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ぬけない

なかったことにしようとして、

落とした その水滴たちが

なにかにあたった、かと思えば私の、

わたしの心臓にぬちゃとこびりつく

既にしんだものがわたしの心臓に傷をつけるなど

午前五時三分に目を冷まし、こころを醒ます

もういいかい、もういいよもういいよ、もういいよ

もういいよ

もう、いいよ

四列席の夜行バスで家に帰るとき、水槽の中の無数の鰯が大きな魚から逃げようと群れを崩すとき、頂いたQRコードを読み取るとき、

なんにもなくはないけれど

わたし、早くネットの中、あるいは外でみんなと乾杯がしたいわ

未成年だけど許してね、生きた心地はないけれど

わたし、早く電信柱の足元に根を張る蒲公英の葉を食べたいわ

交通費は各自の負担で、持ち物はおおきめの財布と、

それから青い目をしたなにかを抱いて

午後三時を過ぎるころ、おおきな川を渡るのよ

咀嚼音に耐えながら

鼓動に膜を貼りながら

あしに温風を浴びながら

寝坊は春だときまっているの

2019.03.22

#詩