思い切って、影に話かけてみた。

今日は思い切って、
私の影に話かけてみた。

前から、ずっと私についてくるので、気になっていたのだ。


「あの!影さん!初めまして!」
 と話しかけると、

私の影は、驚いたようにながーく伸び上がり、キュッと小さくなって、
また元の大きさに戻って、 

「『初めまして』じゃないでしょう?」

 といった。

思いの外、低く落ち着いた声で、あ、この声好きだな。と思った。
ちなみに、私は自分の声があまり好きではない。


「私の影と、話すことができるなんて、やってみるものだね」

「僕もまさか、話かけられるとは思わなかったけれど、君はいつか話かけてくるんじゃないか とも思っていたよ」


あら、私の影の一人称は、「僕」だったのね。


「ねぇ、影ってどんな感じなの?」
 と、きいてみると、

私の影は、なんとも言えない色に変化した。
寝る時にみる、まぶたの裏側の色に似ている。


「僕も気になるな。君はどんな気分なの?」

「え、私? 私はね、気分といわれても、なんだか難しいね。」

その後も少しだけ、話をしたけれど、
私は、私の影と話しているのに、なんだか話が噛み合わなくて、
それが、ちょっとおかしかった。



「ね、今日一日でいいから、影になってみる?」

私が、私の影に話しかけることが、ほとんどだったけれど、
その時は、私の影が私に、話かけてきた。


影は流暢に話した。

「一度だけ、なってみてもいいんじゃない?中々できる体験じゃないよ。」
「ここは、とても自由だよ。どこまでも伸びたり、縮んだり、何色にでもなれる。何より、疲れないんだ。」

「君は、知らないことを知ることが、好きだろう?」



私は、ぶっちゃけ、影になってみたかった。
すごく興味があった。
未知を感じてみたかった。

でも。



「影さん。私は、1分でも1秒でも一瞬でも、私は私の人生を離れる訳にはいかないんだよね」




なんてったって、今日は家族でお寿司を食べる予定があるからね!!!




「ごめんね、私の影さん」










「君はそういうだろうと、知っていたのにね。」



影はぽつりと、そういって、


私のつま先にキスをした。




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Marina

うそ日記

「うその日常」が詰めこんである、不思議な日記帳。
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