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謎と体験と焼肉

なんだこのタイトルは(この文章は謎製作者&謎クラスタの謎解きについてのアドベントカレンダー Advent Calendar 2017の参加記事です。)

「他人の金で焼肉が食べたい!」とまで贅沢は言わないので「自分のものになった金で焼肉が食べたい!」という話です。

いや、やっぱり他人の金で焼肉が食べられるならそれが1番ですし、なんならステーキでもいいです。
見知らぬ人に多量の美味なる肉を奢りたい奇特な方がいらっしゃいましたらぜひお声がけください。

結論から書くとこういうことです。しかしここで書くのを止めると意味不明だと思うので続けます。

田中太郎と申します。
東狼研究所という団体とJ's C Laboという個人団体で謎やイベントを作っている人です。
制作歴はウェブで謎を作り始めて3年、リアルで行う謎解きを初めて作ってから2年程度です。

はじめはリアル謎解きゲームというものに「謎解き」は必要?みたいなことを書くつもりだったのですが、おそらく同じことを書く人はたくさんいるでしょうし、昨年までも散々書かれ続けているので、そのちょっと先のことを考えてみようと思います。
(※以下いわゆるパズルや一枚謎を指してカッコつきの「謎解き」という言葉を使っています)

現状リアルな謎解きゲームを構成している要素から「謎解き」を取り払ってみます。すると、

・チケット取得
・会場まで行く
・会場に入り人と会う
・オープニング
・司会
・アクションで解く謎
・ひらめき次第な大謎
・デザインや小物
・キャストとの触れ合い
・BGMなどの音楽
・身体を動かす
・解説
・成功or失敗
・エンディング
・アンケート
・感想戦
・家に帰る
・ウェブに感想を書いて共有する

あたりの要素が残る気がします。
(書き出してみたら思った以上に多かった)
ではこれらをざっくり分類してみましょう。

・オープニング
・エンディング
・BGMなどの音楽
・デザインや小物

イベント内でプレイヤー自身がこれらに受動的に触れる機会はまずありません。準備の段階で作者やデザイナーが用意したものがそのまま流れます。
Twitterでイベントに対する感想を見る限り、プレイヤーの満足度に大きく関わっていそうです。

・司会
・キャストとの触れ合い
・解説

これらのクオリティはキャストやスタッフによって左右されます。プレイヤーのアクションに対し即妙に対応できると強いなぁと感じます。
茶番が楽しい、司会ガチャなどのワードが存在しているのを見るに満足度にも影響がありそうです。

・チケット取得
・会場まで行く
・アンケート
・会場に入り人と会う

チケットが取れない、会場が遠いなど不満点にはなりそうですが、ここの項目に重きを置いてイベントの評価をしている人を私はまだ見たことがありません。(会場にたどり着くまでも謎になっているものは別の話)

・感想戦
・家に帰る
・ウェブに感想を書いて共有する

プレイヤーのその後の予定次第なので本当にどうしようもないやつです。

・アクションで解く謎
・ひらめき次第な大謎
・身体を動かす
・成功or失敗

ようやく主に謎解きイベントでしか見られない部分に到達しました。これらはプレイヤーがいかに解けるかという要素により感じ方が変わってきます。
当然プレイヤーの満足度を大きく左右するでしょう。

なんでそんな満足度のことばかり、ってそりゃあせっかく会場を借りて公演をやるんですもの。わざわざ来て、お金を出して参加していただけた人にはめいっぱい楽しんでもらいたいじゃないですか。
……というのは表向きのアレで。

作ったものを「これスゲー!」と褒めてもらえるとめちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。なのでせっかくやるからにはより面白いものを目指すわけです。

こうして要素を書き出してみた結果、プレイヤーの満足度に大きく関わりそうなのは

・オープニング
・エンディング
・BGMなどの音楽
・デザインや小物
・司会
・キャストとの触れ合い
・解説
・アクションで解く謎
・ひらめき次第な大謎
・身体を動かす
・成功or失敗

これらです。

では満足度を上げるための戦略を考えてみましょう。

・オープニング
・エンディング
・BGMなどの音楽
・デザインや小物

これらのクオリティを上げたら満足度は上がりそうです。
ものすごく尺の長い楽しい動画や、ビュンビュン動くスタイリッシュな動画、オシャレなオリジナル楽曲や細部まで繊細に作られた丈夫な小物……
どれも一般人が容易に作れるタイプのものではありませんね。質を高めるために外注するとお金が発生します。

・司会
・キャストとの触れ合い
・解説

ご存知の通り、誰にでもできるような簡単な仕事ではありません。上手な人に頼もうとするとお金が発生します。

・身体を動かす
・アクションで解く謎

アクションで解く謎とは? 例えば非常にリアルに近いもの、零狐春のKODOKUがまさにこれでしょうか。
他所ではできないなんかすごいことをやろうとするとやはりお金がかかりそうです。

・ひらめき次第な大謎
・成功or失敗

参加型の謎解きゲームと銘打ってイベントをする以上、基本的にここが内容の中心になるはずです。オープニングだけで3000円分の価値がある……とか言われる公演もありますが、あなたがその作品の熱烈なファンでなく長くても20分程度のオープニング映像を観るためだけに3000円使うくらいであれば、映画館でKING OF PRISM by Pretty Rhythmを2度観ていただいた方がより刺激的な体験になるかと存じます。
アイデアは自分で出せばいくらでも無料で使えるとはいえ、特殊なシステムを組み始むとやはりお金の力が必要になることがあります。

はい。お金です。

紙に印刷して出題できる「謎解き」、その最大の利点はコストの低さにあるのではないでしょうか。
すごいパズルでできた大謎、中謎、小謎。その質だけでプレイヤーを満足させ得るものを大量に安く印刷し封筒詰めなどして出題すれば、ちょっとくらい「なんでこんなところでこんな印刷されたパズル解いてるんだろう?」と思われてもそんなこと「わあすごい!美しい!楽しい!」の感情1つでどうでもよくなる、ということが起こります。
(実際はどこの団体もなんでこの場所にこの謎があるのか、というところまで深く考えたうえで「謎解き」を出題しているはずなので効果はもっと高いはずです)

うわーいろんな人から怒られそう

しかし!
「リアルな場所に「謎解き」なパズルなんてあるのおかしくない!?」主義に基づきこれを廃してしまってはこの手法は使えません!

スクワット10回などのアクションで切り抜けられるならほぼお金はかかりませんが、面倒くさい性質なのでこうも思います。
「スクワットするだけで切り抜けられる窮地ってどんなだよ!?」
世界設定だけでどうにかすることは容易です。でもそれではやっぱり何か釈然としません。

はい、ではここで試しに小道具を投入してみましょう。
仮装大賞のアレのように、スクワットを1回やるごとにゲージがたまって満タンにすることでマシーンが動くよ!なんてものを作ったとします。これを見せられてまったくテンションの上がらない人間はおそらくいないと思います。
日常の世界ではお目にかかることのない謎のマシーンが出てきたらそれだけで特別な感覚を味わえるはずです。

スタッフを投入してじゃんじゃん盛り上げていけば、普通のことをやっていたとしても特別な体験になるかもしれません。

面倒になったなのでこれ以上の例示はやめますが、この他にもわあすごい!は様々なアプローチで作ることができるでしょう。しかし、やはりどう考えても謎解きパズルが誇るコストの低さには敵う気がしません。

それでもリアルで(よりリアルっぽくて)すごい体験が作りたいんだ!というならそれ相応のお金を積むのが手っ取り早いと思います。
(圧倒的に不足した技術面を努力でなんとかしろ、は時間と余計なコストがかかるのでNG)

ついでに、スタッフを雇い入れると給料が発生します。1人制作のつらいところです。(そういう目的の記事ではないので団体なら団体内部の人間を無償で使えるのか問題は無視)

そう。お金なのです。

もちろん、制作側がかけたお金の額と、参加者が遊んで得られる満足度と、これらが比例するかというとそんなことはありません。使い方を間違えればただの無駄遣いにもなりえますし、低予算企画が死ぬほど面白いこともままあります。

ついでに書いておくと、自主的に行うリアル公演は別段すごいことをしなくても準備にけっこうお金がかかります。会場、機材、人間、備品、印刷……。
それでも用意したチケットが全部売り切れて赤字を回避できるならいいでしょう。けれども作り始める段階でその保証はありません。

作るコンテンツに対する信頼と実績を積めって?
そうだね。その正論でぶん殴ってくるスタイル嫌いじゃないよ。

というわけで、冒頭の文章に戻ります。
自分が納得のいくもので遊んでもらって面白さを感じてほしい、でも打ち上げと称して肉が食える程度にはお金もほしい!
そういうお話でした。

田中においしいものを奢りたい人、いらっしゃいましたら連絡ください。お待ちしてます。わかりやすくお金くれる人なら大歓迎です。

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