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創刊号試し読みー「伝書天馬ー翼のレクイエム」船曳秀隆

1月14日文学フリマ京都で販売します「第九会議室 創刊号」の、掲載作品の試し読みコーナーです。

船曳秀隆 著者紹介(本文抜粋)

雑誌「現代詩手帖」「詩学」等に掲載された作品をまとめた第一詩集『光を食べてよ と囁く螢烏賊』2019年出版。現在は第二・第三詩集を編んでいる。2021年から大阪文学学校の小説西井クラス、詩・エッセイ高田クラスに在籍中。
2021年初めて小説を書く。関西詩人協会運営委員。宮澤賢治、宗左近、パウル・ツェラン、アンドレ・ジイド、ライプニッツ、与謝野晶子、前登志夫、杜甫、荘子を好む。
大阪・梅田に生まれ育つ。教師。趣味は作曲、能・狂言、茶華道。詩は青木はるみ先生、高田文月先生、音楽は松尾泰伸先生、能は福王和幸先生、茶道は船曳宗武先生に師事。
メール・hidetakafunabiki@gmail.com

「伝書天馬ー翼のレクイエム」本文抜粋

 推敲をし過ぎて、皺くちゃのファイルから、真っ白い天馬のような原稿用紙を僕は拡げた。枕元で詩を一編記した。現在の時刻すらわからないまま、外に出て、夜汽車へと乗り込んだ。貴女に僕の詩を朗読してもらう、ただそれだけの為に。
 夜汽車の中、車窓から暗闇の夜空を飛んでいる伝書天馬が目に入った。伝書鳩というのはしばしば聞くが、この地方では天馬が生息しているので、人々は、伝書天馬によって、遠くに居る友人達に手紙を伝える事ができるのだ。車窓を眺めては、爪の上で、切符にさえ僕は、詩を記していた。天馬を貴女との詩に重ねながら。
 終着駅に着くと、山脈の彼方にある貴女の住む小屋へと向かった。高鳴る葉擦れの音が聴こえてきて、徐々に見えてくる小屋。僕は自らの心が昂るのがはっきりとわかった。小屋の扉を開けると、貴女は挨拶よりも先に僕の詩を求めた。
「これが、これが今日の詩ね」
 待ち侘びていた貴女は力を込めて、そう呟いた。その一脚の椅子に座る健気な貴女に対して、僕以外の誰が澄み切った詩を作ってあげられるというのだろうか。貴女に一束の詩を手渡すと、静かに貴女は深呼吸をした後、ゆっくりと掠れた声で読み始めてくれた。その詩をここに記そう。
「行き場の無い
 遥か遠く深い暗闇の一室で
 僕達はひと筋の祈りという翼を渇望した
 翼をひたすら動かしても
 もはや僕達は羽ばたくことさえできない
 閉じ込められ鎖に繋がれた僕達は
 暗く汚れた天空に
 もう一度ひと筋の翼を掲げた」


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