろさん:VOICEROID精神論
3.とうふさん:短時間で上質を目指す調声講座
4.モヤイさん:感情重点調声のコツ
5.揚げたわしさん:キャラを生かすセリフ作り
6.mesさん:アプリ紹介
7.キモチカラさん:音声学×調声
8.がりゔぁーさん:ボイパロイド
9.かりんとさん:CeVIOでVSQX作成
10.ゆきかざりさん:SynthesizerV
11.kashiyaさん:歌ボ基礎
12.アウクシさん:人間らしく歌わせるテクニック集

多い……

第2部 ボイロ意見交流会(16~18時)

ボイロ調声に関する話題でひたすらグループトークする時間。
5~6人×8卓でトーク+席替え1回のマジバトル(平和)です。

【詳細】

 ここからは第1部の内容を随時更新していきます。本人が喋った内容そのままではなく、くろ州独自視点でお送りします。情報の抜けもあるので、正しい内容は各発表者さんがこの後配布(してくれるかもしれない)スライドとかを参照してくださいませ。

1.スズモフさん(@suzu_dov)

 今回のボイロテック主催者さんです。まずは、イベント概要やスタッフ紹介など簡単に挨拶。
 そして簡単に喋るボイスロイドの説明。喋るボイスロイドて。「VOICEROIDはそもそも喋るのが基本では?」ということですが、歌うボイスロイドがありますからね。今回のイベントは、歌ボの人もトークの技術を、トークの人も歌ボの技術をという風に技術交換するという狙いもあるそうです。
 さらに、歌うボイスロイドの説明。これはスズモフさんの専門ですからね。最近は「実況でも歌うボイスロイド」なんて動画もあるようで、喋りが基本の実況動画でも使うことが増えてたりするらしい。喋りもトークもできるというのは強いぞ。

・KotonoAssistの説明
 スズモフさんが開発したボイロ調声支援アプリ。ショートカットを追加しまくって、操作を速くしたり、ピアノロールを使った歌ボ支援なども。最近スペクトラム解析機能を追加し、音声を分析する沼の住民向けアプリとして進化を続けている。

・KotonoSyncの説明
 スズモフさんが開発した歌ボ支援アプリ。VSQXを読み込んでボイスロイドを自動で歌わせられる。最近VocalShifterと連携して調声効率を爆上げする機能を追加した。

2.にじみこんいろさん(@suidasisan):VOICEROID精神論

 にじみこんいろさんは基本的に歌ボの民ですが、喋るボイスロイドも好きな人。今日の演目は「VOICEROID精神論」
 「お前は人間なのに、そのでかい感情をボイロちゃんたちに伝えられていない」というアツいお言葉で始まったこの講座。内容としては、いかに感情を表現するかというお話。ただし、感情パラメーターの話はしない。技術の話ではなく、精神論の話でした。
 VOICEROIDは基本的に「読み上げソフト」。でも、実際は実況や劇場などの動画で必要なのは、ただの読み上げではなく感情のある「お喋り」だという。今回は、いきいきしたお喋りを作るための心の準備について説きました。

・もっとキャラの気持ちを考える
 「ボイロキャラがどんな気持ちでしゃべっているか」「この子ならこう喋ってくれるに違いない」そういうことを考えて、調声テクニックを使っていこう。そのためのテクニックは以下の通り。

・キャラの得意を知ってあげよう
 個性のあるボイロキャラ。それぞれしゃべり方が違う。それを知ろう。
・自分の「ここすき」を明確にしよう
 人に説明できるくらい掘り下げよう。要は性癖よね。
・自分の声とボイロの声を比較しよう
 生の声のサンプルとして。

 「キャラ愛は手間を楽しみに変えてくれる」――にじみこんいろさんは、ボイロを愛でることは健康にもつながると、その有用性を説明した。

3.とうふさん(@tohfu102):短時間で上質を目指す調声講座

 とうふさんは短時間で調整する方法論を説明しました。そもそも、とうふさんは調声メインで小説や動画を作ったり、声月の広報をやったりしている人。AHSのウィーン講演や石黒さんの動画でトーク調声をやったこともあるすごい人。
 「輝けゆかりんスターフェスティバル」のドラマパートの調声を行った際に、10分で調声をしないといけないことがあり、高速調声スキルを身に着けたらしい。

 この調声は、シナリオ担当さんが自分で吹き込んだ音声をまねするように行ったという。これによって、調声師による調声のブレが減らせたほか、MMDモーション作成も、シナリオさん音声をもとに平行制作できたなどいいことも。
 逆に、元の音声にできるだけ合わせないといけないため、タイミング合わせがエグイという問題があったらしい。ほかにも音量やセリフ量など様々問題があったらしい。

問題
 ボイロの調声に割けた時間は1時間。30日間で480フレーズを調整しないといけない。1日3時間作業するとしたら、1フレーズに掛けられる時間は?
A. 11分ちょい。

 10分調声ですね。なんだかんだで10分作業すればいいカンジにはなるし、それ以降の調声は、派手にクオリティーが変わるわけでもないので、10分でちょうどいいらしい。
 実際の作業でやるのは音声に緩急をつけることだけ。ベタ打ちして、アクセント句をいいカンジに切って、速さをつけて、高さをつけて、抑揚+無声化などをつけてで10分。細かいところ抜いて文字にすると普通になってしまうな……。
 最初に完成形をイメージして、話速と高さの緩急に注力。ほかはこだわりすぎないようにしてやれば速いらしい。重要なのは最初に完成形をイメージする部分。納期がある場面では重要なテクニックですね。

4.モヤイさん(@moyai_statue):感情重点調声のコツ

 モヤイさんは、「ボイ酒ロイド」やホビー動画、オリジナル曲などを作っている人。今回やるのは「アウトロー調声」。時間をかけて調声するスタイルでした。
 ボイロ調声にはさまざま目的があると思いますが、モヤイさんはボイスロイドを役者ととらえて人間臭く演技指導=生きてるボイロをかわいがりたい人だそうです。

・文法にとらわれないこと
 文法的に正しい区切りやイントネーションを適用するだけでもボイロはだいぶ上手に歌ってくれる。でも実際には文法通りに発音するだけではない。「例えば」というだけでも、「たっとえばぁ」とねちっこく言うこともある。この音の高さや長さの違いを意識して、イントネーションを分割したり抑揚をつけていこう。
・耳と喉を信じる
 「例えば」と半(笑)で言うとしましょう。このとき「t h a t o e b a h」みたいな発音になったりする。これを再現するために「たは(無声化)とえばー」という風に文字外の文字を入れたりいろいろできる。

・人のしゃべりを研究する

 これらを感じて、テクニックを生み出すのは難しいですよね。今回はそのコツも教えたもらいました。それが以下。

・ゆっくり喋ってみる
 ゆっくりしゃべって音程や発音を確認しよう。
・VocalShifterでピッチを見ちゃう
 みちゃえばわかる。

 そのうえで、ドラマやアニメを見ながら研究すると演技の勉強ができる。アクセント事典を読むのも良いぞ。

5.揚げたわしさん(@Agetawashi):キャラを生かすセリフ作り

 揚げたわしさんはゲーム実況動画を作ったりイラストを作っている人です。今回は独断と偏見で語る闇の調声語りをしました。タイトル詐欺……。
 調声のコンセプトは、「違和感を徹底的につぶす」「不自然さを感じさせない」だそうです。普段はまず、セリフづくり→演技プラン→実作業→通し確認→加工という風に作品を作るそうですが、揚げたわしさんは実作業の部分以外も含めて「調声」と考えているらしい。

・セリフづくり
 場面を想像して、セリフで説明しすぎないのが重要。「目玉焼きにはソースやろ!」と来たら、「ハイソース」で良い。わざわざ「ソースとって?」というセリフを挟むとテンポが悪くなってしまう。
・感情の表現方法
 同じ「悲しい」でも人によって千差万別。同じセリフを歌わせるだけでもやり方はさまざまあって、絶対に正しいやり方が1個あるというわけではない。工夫次第でいくらでも演技させられる。
・感覚でやる調声実践
 重要なのは耳。耳で聞いて違和感をつぶしていきます。めっちゃ感覚的。キャラの声を把握して、演技の方向性をもとにどういう風にしゃべらせるかあたりをつける。例えば、幼いカンジにしたい→舌ったらずに→じゃあどうする?と考えていくことができる。
 その後いい音が出るまで調声を繰り返す。という風に作業を進めます。

6.mesさん(@mes_deleted_n):アプリ紹介

 Mesさんはボイロ関連の調声支援サービス、アプリを作っている人です。今回は「Voicization」「Voistoire」

・Voicization(ボイシゼーション)
 ボイロは結構調声にかける作業が多いという課題感があって、それを解消するためのアプリを作ったらしい。
 ボイロ調声でよくやる操作を短縮できる機能を搭載しています。アクセント句をワンクリックでくっつけたり離したり、調音をドラッグで追加したり消したりできる。速い。
 フレーズの履歴機能なんかもあって、実際に使って困ったところから作られてる感じがする。

・Voistoire(ボイストーリエ)
 ボイスロイド設定のバックアップを自動でとってくれるアプリ。設定を変更するたびに、それまでの設定を自動保存してくれる。ガイノイドTalkでも使える。

7.キモチカラさん(@intention_power):音声学×調声

 キモチカラさんは音声学に基づいて母音をごにょごにょするお話をしてくれました。私好みの話だ……。
 ボイロの発音は、文字を変え記号を変えいろいろしながらいいカンジのところを探っていきます。これを「調声ガチャ」と呼んだりしますね。「おねぇちゃん」を「あねぇちゃん」と読ませてみたり、「な」を「ぬぁ」にしてみたり、無声化してみたり……テクニックはさまざま。今回は、音声学の知識をもとに理論的にやってみようという話です。

・音声学とは?
 発音に関する学問「調音音声学」、波形について学ぶ「音響音声学」、聞き心地について学ぶ「聴覚音声学」などありますが、今回は調音音声学の話をするようです。
 人間は舌の位置や唇の形によって母音を発音し分けています。詳しいことはこちらで。

 しかし、発音には個人差があります。「お」が若干「あ」寄りになったり、「う」が「え」寄りになったり。これをボイロで再現しようとすると、「お→あ」「う→え」に変換してみるといいカンジになるそうです。「おとな→おたな」「まんじゅう→まんじぇう」などなど。

・外国語をしゃべらせたい

 英語には「æ」とか「ɘ」とか、日本語にない音がある。これをどうやってボイロで再現するか。
 「ɘ」は「え」に近い音。なので、とりあえず「え」に変換してやる。要するに、母音空間上に母音をプロットしてやって、近い母音に変換するという話ですね。ほかの母音もこうやって何となく作っていけるという。

 個人的には、発音をX-SAMPAで書いてるので、IPA記号見るの久しぶり過ぎて若干楽しかった。
 ボイロ関係ないですが、母音を楽しく勉強するのにいいサイトとして「ピンクトロンボーン」というのがあるので、遊んでみてください。(くろ州)

8.がりゔぁーさん(@gariver2018):ボイパロイド

 がりゔぁーさんは、ボイスロイドでドラムやベースも含めて曲を奏でてしまう「ボイパロイド」動画を作っている人です。ボイパロイドの沼へいざなう使者。

・ボイパロイドとは
 歌うボイスロイドの亜種。ボイロの声で楽器の音を声帯模写して曲を作っちゃう。現在124件/3283件(歌ボ)くらいあるらしい。これができると、歌ボや実況動画でもスキャットができるようになるらしい。オケ用意しなくてもいいので楽(個人差)だし、選曲が自由。

・ドラム(あかりが得意)
 ExVoiceやボイロで作った音声を、DAW上でサンプラーにセットしちゃいます。これだけで、基本のドラムセットが作れてしまう。音声直貼りで頑張ってもOK。
・ベース(喜び茜やゆかりさんが得意)
 音域が低すぎるので基本歌えないので一番難しい。
・ウワモノ(ずん子やきりたんが得意)
 高音域をずん子、中音域をきりたんにするのがいいらしい。コードを担当するパートはリバーブを掛けたり音量を下げて若干目立たないようにするのがいい。
・メロ(愛情次第で誰でもOK)
 自分で歌ってみて歌えるかどうかを確認するのが重要。琴葉姉妹は、初心者にも違いが分かるように、感情値を変えたり音域を変えたりして差を作るのが好きだそうです(好みの話)。

9.かりんとさん(@uikimser):CeVIOでVSQX作成

 かりんとさんはCeVIOカバーメインの人。最近は歌ボMIXもやってたりするらしい。今回はCeVIOソングを使って歌ボ用のVSQXファイルを作る方法を紹介しました。

・CeVIOとは?
 株式会社テクノスピーチによる学習系歌声合成ソフト。ベタ打ちでもそこそこ自然に歌ってくれるので初心者向きだし、打ち込みが見やすくて楽。
・変換の流れ
 CeVIOからCCSを吐き出す→UtaFormatixでVSQXに変換

 本来はこれでいいんですが、なんかトラブルがあったらしく、シーケンス変換アプリ「UtaFormatix」がうまく動かなかったため、今日は汎用歌声合成シーケンサーCadenciiを使ってVSQXを作りました。

http://akatsuki.sdercolin.com/utaformatix/

 できたVSQXをスズモフさんの歌ボ支援アプリKotonoSyncに投げれば比較的簡単に歌ボができる。
 VOCALOIDは最低でも1.4万くらいかかります。CeVIOは最低5500円からなので、使いやすいエディターという意味では結構お安く手に入る部類。

10.ゆきかざりさん(@hanayuki7793):SynthesizerV

 ゆきかざりさんは、歌声合成ソフトをいろいろ使っているユーザーさん。今回はSynthesizerVの紹介をしました。ちなみに私はV=ヴイ派。

https://synthesizerv.com/jp/

 そもそも歌ボは、KotonoSyncを使えば結構簡単にできてしまいます。私も正直歌ボが難しいと思ったことはない。そのKotonoSyncに読み込ませるためのVSQXをどうやって作ろうかという話。VOCALOIDで作るのがストレートですが、高い。CeVIOも安いとはいえ有料。無料ソフトならUTAUでもいいけど、SynthVもいいよーという紹介です。
 SynthVのいいところは、たいていの歌声合成ソフトのシーケンスが読み込めるところや、再生ボタンを押せば即歌ってくれるところ。打ち込みをするときに即座に確認できるので作業スピードが速くできる。好きなソフトで打ち込んだ後に、MIDIやUSTに変換するのに使ってもいいです。その後VSQXに変換すればKotonoSyncに投げられる。
 ただ、SynthVが吐き出すUSTは文字コードの問題で文字化けしてしまうのがダメポイント。UST書き出し→「文字コード直し」→VSQX変換と作業が増えてしまうのが問題。まぁ本来の使い方ではないし。ひらがな歌詞入力が苦手というのもちょっと問題。ローマ字で入力するのが良い。

・追加情報
 UST→歌ボ用VSQX変換ができるアプリ「ConvMaki」がそろそろUTF8のUSTに対応するらしいです。これで、SynthVから出したUSTをそのままVSQXに変換できるかも。

※↑最新版のリンクではありません。

11.kashiya(@kugatsu88bxj)さん:歌ボ基礎

 kashiyaさんは歌ボオリジナル曲を投稿している人です。今回は歌ボの作り方の基本を教えてくれました。
 歌ボオリジナルは、まず歌わせたい曲を作り、KotonoSyncでボイロを自動調声。その後、「KotonoTone」で音を整えて、VocalShifterで調声するという流れで作ります。

・KotonoToneとは?
 ボイロでロングトーンを歌わせると、音がループしてしまってノイズになります。「あーーーーーーーーーー」と歌ってほしいのに「あーーぁぁぁぁぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」と聞こえる。音量がぶれてしまって滑らかでなく不安定になってしまうので、消していかないといけない。これができるのがスズモフさん作の「KotonoTone」です。謎技術でこれを消してくれます。神。
・VocalShifterでやること
 基本的にビブラートをかけるだけでもOKとのこと。歌声合成の音はピッチが整い過ぎているので、ビブラートをつけて揺らぎを付加する。どこでビブラートをかければいいのか。自分で歌って自然にビブラートつけちゃうところ。です。頑張って。
 ビブラートは手書きで描いてもいいですが、「ビブラート付加」という機能があるので、それで簡単につけてしまうのでもOK。

※参考情報

12.アウクシさん(@Auxilyrica):人間らしく歌わせるテクニック集

 アウクシさんはCeVIOやボイロを使いつつ、アプリ開発をしている人です。今回は歌ボを作るためのツール(自作)を紹介しました。
 「人間らしく歌わせるためには、とことん人間をまねればいい」――かっこいい。テクニック集は以下の通り。一部聞き取れていない。

・スペクトル解析
 VocalShifterは音が鳴ってない部分のピッチを基本いじれないようになっている。ピッチがない部分を選択して、右クリックすると「ピッチを編集できるようにする」が出てくる。これを適用してやると、音のなっている部分の端らへんも編集しやすくなる。
・ビブラートは手描き
 人間らしさが出る。
・一人は安定、一人は不安定に歌わせるといいカンジに聞きやすくなる
・KotonoToneを使わない方法
 違和感のある個所をVocalShifterのタイミング機能でつぶしてしまう。そして、ピッチやダイナミクスを整える。
・周期性をぶらす
 周期的な音は機械的で耳に残りやすいのでつぶす。
・フォルマントをぶらす
 人間的な揺らぎ。
・ブレスは誰のでもいい
 別人でも案外バレないからとにかくブレスを入れる。
・人間のピッチを解析してまねする
 原曲(など)の人の声を手描きコピーする。


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