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「BUMP OF CHICKEN 18祭」を、ボランティアとして見た景色。

BUMP OF CHICKEN 18祭、すごく良かった。

観た人もいれば観てない人もいるでしょう。そりゃそう。どちらでもいいんだ。どちらに向けても書いていくよーー。


今回、このBUMP 18祭にOB裏ボランティアスタッフとして少しだけ携わっていました。

いや、本当に大したことは何もしていないんですけどね。普段の予備校のバイトくらい何もしてないです。

それでも、間近で1000人の18歳世代を観て、とても心を揺さぶられました。振り返っていこう。



そもそも18祭じゅうはちフェスとは、1000人の18祭世代とアーティストがひとつのステージを作り上げるという、NHKの番組です。

過去に6度開催されていて、その歴代のアーティストは、

2016年 ONE OK ROCK に始まり、
2017年 WANIMA
2018年 RADWIMPS
2019年 [Alexandros]
2021年 あいみょん

そして今年がBUMP OF CHICKENという面々です。

まさに若者にとってのスターであり、理解者であり、代弁者です。

音楽性はいずれも比較的近いのかなと思うので、どれも全く聴かないという人も多いでしょう。でも、このステージの本質はそこじゃないんだ。普段聴かなくたっていい。



18歳というのは劇的な時代です。大人と子どもの境目であり、高校生もいれば大学生、社会人もいて、誰もが人生の岐路に立つ年齢でしょう。


そして、流れに身を任せ何となく生きていくことが可能だったそれまでと違って、初めて、自分の人生は自分が決めて動かさねばならない、という現実を思い知ったタイミングだったようにも思います。僕は超病んでました。



厳密には18祭の応募条件は17~20歳頃の18歳世代なのですが、とはいえ狭き門です。「あと5年早く開催してくれたら絶対出たのに!」みたいな人も多いでしょう。

ですので、自分が18歳世代であるときに、自分の愛するミュージシャンが出演してくれるというのは、とても幸運なことと言えますね。



5年前、幸運な18歳の僕のもとに、RADWIMPS 18祭の開催という吉報が届きます。少しだけ昔話。

当時は大学に入学して間もない時期で、「やべえ、完全に人生間違えた!」って思ってたころです。やっぱりおれは絵を描きたい、大学辞めたい、そう迷っていました。


「なんの根拠もないけれど、なんか変えられるんじゃねえの?」

そう信じて応募を決意しました。RADは当時の僕の心臓でした。あなたたちと一緒ならば。

そして、大袈裟に言えば、これがキッカケで僕の人生は変わったのかもしれない。


出場するには、1~2分のパフォーマンス動画を送り、審査を通過する必要があります。

倍率がどれくらいかは全く分かりません。一緒に応募した友達は落ちたりしてたな。


その動画のため、1ヶ月ほどかけて2m×5mくらいの絵を描きました。作業する場所がないので、アパートの壁の左右を使ってました。引っ越し時、無事壁紙の張り替え費を請求されました。


それを燃やすなどしました。

なんか燃やしたかったんですよね。そのほうがいいと、18歳は思いました。


そのあと、友人たちに作曲と編集を頼み動画を完成させ、応募しました。
美術に行きたい、望むようになったのはこの時期です。誰かと何かをつくることが本当に楽しかった。


あのころの自分は、馬鹿馬鹿しくて情けなくて、大した頭もなくて、何にもできないのに自信ばかり過剰にあって、世界を信じながら、世界に苛立ちながら、その歪さを誇りに思っていました。

18歳なんて大概そんなもんなんじゃねえかな。あの不完全さが奇跡なんだよきっと。その奇跡の延長をみんな生きているんだよ。



後から聞くと、母はこの絵を描いている様子を見て、美術に進ませてもいいかもしれない、と考えたそうです。

本番はものすごく鮮烈で、忘れえぬ感動的な体験でした。学校では出会えない、他のなにとも似ていない、魔法のような時間でした。

恥ずかしげもなくみんな、大層な夢を笑顔で語る。"恥ずかしげもなく"なんて考える自分が恥ずかしくなるほど、真っ直ぐで純粋な世界がありました。


今頃、みんなどんな未来を生きてるんだろうな。また会いたいよ。





せっかくだから良ければ本番の動画を見てくれ。





時は流れて2023年。

18祭のボランティアスタッフは、過去の18祭の参加者たちです。

別に裏方として支えたいわけでもねえしなあ、と今まで参加してなかったのですが、今回は他でもないBUMPですから、そりゃやりますよ。BUMPは僕の瞳です。いくらだってやるぜ。




会場での仕事についてあまり具体的なことは言えませんが、まあ会場の設営だったり、当日の案内だったりが主ですね。

あと大事なのは、参加者との交流ですね。

全国から集まっていますし、特にひとりで来てる人は、不安もたくさんあることでしょう。そういう人たちと関わり、少しでも気持ちを和らげるのも僕たちの役目でした。

僕も参加していたとき、あまり人と話すことに気が進まず一人でいたとき、先輩ボランティアに話しかけてもらって嬉しくなった記憶があります。

漫才師になりたいって言ってた人だったな。名前、ちゃんと覚えておけばよかった。



前日リハーサル。会場を見渡してみて、一人になっている子がいないか探します。

やはりちらほらいるのですが、一人でいることを望んでいるのか、本当は誰かと話してみたいけど踏み出せずにいるのか、判別がつきません。


そして前者だった場合、僕らが話しかけるのは迷惑になるかもしれません。でも、もし「うっとうしいな」って思われたとしても、それを引き受けるのも僕らの役目です。



男の子が一人でいるところに、近くにいる男の子二人とくっつけられないか、と巻き込んで話をしたりしてみます。

「どこから来たの?」とか、「どんな応募動画つくったん?」とか、そんな質問をします。

すると結構一緒に盛り上がってくれて、「りゅうたさんはどんなの作ったんすか」など聞かれ、答えると、「燃やすって笑笑笑笑」と笑われたりします。僕が離れたあとも、三人で話し続けていたようでした。よかった。



そんなふうに盛り上がってくれる人とは盛り上がりますが、やはりそうもいかないこともいます。


その女の子には、先程と同じような話題を振ってみるんのですが、どうにも話が続かなくて戸惑いました。BUMPは好きかと聞いてみても、そこまで好きじゃないらしいです。

もしかしたらあまり話しかけてほしくなかったかな、と少し後悔する気持ちも生まれます。

もし迷惑なのであれば、早めに離れた方がいい。でも中途半端に会話を終わらせるのも誠実ではない。なのでもう、伝えたいことを全部伝えてから行こうと思いました。




「おれさ、出演したとき、あっちの方の一番後ろの列だったんだよ。だからあんまりRADも見えねえし、放送にも全然映ってねえの。だからこんないい席で歌えるの、すげえ羨ましいよ。いや、羨ましいってのは別に関係ないんだけどさ。

とにかく、なんだろうな、楽しむことは義務じゃないんだ。どんな風に過ごしてもいい場所なんだ。でも、できる限り楽しんでくれると嬉しい。きっとすげえ可能性を秘めてる場所だと思うからさ。

ほら、今回ボランティア入ってるほかのやつに聞くと、当時一緒に出演したやつらと今でも仲良かったり、バンド組んだり、一緒に仕事したり、色んな繋がりができてるらしいんだよ。

そんで、それはたまたま隣にいたやつだったりするらしいんだよ。いやまあ、おれほとんどできてねえんだけどさ。でも、どうやらそういう場所らしいんだよ。

人と関わることが目的の場所じゃないけどさ、そういう可能性もあるらしいんだよ。なんでもいいんだけど、なにかここに来た意味を持ち帰ってくれると、おれはすごく嬉しい。だから、できれば、楽しんでほしいな」





それを聞いてるときのその子とは、さっきよりも目が合いました。何度も頷いてくれました。



そして、「この場に立ちたかったです」と言います。


「実は、去年も出場したんですけど、リモートになっちゃったから。一度も、誰かと歌うってことができなかったから。だからこの場に立ちたくて、もう一回応募しました」


と初めて自分の話をしてくれました。ああ、と強く頷きます。
ひょっとしたらその子は、最初の方の、社交辞令のような定型的な話題には興味なかったのかもしれません。

そのあともう少し話しました。応募動画では「話がしたいよ」を演奏したらしいです。良〜〜い曲選だよな。





合唱の練習が始まります。

まだBUMPはいません。それでも、すごく綺麗だった。歌声の重なりが、瑞々しく輝く表情が。この声が早く、世界に向けて飛び立って欲しい、そう思いました。


"ああ もっと話せばよかった 言葉じゃなくたってよかった"

その歌詞を聴いて涙が出ます。他にも泣いてるスタッフがいました。


ちょっとマニアックな話だけど、この辺の最後の方のフレーズは、BUMPのライブのMCで藤原さんがいつも話していることと、本質はほとんど同じなのでしょう。

コーラスアレンジ担当のゆっきーさんと話すタイミングがあったので、「めちゃくちゃ感動しました。素晴らしいアレンジをありがとうございます。世界のBUMPファンがみんな同じことを、放送されたとき思うはずです」などとオタク語りをしていました。そうだろ?


楽器隊の練習もありました。指導がガチでした。みるみる良くなっていってて震えました。

僕は楽器を全くやらないからよく分からないんだけど、いつもそれぞれの場所で演奏している人たちが、練習会があったとはいえ、こうやっていきなり合わせられるのすごくない??


楽器練習中にWBCのメキシコ戦があったので、練習の様子を見つつ、スマホで試合観戦をしてました。サヨナラヒットを打った時、ディレクターとボランティアで飛び跳ねました。横を見るとカメラスタッフの人もガッツポーズしてました。






本番当日。
いよいよ始まるという高揚を胸に、参加者が集まってきます。


みんながアリーナに入場していくとき、ボランティアが列になってハイタッチしました。

「楽しんでね」「がんばってね」


そうやって声をかけながらみんなの背中を見送ります。

緊張していたり興奮していたり、様々な顔をしていました。ここには本当に様々な人間がいて、それぞれの悩みと願いを抱えて、集まってきているのです。



想像するにきっと、みんなワクワクすると共に、すでに切なさも同時に抱えていたのだと思います。

始まってしまえば、あとは終わるだけです。
全国各地から集まった1000人の18歳世代。このメンバーがこうして揃うことは、もう二度とないでしょう。

時間は限られているから、全員と話すことはできません。ああもっと話せばよかったと、終わったあとに寂しくなるでしょう。そのことを、彼らは最初から知っています。ずっと歌ってきたんだから。

けれど、その切なさも歌声に変えて響かせるのでしょう。どうか楽しんで。願わくば、昨日話したあの子も。



本番前、ボランティアスタッフは会場の客席にいました。1000人の18歳世代を上から見守る位置です。

するとそれに気づいたあいつらのうちの何人かが、



「ボランティアのみなさん、ありがとうございました!!」



と、大きな声でこちらに向かって叫んだのです。
その声は周りに広がり、大きな声と拍手があちらこちらから聞こえてきます。愛かよ。泣いちゃうだろ。

僕らもそれに応えるように、「楽しめよ!」「行ってこい!」と、声を上げます。ここからは、みんなだけのステージだ。








歌声が、宇宙に響き渡ります。魔法のような時間はあっという間に過ぎ去ります。








収録が終わり、彼らだけの時間を過ごしたあと、出口付近でみんなが会場を出ていくのを見送ります。体調を崩してる子がいないか、と確認をしつつ。

入場の時もしたけど、またしてもみんなとハイタッチをします。別に帰りにもやったっていいじゃないか。何回だってやればいいじゃないか。


「おつかれさま」「最高だったよ」「ありがとう」そう伝えます。

それに対し、「ありがとうございました!!」とみんな返してくれます。


みんな幸せそうな顔をしていました。並んで歩く人たちは、初めて会ったのにまるで長年の親友のようにくっついて、高らかに笑いあっていました。

始まる前とも明らかに違う、充実したエネルギーがそれぞれに宿っていました。それを見てこちらも、なんだか力を貰ったような気持ちになります。




そして、僕はしっかりと見ました。



過ぎていく人並みのなか、ほんの一瞬だったけれど。

手を叩いて歩いていくあの子が、とても幸せそうな顔をしていたのを!



それが、何よりも嬉しいことでした。そしてみんな、ここからそれぞれの日常に戻り、人生を続けていくことでしょう。その旅路が、こんなふうにまた重なることを祈りながら。





5年前に出演した時も思っていたことがあります。

18祭では、たぶん多くの人が最初は、好きなミュージシャンに会えるってモチベーションで応募するのです。

でもみんなと一緒に何度も練習して、一緒にひとつのステージで演奏して。そして終わる頃には、その1000人と出会えて、同じ時間と過ごせたことが、気づけば何より大切な宝物になっているのです。その変化が素敵なんだ。




放送を観てない人で、興味を持っていただいた人はぜひ観てみてほしいなと思います。

NHKプラスやNHKオンデマンド、あとAmazonプライムでも観ることができるらしいです。(2023.04.02現在)
楽曲部分のみの映像は、遠くないうちにYouTubeにアップされるでしょう。


そして、来年以降の18祭に出られる権利がありそうな人は、ぜひ応募を検討してみてほしいな、と思います。


本当に、ものすごい可能性を秘めてる場所だと思うから。きっと何かを変えるキッカケになるはずだから。まだ参加アーティストも、そもそも開催されるのかも分からないけどさ。



すっごく力を貰ったよ。ありがとう、1004人のミュージシャン。

ここからの世界を、また懸命に生きていこう!




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