The Writerみた②



プレビュー公演初日(3/3)の感想をふまえつつ、3/9-10の本公演の感想をメモします。
ネタバレありです、注意。





プレビュー公演初日の感想はこれ↓
(引用しながら書いていくので読まなくても大丈夫👍🏼)


3/9本公演、初日と比べて「進化した…!」という感動が大きかった。

「プレビュー公演」とは何か検索してみると「試験公演」であるとのこと。なるほど。どこかの海外(雑)では、長期公演を通して作品を育てていくスタイルが存在するそうだ。初日と本公演の内容がぜんぜん違っていて、それがあまりに衝撃的で、「本公演に行くのは今日が最初で最後」と言っていた翌日、当日券で観にいっちゃった。観てよかったと思う。

初日と本公演で違う点は細かい要素を含めれば数え切れないけど、全体を通しての印象が全く異なるものだったと思う。

初日の感想は、まず
【いい意味で散漫だった。シーンごとの脈絡があんまりない】
だった。わたしはこれを
【なにかをつくろうとするときの頭の中ってそんな感じだよな】
と、わりとポジティブに捉えていた。でも実を言うと、「『Writer』じゃなくてもいい気がする」と思っていた。
また、後味が【書き手の二人のシーンで終わる。どうなるのか見せてもらえないまま終わる。こちらに委ねられてしまったような。もやもやを残したまま終わる。】と、すっきりしていなかった。でも、それ自体に疑問は持たなかった。対ゼロコに限らず、わたしは舞台やパフォーマンスに対して楽しさや面白さだけを求めてはいないから。観客である自分へ向けて何か問いかけられているのかな、もやもやを残すことが狙いだったのかな、と考えていた。

これらが本公演で覆った。

まず、【散漫】という印象は無くなった。あんまりやりたくないんだけど今から比喩表現を使うね。プレビュー公演は、各シーンや要素が地面に落ちた木の実のようにぱらぱら転がっているように感じた。本公演では、その木の実が全て一本の木の枝になっているのが見えたような気がした。
これには、おそらくいくつか理由があって。
まず、追加・変更・削除されたシーンがたくさんあること。わたしが個人的に、削除(変更?)されたシーンとして印象に残っているのは、青い闇の中、2人でごみ箱にたくさんの紙くずを投げ入れるシーン。追加されたシーンで印象的なのは、トロフィーを棄てようとする、止められる、最後は棄てるという流れ。前者は抽象的な表現だったのが、より分かりやすい表現に差し替えられたのだと思う。記憶が定かじゃないんだけども…。後者は、トロフィーを扱う場面や細かい作家の振る舞いに意味を持たせ、一本筋を通させたのだと感じた。作品の最後、ゾンビと化しながらも指輪を持って走り続ける場面。わたしはここがプレビューでどうだったか覚えてないのだけど、本公演ではすごく真っ直ぐに飛び込んできて、角谷さんの演技に引き込まれて、ちょっと涙ぐんでしまった。走る角谷さんに重なって『鉛筆で紙に字を書く音』が聞こえてくるの、めちゃくちゃ痺れなかった?痺れたよね?初日と同じく、そこから【書き手の二人のシーンで終わる】のだけど、【こちらに委ねられてしまったような。もやもやを残したまま終わる。】という印象には全くならなかった。Writerである意味があった。そして、Writerではないわたしの背中をもおしてくれた。

もうひとつ初日と異なると感じたのは、観客との関わり方だった。
わたしは初日の感想として【観客を巻き込んでいくタイプの作品なのかなと思ったらそうでもない…と思ったら拍手を求められたりもする。心の置き場所というか、自分の立ち位置の把握がむずかしかった。】と記しているが、本公演では「わたしたち(観客)の位置付け」が明確化されていたと感じた。たとえば紙を折り立ててチンバランス(で名前合ってる?)するところ、鉛筆と消しゴムで煙草に火をつけるところ、つまりパフォーマンスみが強いシーンにあたるところなんだけど、プレビューでは唐突に大道芸が始まるような、急に別の次元に放り込まれるような違和感があった。観客へ拍手を求める動作をするので、「あっわたしたちも参加なんですね!あっ!はい!」みたいに戸惑った。本公演では、パフォーマンスのシーンが自然に入り込んでいて、突然求められる居心地の悪さを感じなかった。これにより、『トロフィーと赤い本を持ってスポットライトを浴びる後ろ姿のシーン』の扱いや流れ、印象も結構変わっていたと思うのだけど、ちょっと細かい記憶が曖昧て…そこは割愛します。

そしてまた別の話、初日の感想に
【濱口さんはパントマイマーでパフォーマー、角谷さんは役者、という感じがした。角谷さんの振る舞いは人間そのまま、濱口さんは薄皮一枚隔てているような印象を受けた。】
と書いてあった。
これが…これが、3/9は濱口さんも役者みが強かった。(友達の言葉を借りると、「演劇人」だった)でも、3/10の濱口さんは、少しパフォーマーみが戻っていた。このへんはプレビューと本公演で変えた、というよりは、日によって変えているアドリブ的要素なのかもしれない。当日券観覧を追加した理由のひとつに、それを確かめたかったというのもあるのだけど…もっと追加したくなっちゃうよね。困ったわ。まあもう行けないんだけどさ!これを書いているのは静岡へ向かう電車の中さ!早起きしたのでねむたいよ。

【照明、美しかった。いままでの作品でも壁は使われていたけど、今日は黒ではなく明るいグレー…だったっけ?青と赤の光で怪しくホラーチックな雰囲気になるし、オレンジ色の光でノスタルジックな夕方のような空気になる。】
これは初日から変わらない。でも、もっと効果的だったようにも感じる。
照明に加えて、ゼロコは音作りがすごいなと思う。なんて当たり前のことを言うんだ!とか思わずに聞いてくれ。いや聞かなくてもいいけど。わたしが印象に残っている音、いくつかあるけど、まず窓を開けた時に聞こえる外の音。リアルさがすごい。ぐぐっと引き込まれる。それから、イヤホンで聴き始めた音楽が、想像のシーンに入るところでクリアになるところ。どうやったらそんなん思いつくんだろ、って思う。

当たり前ついでにもうひとついいですか。ふたりともパントマイムすごく上手ですよね。プロですね。本当に物がそこにあるように見せる『指輪の箱の向きを変える』『服を取った後にハンガーをしまう』などの細かい動き。やらなくても観客はスルーしちゃいそうなのに…というところをあえて強調してみせる『ヘルメットを外す』、さり気なくやってのける『ランニングマシンのスイッチを切る』。わたしパントマイムのことよくわかんないけど、すごいとおもう。(こなみ)

でもでもさ、パントマイムって基本的に声を出さないじゃないですか。(そういうもんでもないのかな)
今回の作品では特に角谷さんがそうだと思うんだけど、発声の仕方、めちゃくちゃ絶妙ですよね。いつもの『ン〜』みたいなやつもだけど、楽器隊、ゾンビ、歌舞伎、オエッ、ファンファンファン…ウン!🛸的確にちょうどよく心地いい発声ができるの、パントマイマー兼役者〜って感じでつよくてかっこいいなとおもう。

あとこれ言いたくて。
【あの!靴臭いんだったら、片足だけじゃなくて両足分脱臭しないと意味なくないですか!!!!】
両足になってた!!!!両足分脱臭してた!!!!!!

わたしは初日のプレビュー公演よりも本公演の方が「すごく良くなった」と感じている。良し悪しという言葉は使い所が難しいけれど、それを自覚した上であえて「良くなった」と言いたい。この作品は公演期間中に育っているのだから、良い方向に変わっているに違いないのだから。「公演期間中に育つ」って、「戦いの中で成長する」主人公っぽさあるね。千秋楽にはどうなっているのだろう。アフタートークではどんな話が繰り広げられるんだろう。あー観たかった、聞きたかったです。
そして、わたしが書いたことがそもそも間違っている可能性もあるけれど、わたしが気づいていないところ、まったく見えていないところでの変化がたくさんあるはず…。そういう細かい要素がたくさん影響しあって、「プレビュー公演より本公演の方が良い、すごい」ってことになっているはず。ゼロコのすごいところは、柔軟に臨機応変に作品をつくりかえられる勇気とテクニック、作品をより良いものにしていくぞ!という貪欲さ。そして観客たちに、つくりかけ室なども経て、作品が育つさまを見せてくれるところ。他では味わえないとても幸せな体験をさせてもらっている。作品を観て味わうこと以外にも、他の人と作品について話し合うことで、新しい見方を知ったり、気づかなかったところに気づいたり、そんな時間も愛しい。(お話してくれたみんなありがとうchu...)

最後にわたしの好きなシーンをひとつ挙げて締めます。
角谷さんがお花を積むとき「ぷてぃ♡」って言うのが好きです。「プチっ」でも「プツン」でもなく、「ぷてぃ♡」なの。でも友達には「ぷり♡」に聞こえてるらしい。真相はいかに。わたし、ゼロコ、好き。大好き。

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