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『鬼滅の刃』を教育視点で超分析!鱗滝さんの「優しすぎる竈門炭治郎」の育て方③(修行編)

こんにちは、まあくうです。
一昨日は久しぶりに日光が出て、汗だくになりました。久しぶりに夏って感じですね(と思ったら今日もまた雨。。。。)
ここ数日間Amazonプライムで『ハイキュー』というアニメを観ています。「排球=バレーボール」の漫画で、僕は「ボールとは友達になれない」と子どもの時に悟ったので、陸上部だったんですが、バレーボールなんて全く興味なかったんです。

が!

「ハイキュー」やばい笑

これも記事にしようかと少し考えています。ただ主人公が二人とも天才すぎるので、教育的観点からいうと自分をどのように伸ばすかという話になるかもしれませんが。


まあ、それは置いておいて、今回は『鬼滅の刃』超分析の最後の回になります!

初回では鱗滝さんの観察力を中心に、生徒の欠点を弱点にしないテクニックについて、二回目の前回では入門試験を見ながら、今度は長所が武器になるかを知るための試験について分析してきました。

それで今回はですが、入門した後ですね。鬼殺の剣士を目指す門下生となった炭治郎が、師匠である鱗滝左近寺が行った実際の修行内容を中心に、生徒を伸ばすテクニックを見ていこうと思います。

先に言っておきますが、前回前々回の記事に比べると、ちょっと地味な内容です。というのも、ここまでで鱗滝さんの哲学、スタンスといったものの大部分はお話しし終えました。そして今回は細かい内容になります。面白さでいうとちょっとアレですが、ただ実用性という点ではむしろ今回の方が役に立つのではないかなーという感じですね。

内容見ていくと、実際に僕が学習塾で行っていた指導方法とかぶる部分も多かったです。なので「鱗滝流指導法」をリアルで役立ててみることに興味がある方はぜひ読んで実践してみてください。相手が子どもだったら「これから君に行うのは『鬼滅の刃』の炭治郎の師匠が行っている修行方法だ。準備はいいか? 判断が遅いぞ!」なんて言いながらやると楽しいですね。

【鱗滝さんが行った鬼殺の剣士修行一覧】 

最初に、炭治郎が行った修行の全メニューをざっと確認します。
メニューは基礎から始まり、少しずつ段階的に難しく専門的になっていきます。
具体的には六段階です。

練習1 山下り
    基礎体力
    長所を伸ばす
練習2 刀を持たせる
    基礎の剣術を教える   
練習3 素手の師匠と模擬戦
    基礎の体術を教える
練習4 全集中の呼吸
    「鬼殺の剣士」に必須の専門スキルの基礎
練習5 動きの型を教える
    剣技の型の基礎練習
練習6 水と一体になれ
    「水の型」と呼ばれる鬼を倒す剣技


これらのメニューに共通して言えるのは「基礎を徹底的に鍛える」ということです。一年間、これをみっちりとやります。

そして、突然こう言われるのです。

『もう教えることはない』

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p121より引用


鱗滝さんの修行は「鬼殺の剣士になるのに必要な基礎体力・基礎技術」を身につけるものでした。サッカーで言えば、ドリブルやパス回し、フォーメーションを練習した。あとは、それを実戦で生かせるよう完全に自分のものにする日々の鍛錬だけです。
その後、さらに半年間、炭治郎は最後の課題である「岩を斬る」ための自主練をし、見事学んだことを自分のものに「昇華」させます。

「優しく頭の鋭いだけの平凡な一人の少年」から、
「プロの鬼殺の剣士」が誕生した瞬間です。

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p149より引用

まあ炭治郎が「めちゃくちゃ優秀な生徒」というのもありますが、鱗滝さんもそんな優秀な炭治郎をプロに育てられる超一流のトレーナーです。

じゃあ、ここから鱗滝さんが修行の中で見せた育成テクを3つのポイントに絞って紹介します。ポイントは「限界まで追い込む」「失敗を教える」「教えられることを教える」になります。順番に見ていきましょう!


【鱗滝さん流育て方の極意 その陸】 限界まで追い込む 


まず一つ目は「毎回、生徒の限界まで追い込む」です。
生徒側だったら、あまり嬉しくないテクニックですね笑
修行の最初は入門試験でも実施した山下りです。
空気が薄く体力を消耗しやすい中、罠に張り巡らされた山を、長所の鼻を生かしてダッシュで下っていく修行です(拷問だろ)

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p 116より引用

難易度は徐々に上がっていきます。
炭治郎は「俺を殺す気満々だ」と言っていますが、まあ実際に殺すわけがないので、これぐらいクリアできるだろうというギリギリのレベルの罠を仕掛けているんだと思います。
常に生徒の限界まで追い込む。生徒はひいひいとなりますよ。現代っ子なら「もう嫌だ! 逃げ出したい」ってね。なるかもしれません。

まあその通りなんですが、ただ脱走する前にちょっと育てる立場でこの修行内容を想像して欲しいですね笑
この修行を考えて実行する、その師匠の姿を。
というのもですね、これって教える側も相当苦労の多い方法なんですよ。
僕も塾講師時代、生徒のレベルに応じて内容を毎回変えていたので、分かります。
塾の授業って準備が全てといわれています。確かに、感覚的にも経験的にも、生徒が塾に来るまでが勝負、なところはあります。
生徒の課題を考え、やる内容を決め、生徒にあったレベルの問題を考え…少なくとも授業よりも多くの時間を割いて授業を作っています。本当にこれでいいのかと悩みながら、これで絶対大丈夫という確信もないまま、それでも切り替えて教師に入り、考えたプランを実行する。
そこまで考えたとしてもまあ生徒は「そんなの関係ねえ」ですから、つまらなければ寝てしまうし、疲れてやる気がないなんてザラ。「ちゃんとやれ!」という言葉を言ったら負け、「アッ、今のプランはダメだ」とすぐに判断し、用紙したプリントを引っ込めて途中で違うプランに切り替える。最悪、前回のテストをやらせて、その間に新しい授業内容の準備をすることもあります。

鱗滝さんも炭治郎のレベルに合わせた罠を、日々改善しながら作っています。もちろん、それらのいくつかの罠は使われずにスルーされてしまうこともある、いやむしろそっちの方が多いでしょう。
そんなコスパの悪い、正解の分からない作業を日々考え続け、悩み続けながら何年も繰り返すには、よほどの信念かその労力に見合うだけの報酬が必要です。まあ鱗滝さんは報酬をもらっている様子はないので信念でやっているようです。
きっと炭治郎が寝ている時間、真夜中の山中で罠を仕掛けているのでしょう。そんな光景を想像すると、鱗滝さんのプロ意識の高さが窺えるのではないでしょうか?

まあ、妄想なんですけどね笑 でも少なくともそういう風に描かれているように思えます。


【鱗滝さん流育て方の極意 その漆 】 成功を教えない、失敗を教える


二つ目は成功を教えない。「失敗を教える」ということです。
勉強だとコスパが悪すぎるので、限定的にしか使わない方法です。

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p 119より引用

上記のように、鱗滝さんが炭治郎に対して使う言葉は否定系の言葉が多いです。「違う」「腹に力が入っていない」などですね。
指導を考える際に「正解を先に教える方法」と「間違いを直し続けて結果的に正解に導く方法」がありますが鱗滝さんは断然後者です。
みなさんは教える際にどっちを選びますか?
それぞれ、メリット、デメリットがあります。


【正解を教えるメリット】
・コスパがいい
・「わかった感」を与えることができる
・教える側の真似をさせることになるため、その差異を誤りとして指摘できる。つまり指示しやすい
・特に時間内にカリキュラムを組む場合はこっちがいい

【正解を教えるデメリット】
・応用力がなくなる(正解のやり方以外しなくなる)
・分かった感がない努力に耐えられなくなる
・すぐに答えを知りたくなってしまう

正解を教えるメリット、デメリットはこんなところです。
じゃあ逆に、間違いを指摘し続けることで正解にたどり着かせる手法のデメリットとメリットはなんでしょうか。こちらは上記の逆と考えればわかりやすいですね。

【誤りを教え続けるデメリット】
・コスパが悪い
・長く失敗を続けるので生徒が自信を失う
・何が違うかを説明するのが難しい
・時間制限を設けづらいのでだらだらと長引いてしまいがち

【誤りを教えるメリット】
・応用力が身に付く(違うと言われなかったもの以外が全て選択肢)
・簡単には諦めない粘り強さが身に付く

こうして並べてみると、鱗滝さんの指導方法はやはり「誤りを教え続ける方法」だと分かります。炭治郎は粘り強く、諦めない性格です。そして、モチベーションがめちゃくちゃ高いので、どんな壁にも諦めずにぶつかれる。塾には来ないタイプの生徒(笑)には向きませんが、炭治郎のような子どもにはうってつけの方法と言えます。やる気がめちゃくちゃあるのに競争力が高い仕事を目指す生徒、例えばアイドル志望などですね、彼女たちを育てるボイストレーナーとかダンスコーチは鱗滝さんと同じやり方になります。例えば鱗滝さんがアイドルを育てたら、おそらくすごくいいグループができると思いますね。

【鱗滝さん流育て方の極意 その捌】教えられること、教えられないことを知っている


最後は説明が難しいのですが、先にみましょうか。こちら修行完了を告げる鱗滝さんの一言です。

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p 121より引用

このセリフを言う機会って現実にはそんなにないかもしれませんが、僕は受験直前の生徒に使ったことがあります。できることは全てやった時だけに使えるセリフです。これから本番に立ち向かう生徒のことを思い浮かべ、これまでの指導を振り返った時に自分の出せるベストを尽くしたとそう言い切れる。それだけの努力をしてきたからこそ使えるセリフです。

鱗滝さんは自分にできることとできないことを知っている、というよりも線引きをしています。僕も講師時代は「合格点を取らせること」を意識してやっていました。そのために生徒一人ひとりに合わせて授業内容を変え、レベルを変え、教師を変え、言葉かけを変え、褒めては叱り、とやってました。

ただ本人が本番までに「これぐらいまでなら伸ばせる」という予測はしていて、そこまでは自分ができることだと考えていました。偏差値でいうと65までは理屈上伸ばせる、大学受験なら偏差値60ぐらいのテスト75%(合格ラインは60%)までは持っていけるけれど、それ以上は無理、みたいな。

自分ができることとできないことを知っているから「これでこの内容は教え尽くした。あとは自分でこういう風に練習して」と言える。「もうここは練習しなくていいから、それよりもこっちをやったほうがいい」と言える。できることとできないこと、やることとやらないことを決める、というより決まっていることで指示も早く的確になり、迷いがなくなる

ちなみにこのあと、鱗滝さんは炭治郎に全く何も教えなくなります。炭治郎は修行をしながら、とりあえず教えられた練習を繰り返しながら、どうすれば強くなれるのか悩みまくりますが、鱗滝さんから手を差し伸べることはありません。この感覚は僕にもあります。すごくあって、特に受験生ですね。教えていくうちに自立していって、自分で勉強して分からないところは自分で調べて解決して、というのができるようになった生徒は僕は基本放置しますね。「今日は何するの?」「今日は何したの?」以外はたわいもない話しかしなくなる。勝手に伸びるようになった生徒にはモチベーション管理と「常に見ているよ感」を出すことが一番、結果が出るやり方だと知っているからです。



【まとめ】鱗滝左近寺という人間


修行開始から一年後「もう教えることはない」と言われた炭治郎はさらに半年間自分で修行を行い、最後の課題である「岩を斬る」を成功させます。

岩を斬った瞬間が「長所が武器になった」瞬間でした。

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p 152より引用

「斬るのではなく、糸に引かれる」という感覚自体、反復して体が覚えているからゆえそう感じるのでしょう。努力が実った証と言えます。

それにより、鬼滅の剣士になるための最終選別試験の受験を許可されます。
ただ岩を斬ったことは師匠・鱗滝左近寺にとって予想外でした。
なぜなら、鱗滝さんは最終選別を受けさせる気がなかったのです。
最終選別は実際に命のやり取りが行われる。そして鱗滝さんの弟子はその最終選別で命をなくしています。

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(吾峠呼世晴『鬼滅の刃1(ジャンプコミックスデジタル)』p 153より引用

最後に出した「岩を斬る」課題を出したのは「プロの育成者・鱗滝左近寺」ではなく一人の人間としての「鱗滝さん」だったんですね。

優しすぎること。それは、育手という立場で見れば欠点なのかもしれません。日々観察をして炭治郎の実力を正しく理解しているからこそ、戦場に出したくない。それは「失敗したらかわいそうだ」とステージに出さないコーチような感覚です。悪く言えば「他人を信じられない」。

これは僕もそうなのでよく分かります。塾で教えていた頃、生徒をよく見れば見る程「これぐらいは伸びるかな」と予測してしまうし、できてしまう。そしてその予測は80〜90%ほどその通りの結果になります。
でも、全員がそうではない。

炭治郎のように教える側の予想を遥かに超えて成長する生徒がいます。炭治郎はたった半年間で教えられたことを体に染み込ませ、長所を武器にまで昇華させた。過去のどの教え子よりも強く成長した。それは当然「過去の経験」からでは予測できない。

そういう出会いがあるからこそ、育てる立場はやめられないんですね。とああ、最後は僕の話になってしまいましたが、これで今回の『鬼滅の刃』編はラストになりますが、いかがでしたでしょうか? 育手・鱗滝左近寺のすごさ、伝わりましたかね。育てる立場にいた僕が見ても納得する描写が多く、とても考えさせられる指導方法だったので、知っておくだけでもみなさんの役に立つのではないかと思います。

次回は…どうしましょうかね。もしリクエストあればください。ないならないで何か考えます。まだ未定です。来週には一本目を出す、かな?

ということで、まだ読んでいない方はめちゃくちゃネタバラシになりましたが、むしろバレた状態で読むのも面白いのでぜひぜひ一読してみてくださいませ!
それではありがとうございました!!


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