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R.I.P.傘

傘が壊れた。


出会いは去年の6月11日。
詳細な日付までわかる理由は、この傘を買った顛末をインスタのストーリーズにあげていたから。PLAZAで買った。

お気に入りの傘だった。
ビニール傘なんだけど、柄が木製で。縁がシルバーで、金具がゴールドで。骨が多くてなんか壊れにくい素材のやつ。

そう、壊れにくいはずだったのに。


そこって折れられるん?
という変な日本語が頭に浮かんでしまう程度にはニッチな場所が、急に折れた。
外れたとかじゃなくて、ポキリと根元から折れた。何でそこ、折れられるん?

帰宅途中スーパーに寄って、その帰りに差そうとした時に突然折れた。スーパーに寄るまで元気だったじゃない。どうして。
その折れた骨が「プツッ」とビニールに刺さる音がして、ああ、これはもうダメなヤツや⋯と悟った。傘に穴が空いたらそれはもう、ダメなんや。

細い骨がプラプラと揺れ、小さくも確実に空いた穴から水が滴る。
そんな手負いの傘を大事に差しながら、とぼとぼと帰宅した。


ああこの傘、わたしの手元に来てからというもの、人間に褒められ続ける傘生だったな。(傘生?)

わたしは割と自分の持ち物にこだわるタイプなので、自分の愛用品が人に褒められるのは自分のことを褒められるのと同じに嬉しい。 
この間なんて美容師さんがその傘を手に「いちいちオシャレだな!」と言ってくれた。オシャレ人間にオシャレといわれたらそれはもう最上級オシャレ傘の称号を得たに違いないのだ!やったな!傘!

嬉しくて、いかにこの傘がお気に入りかを懇々と語った。
わたしは透明で可愛いくてどんな服の邪魔もしないビニール傘が大好きで、いわゆる“ちょっといい”ビニール傘に目がない。この傘は本当に、全てがちょうど良かった。

とはいえやっぱりビニール、基本的に短命なのだ。どんなに愛しても、なんなら愛すれば愛するほど、その寿命は短くなる。

いくら大切なものでも、かたちあるものはいつか壊れる。わかってる。
でもさ、わたし明日、誕生日なんだよ⋯。
そんなタイミングでお気に入りの愛用品と別れるのはやはり寂しい⋯。シュン⋯。

誕生日前に体調を壊したりものが壊れたりすることを『バースデークライシス』というらしい。
スピリチュアルはわからんし厄とかも気にしないタイプなのでそんなクライシスあってたまるかよと思っていたけど、いよいよもってマジであるのかもしれない。
あと傘って末広がりだから縁起物らしい。壊れたけど。

帰宅して色々がんばったけど、やっぱりもう修繕は難しそうだった。
今その傘はというと、乾燥中。浴室乾燥でメラメラと乾かしている。
今日もわたしを雨から凌いでくれてありがとう。そろそろ綺麗に乾いた頃かもしれない。
少しだけでもピカピカにして、なんとなく今日のうちにマンションのゴミ捨て場に持っていこうと思う。
ひとつ歳をとる前のわたしが世話になった傘なので。

さようなら、ありがとう。お別れだ。
さよならだけが人生だ。



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