演芸界の今に思う事

2024年1月の同日に演芸界に関する二つの報道がありました。
その二つの出来事を通して考えた事を書いてみました。

一つ目は、寄席の至宝とも言われた林家正楽師匠の急死報道です。
お亡くなりになる二日前まで寄席に出ておられただけに、突然の訃報に驚き喪失感に襲われました。
この訃報は、改めて当たり前の事を思い出させてくれました。
芸人が亡くなるとその芸は霧散してしまう。
もちろん正楽師匠の紙切り作品は残りますが、高座の上で見せて頂いたあのライブこそが芸でした。
これまでも贔屓の芸人さんがお亡くなりになり、その度に悲しい思いをしてきました。
それでも寄席通い演芸会通いをやめないのは何故かを考えました。
芸人が亡くなるのは必至なので、数多の芸を継ぐものがいてその伝統芸が変化していく様や新しい芸の誕生を見ていきたいのです。
一人の名人が亡くなったことで演芸界そのものが衰退していく事だけはあって欲しくない。
それが多くの演芸ファンの想いではないでしょうか。

二つ目は、吉原馬雀氏が原告の裁判において判決が出た事です。裁判及び判決内容については、ご存知の方も多いと思いますので割愛させて頂きます。
判決内容について多くの意見がある事は、その後SNSでの騒ぎに見られる通りです。
私は演芸界がこの判決にどう向き合うのかが、一番大切だと思います。
具体的に言うと馬雀氏と現師匠である吉原朝馬師匠が繰り返し話しておられる落語協会の対応です。
一般社団法人落語協会はその目的を「古典落語を中心とする寄席芸能の普及向上を図り、もって我が国文化の発展に寄与すること」とし、事業内容の3「寄席芸能に関する後進の育成」も明示しています。
定款を定め会員から会費を徴収しコロナ禍においては文部科学省から補助金を受けている(3,500万強)一般社団法人として、そもそもの目的に照らし合わせこの問題に正面から向き合うことが必須だと思います。
単なる師弟間における問題として対処する事は、問題の矮小化に他なりません。
創立100年周年を迎える今年に、次の100年へ向けどうありたいか何をすべきかを正面から考える事こそ落語協会に求められていると思います。

落語ファン、演芸ファンは演芸界の存続こそが一番の願いです。
奇しくも同じ日に報道された二つの出来事に接して考えた事です。

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