見出し画像

みかんの旧作ザオリク図書館「おれがあいつであいつがおれで」

 2010年代に入って以降、なんとなくですが、性転換とか精神入れかわり系のエンタメが注目され始めたような気がします。最近はみんな王道物語より、変わり種を求めているってことでしょうか? まあこの手のジャンルはいつの時代も、一定数の需要はあるのものですが。
 そういえば、世のヒロイン像も、やたら男前なボーイッシュ系女性が増えた気が・・・・・・これも一種の性別逆転かも。考えすぎかな?(男の娘ブームなんてのもあったが、それはもう下火か)
 さて、男女入れ替わりのお話といえば、忘れちゃいけない名作があります。一度はみんな、聞いたことがあるであろう名作ジュブナイル(直接読んだかどうかはともかく)

 それがこの「おれがあいつであいつかおれで」(1980年発売)です!
 このエキセントリック児童文学、今まで実写映画化2回、TVドラマ化5回(特番含む)という快作なんでありますが、私は小学校時代に図書室で見かけて、その時はちょろっと流し読みしただけ。ちゃんと読んだのは、社会人になってだいぶ経ってからです。
 なんか元々は、小6向け児童誌の雑誌連載だったようですね。79年から翌年までの一年間続きました。ちょうどその年の6年生が、在学中に読み終わる構成だったのです。
 ちなみに、たぶん内容同じで、テキスト主体の角川文庫版と挿絵有りの角川つばさ版があるんですけど、私は絵柄が可愛くてお得と判断して、つばさ版を選択しました。

 男女入れ替わりの王道作品(ジャンルは現代ファンタジーかな?)として、説明不要なくらい超有名なのですが、一応ざっと説明しますね。
 悪ガキ系の小学6年生・斎藤一夫が、ある日転校してきた幼稚園時代の幼馴染、斎藤一美(名前が似ているが、親戚というわけではない)と再会。
 明るく元気な一美は大いに喜ぶが、この子はお喋りが過ぎて、幼少時のおねしょ事件をバラされたりで、一夫はかなり不機嫌。

 ところがその日の帰り道、二人は地元の地蔵堂の前で、激しく衝突したことにより、突然互いの精神が入れ替わってしまった!
 そのせいで一夫は女っぽく軟弱に、一美は俺様系ボーイッシュに性格が大逆転。二人は入れ替わりによる混乱で、両者の家族とトラブルを起こしながらも、なんとか互いに成りすまして生活していく・・・・・・。

 まあこのへんで、精神転移によるエッチな描写とか、今の読者は期待するんですけどそこは児童文学。当然ですが、いやらしい描写は基本ありません(トイレ時の感想を、一美が少し一夫に愚痴ったくらいですかね)小6設定だし、生々しい性欲とかは無縁。初めて女体の違いを確認するシーンも、ギャグ寄りです。
 あとこの小説、主人公の一夫目線であり、一人称で進むんですが、やたらオスガキ・メスガキって呼び方を連呼するんで、そのへん80年代前半の文化を感じました。今メスガキとか言ったら、エロの分野になってしまうw



(ここからネタバレ!) 

 さて、一夫&一美は入れ替わり生活が始まって、様々な事態に遭遇する羽目になります。
 近所の公園で一夫(体は一美)がロリコン大学生に狙われて、金的三連撃で撃退したり、一美の元ボーイフレンドや親友を招いて、成りすましバースデーする羽目になったり、(親友は唯一秘密を知ってて、いいキャラなんだよなあ)クラスの悪ガキに一美(体は一夫)がパンツ下ろしでいじめられたと知り、怒った一夫が同じ仕返しをしたりとトラブル三昧。
 ストーリー後半では、二人は一美の母から悪影響を懸念され、強引に引き離されてしまいます。一夫の母もそれに同意して、もはや孤立無援。
 更には、一夫の父が近々転勤する事にになってしまい、このままではお互い離れ離れという、絶望的な状況に。

 とはいえ、最終的には再び地蔵堂前でぶつかって、元に戻れるハッピーエンドなのですが。まあこれはお約束。
 元の肉体に戻ってすぐにエンディングなんで、そこが少し意外だったかな。エピローグとかは特に無し。
 でもそうすると、一夫の家庭はこの後に結局転勤しちゃったのか? 辞令取りやめになったとは書いてないし。
 けど、戻った直後の告白シーンもちゃんとあったし、とりまハッピーエンドでいいのでしょう。

 児童向けらしく、さっぱりシンプルな終わり方もまた良し。メチャクチャ明るいコメディ風味で終わるし。
 もし入れ替わりネタ好きで未読の方がいたら、その界隈にはレジェンドな作品なので、一回読んでおくことをオススメします。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?