見出し画像

「持ち帰り謎」を考える

23日の記事なのに冬コミの原稿やら準備やらでめちゃくちゃ遅れました田中太郎です。申し訳ないです。

これは謎解きについて書きたいことを書こう Advent Calendar 2018 https://adventar.org/calendars/3438 の記事です。

早速ですが、今年は「持ち帰り謎」について少し書いていきます。
主観100%、内容の正確性はもちろん誤字脱字読みやすさすら一切チェックしてません。これを読んで時間や充電残量を無駄にしてもなんか変な気分になったとしても一切自己責任でお願いします。
「なんでも許せる人向け」ってやつです。

ついでに宣伝しておきます。今年2018年10月に新作『メイキュートッパ! 探検 妖精の森』ってやつを出しました。
以下のリンクから互いに住所を知られない匿名配送機能を使って購入することができるのでぜひ買ってください。
https://booth.pm/ja/items/1087454

そもそも「持ち帰り謎」って何よ

持ち帰り謎というとおおよそ以下のような特徴を持つものでしょう。

・謎解きゲームに分類される。
・封筒やファイル、袋、箱などのパッケージに封入するなど、比較的持ち運びやすい形で販売or配布されている。
・どこか特定の場所を訪れる必要はなく、好きな場所で解ける。
・時間や時期に関係なくいつでも解き始めることができる。

稀にまったく異なる感じのものもありますがそういった例外を挙げ始めるとキリがないかもしれませんのでここでは割愛します。
要は「一度買ってしまえばあとは好きなときに好きな場所で遊べる謎解きっぽいゲーム」のことを指す言葉として「持ち帰り謎」という語が使われているようです。いろいろ面倒なのでこの記事ではこういうものを指して持ち帰り謎と呼びますし、こういうものでなくてもそれが持ち帰り謎として売られていればそれは持ち帰り謎でしょう。

「持ち帰り謎」という名称について

聞き及ぶ限りでは、「持ち帰り謎」という呼び名はまだお台場にあった頃の東京カルチャーカルチャーで2012年11月に行われた最初の謎フェスにて、現在「謎解き系イベント勝手に大賞」などをやっている三月さんがそういう概念のものとして命名したとのこと。
「持ち帰り謎」で検索かけたって持ち帰り謎のレビュー記事ばっかり出てきてその歴史なんて全然見つかる気配もなかったので真偽とか詳細はまったく知りません。
まあ最近「調べてみましたがよくわかりませんでした>_<☆」みたいなのがよくありますし許してください。

たしかに謎フェスの会場で買って、そのまま家に持って帰っても解ける謎解きキットというのは確かに持ち帰ってますし、紛れもなく持ち帰り謎ですね。
ただ、例えばファミコンのカセットなんてのはお店で買ってから家に持って帰って遊ぶものだったはずなのに別段「持ち帰りゲーム」のような名前がついていないことを考えると、今流行ってるタイプの謎解きゲームはもとはどこかに出かけて公演という形で参加するものだったんだなぁなどと、お前それただ知識として知ってるやつじゃんなんてツッコまれそうな推察ができます。いや詳細は知らんけど。

どなたか詳しい方、そろそろ商業同人含めて謎解きゲームの歴史にどういう動きがあったのかという歴史をしっかりまとめて読み物化してくれないかしら……
すでにざっくり重要な部分だけまとまってるスプレッドシートは見かけて読みましたが、物好き以外の目で見てしまうとおそらくスプレッドシートは読み物じゃないので……

閑話休題。

まあ当初持ち帰り謎は確かに持ち帰り謎だったのでしょうが、最近は謎解き人口も増えて、普通のデジタルゲームと同じく通販で持ち帰り謎を購入して家で遊ぶor解く人も増えたと思います。
ナゾガクみたいな場所に来るような謎ジャンキーを相手にしてる分には持ち帰り謎という名称のままで普通に伝わってると思いますが、謎解きゲームを新しく始めた層の目には「持ち帰りって何ぞや?」となんとなく伝わりにくい気もします。
ん?ライト層はSCRAPかAnotherVisionの謎しか解かないから関係ないって?まあ気にするだけならタダじゃん?そういやAnotherVisionも駒場祭で持ち帰り謎って名前使ってましたけどね。

何か、現地に出かけて解く謎解きゲームではないということが区別でき、かつ家でいつでも遊べるものであることがわかる誰にでもわかりやすいいい言葉はないものでしょうか。
ここまで「持ち帰り謎」って名前が浸透してるならもうそれでいいんじゃねってのはちょっと横に置いといて。

と、偉そうに書いてはみたものの別に何か有力な対案があるわけではないのです。
一応、冒頭で紹介した『メイキュートッパ!』では持ち帰り謎という名称は積極的には使わずに「家庭用謎解き(ロールプレイング)ゲーム」という言葉を使用しています。
ギリ家で解ける感は伝わりますよね?

これ以上この話題を続けても何も出ないので次いきましょう。

「持ち帰り謎」のよさ

持ち帰り謎はどこでも(でもたぶん主に家で)いつでも解けるという性質を持つため、副次的にある特性を持ちます。

キット丸ごと保存が効くことです。

例えば、某原宿の地下にある一室を訪れて6人1チームで解くような謎解きゲームは、しばらく経ってからからもう一度アレやりたいなぁと思ってもまず無理です。少し前まではそもそもリピーター禁止でしたし、最近だっていつあるかそもそもあるかどうかすらわからない再演のタイミングを待って決して安くはないグループチケットを購入しなければそのチャンスを得ることはできません。
最初に参加した際に解いた後の紙モノを持ち帰れたとしても、例えばラミネートされた用紙や毎回使いまわしているアイテムなどは当然のように持ち帰れませんので家で100%全てを揃えて謎を振り返ることは不可能です。
その点、持ち帰り謎であれば解くために必要だったものは間違いなくすべて(ウェブ上にあるものは除き)そのキットの中に詰まっていますので、例えばキットの紛失や解答ページがあるウェブサーバの運営が停止しない限り、時事ネタがある場合も当時のことを調べながらであればほぼ100%を振り返ることが可能です。

(ちょっとお金が追加でかかっちゃうけど例えば解答ページのHTMLファイルなんかをCDやUSBに保存したものもアーカイブ化という観点で見ると需要はあるのかもしれません。
かくいううちの持ち帰り謎解答ページに使ってるウェブクロウの無料レンタルサーバーも新サービス移行に伴い新規登録が停止されちゃったのでなんか突然サービス終了されないとも限りません)

ネタバレが解禁されないまま再演もなく終わってしまった謎解き公演は今のところほぼアーカイブ化されていない現状を見るに、過去の謎解きゲームを1つでも多くデータ収集可能な状態で保存しておくことは将来的に何かの役に立つことである。そんな気がします。
なんか最近グラブルがゲームはアーカイブ化しなくてもプレイした時の体験や感情が記憶に残ればそれでいいみたいなことを抜かしてましたが、それじゃあ随分経ってからばっちり環境を整えたら振り返りの効くファミコンソフトと違って、もうその内容をもう一度見ながら誰かと語り合うなんてことはできないわけですよ。ついでにその面白さの本質を事細かに検証や研究するようなこともできなくなります。過去の名作ゲームのデータがまるっとアクセス不能になるのは、学問的なことは専門ではないのでアレですが、ファン目線として悲しいです。
なお私グラブルはまだやってません(メインストーリーを追いたい気持ちはある)

『ポップアップストーリー 魔法の本と聖樹の学園』っていう、廃課金プレイヤーから要望を送りまくった結果かどうかは知りませんがサービス終了後も完全オフラインでほぼ全機能生きているソシャゲもあるのでリソースさえあればできるはずなんですよね。まあそのリソースがないんでしょうけど。
なおポプストは非常に楽しい3DCGキャラ着せ替えゲームです。男子キャラにも容赦なくミニスカメイド服とか用意されてるので超オススメです。

また脱線した。

あと、持ち帰り謎はキットの保存が効くため販売期間が比較的長いです。頑張れば量産や増産もききます。
販売開始から結構経ってから「あの持ち帰り謎よかったよ!」なんて紹介されても、まだ新規で買って遊ぶことができるのです。たぶん。
よそが再販などどういう姿勢でやってるのかは知りませんけど。でもアニメやマンガ、ゲームコラボの版権モノはなかなか再販キツいだろうから評判高いやつはあるうちに買っておいた方がいいと思う。

うちの−NiNE−と−LOVE−はそれぞれ販売開始から3年と2年経っていますが今だにご購入いただけています。まだやったことのない方はよければどうぞお買い求めください。
BOOTHのリンク張っておきますね(宣伝)。
https://booth.pm/ja/items/1087495
https://booth.pm/ja/items/1087502

次です。

「持ち帰り謎」の可能性

本当は冬コミの原稿をもっと早く終わらせてエスカローグをちゃんとじっくり解いて味わってからこの章は書きたかったのですが、これ以上記事書くのを先延ばしにすると年が明けちゃいそうだったので諦めました。
以下は全力で気をつけますしネタバレ禁止のものはタイトルを挙げることすらしませんが、何かの雰囲気的なネタバレになることが無きにしも非ずなので気をつけてください。
拙作『メイキュートッパ!』だけは事前にネタバレを警告するという条件つきでネタバレOKなコンテンツなのでやや深入りしてこんなことしてるよ、という紹介が入るかもしれません。記事のタイトルにネタバレに繋がることがあるかもって書かないのは作者権限ってことにしておいてください。あれは持ち帰りにもできるように調整した公演型コンテンツなので結構実験的にいろいろやってるのです。

・封入物
今までで一番あーこれはすごいとブチ上がった持ち帰り謎にはまさに本物が詰まっていました。いや本当はその謎解きのために作られたそれっぽい雰囲気の模倣品なんですけどね。
これ量産するの大変だったろうなぁという構造物が入っていたこともありました。
手間と予算の折り合いさえつけば、持ち帰り謎の封入物はいくらでもクオリティを上げられます。まあこれだけなら公演型も同じですね。
ただし、持ち帰り謎の場合はそれら全てを手元に、個人の所有物として手に入れることができるのです。この贅沢さは公演ではなかなか味わえません。公演は公演で会場代とか人件費とか違う部分のお金のかかり方がやばいからね。さすがに全アイテムを全公演分新規に用意はなかなかできないし、複数人参加だと全員が持って帰ることもできませんし。
凝ったものを入れるとその分量産もツラくなりますが遊ぶ側にとってはそんなの知ったことじゃありませんので頑張りましょう。
謎解きにも使いつつその後はグッズとしても使えるアイテム、例えばクリアファイルやキーホルダーなんかを封入しておくとゲームがゲームだけで終わらずに楽しめるのかなぁなんて思います。でもいい加減クリアファイルが増え過ぎてしかも使いにくい柄だらけで扱いに困ってるところはあります。

・プレイ時間と人数
公演と持ち帰り謎で大きく違う点です。公演形式の謎解きではプレイヤーにあたるキャラクターが1人しかいないにもかかわらずなぜか同じテーブルの周りには4~6人が座っていて、オープニングや前説の段階で「複数人いるように見えますがこのゲーム中あなた方は同じテーブルを囲むチーム全員で1人の人間とします」と注釈があるいったことがざらに起きます。そんな複数の異なる人格を合わせて1人ってお前は刃皇かよとツッコミを入れたくもなるものです。(刃皇:マンガ火の丸相撲に出てくる、複数人格で脳内会議を繰り返すやべー奴)
ついでにその方が盛り上がるとか1日に何公演も繰り返してやらないと儲からないとか様々な理由でほとんどのゲームに60分程度のタイムリミットがつきます。犯人の正体すらわからないのになぜか自分たちがきっかり60分後に襲われることだけあらかじめわかっちゃったりするのです。
持ち帰り謎ならプレイする場所もタイミングも購入したプレイヤーが自由に設定できるのですから、製作者側の懐事情など考慮することなくその物語なり謎なりを最大に楽しんでもらえる時間や推奨プレイ人数を設定できます。なお当然のことながら推奨プレイ人数はあくまで推奨ですからプレイヤー側は何人で遊んでもいいわけです。1人でのプレイを推奨しているゲームをカップルで遊んでも、爆発しろとは思うかもしれませんが2人が同意の上でやっているのであればそれはそれで自由な遊び方として問題はありません。
つまり、持ち帰り謎は謎解きをよりプライベートで深い体験を味わえるツールになる可能性を秘めているのです。
この辺りはエスカローグの制作者座談会記事の内容が素晴らしかったのでどうぞそちらをお読みください。
http://escalogue.3dnovel.jp/talk/

・ヒントと解説
一方持ち帰り謎において、公演ではおなじみの一定時間経過後にゲームを終了させ解説に移るという手法はなかなか取ることができません。解いている周囲にスタッフとなる人もいないので進行状況を確認しながら求められたときに適宜ヒントを出すということも今はまだできません。代わりに持ち帰り謎や、同じくスタッフがすべてを確認できない周遊形式の謎解きで発達したのがウェブ上のヒントページです。最近はLINE@を使ったものも増えてます。
謎解きに行き詰まり、ここからどうすればいいのかわからなくなったとき、ヒントページを開いて該当する箇所を読めばその手がかりが書いてあるというわけです。
以前見た超高難度の謎のヒントページはもはや読み物でした。謎の方を理解できずとも、丁寧に書かれたヒントを読んでいくことで謎を解かずとも解けた気分になる、さながら推理小説で探偵が謎を解き明かしていく部分を読んでいくような面白い作りでした。
持ち帰り謎ではないですが、AnotherVisionによる周遊謎『神と天使と僕らの手紙』におけるヒントページはその作り込みにより公演の雰囲気をさらに盛り上げることに一役買っていたように思います。
ヒントや解説はただの文章にあらず、突き詰めていけば物語の雰囲気や没入度合いを更に高める効果を持たせられるのかもしれません。
なお私は以前、解答ページを開いた状態で設定した以上の時間が経過すると時限式でヒントが現れていくタイプのヒントページを作ろうとしましたが、サクサク進めたい人、じっくり考えたい人双方にとって邪魔でしかなさそうだったのでボツにしたことがあります。タイムアタックタイプのウェブ謎とかには向いてそうよね。

・解答チェッカー
先ほどと同じく、持ち帰り謎にはスタッフがいないので解いた結果の答えをチェックして正解ならば次のステップの謎を渡すような人、公演でいうチェッカーももちろんいません。
まあちょっと勉強すればすぐにウェブ上に解答フォームは実装できてしまうので正誤判定程度ならまったく困ることはありません。ソースを見ると答えがわかっちゃう問題も最近はLINE@を使うことで特に知識を必要とせず回避できるようになりました。LINE@はどうあがいても画面がLINEなことを除けばかなり優秀なスタッフになります。
しかし、もちろん謎を解いて言葉で出てくる答えを出すだけが謎解きゲームではありません。背景を指定回数クリックすることで隠しページを見つけたり、見えている解答フォーム以外の部分に答えを入力することで先に進めたり、そういうタイプの解答は単なる単語に比べればより楽しいように感じます。
また、持ち帰り謎にはウェブを用いない解答チェッカー、例えば3桁錠をつけることだってできます。
答え方の幅さえ増やせれば、持ち帰り謎でできることはめちゃくちゃ増えます。試しに『メイキュートッパ!』の話を出すと、あれはRPGツクールによって作ったフィールドが解答フォームです。おかげで今まで持ち帰り謎には実装しづらかった謎も組み込めています。制作の自由度もめちゃくちゃ高いです。その分難しいですけど……
解答チェックの方法を拡げられれば持ち帰り謎はより自由に作れるようになるといえるでしょう。完全にアナログでやると持ち帰り謎は箱謎みたいな方向に進化していくのかな。

えっ、こんな文章まだ読んでるの?

まあ長くなったので締めていきます。
これまで書いた文字列をざっくり要約すると、「持ち帰り謎を開拓していくと、もっと面白い謎解きと物語体験の可能性が拓けるかも。そのために持ち帰り謎プレイヤーの裾野を広げたい気持ちはあるけど面倒だから誰か頑張って」になります。

つーわけで面白い持ち帰り謎作ろうぜ。以上。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?