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令和元年、原爆の日(2)

(1の続き)

2016年の8月15日、私はイギリスにいた。

ロンドン市街に出掛けていたのだけれど、ああそういえば今日日本は終戦記念日だなあと思いながらふと広場に目をやると、数メートルある大きなモニターに、でっかく「VJ」と表示されていて、街もお祭りみたいに賑やかな雰囲気だった。
日本だと、テレビでは追悼式典が中継されていたり、玉音放送を流したり、戦争記録特集が組まれたりして、お盆の時期とも相まって、喪に服すような感じというか、湿っぽい気持ちになる日だから、ギャップがあるなあなんて思って眺めていた。
だけど、ロンドンをガイドしてくれていた人が
「VJっていうのはVictory Japan(=日本に勝利した)の頭文字なんです。」
と言った瞬間に、私は大きな石で頭をガンッと殴られたような衝撃を受けた。

その時初めて、日本が“敗戦国”であることを自覚した。

そうか、日本が降伏して第二次世界大戦は終戦したんだ。
だから戦勝国であるイギリスでは「日本に勝利し、終戦した日」としてお祝いムードが漂っているのだ。
第二次世界大戦は1939年〜1945年の6年に渡る長く大規模な戦争だった。
それこそ、最後の方はそれぞれの国がそれぞれに疲弊しきっていただろう。

原爆が投下され、
日本が降伏したことによって、
長い戦争の苦しみから世界中がようやく解放された。

「日本がこんなに世界中を喜ばせた日は他にない」

私の尊敬する人は、いつだかそんなことを言った。

戦争は人から理不尽に多くのものを奪っていく。
日常の暮らし、家族、友人、恋人。
こんな悲しいことはもう二度とあってはならないのだと、学校や教科書や新聞やテレビによって教えられてきた。

でも同時に今の私たちが忘れてはならないのは、我々は戦争によって理不尽に多くの大切なものを奪われ、
そして同じように理不尽に、
誰かの多くの大切なものを奪ったということだと思う。

戦争は奪い奪われる、互いに奪い合う暴力だ。暴力はきっと何も生まない。

終戦から74年。
日本の、戦争の無い時代に生まれて、戦争を知らずに今を生きていることを有り難いと思う。
先人たちの「絶対に戦争をしてはならぬ」という強い気持ちと、たゆまぬ努力のおかげだと思う。
平和は決して当たり前では無い。当たり前で無いものを今私たちが享受していることを、私たちは忘れてはならない。

今年も、暑い夏の日を、8月6日を迎えることができたね。
来年も、また無事に迎えることができますように。

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