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「数多のふたり」を肯定すること ー加賀美ハヤトcover「ハミングバード」に寄せてー


FANTASIAで披露され、ファンの間で「亡霊」を名乗る者を続出させた加賀美ハヤトによるNovelbright「ハミングバード」カバーが、歌ってみた動画として発表された。

かなり主観込みの感想ではあるが、お読み頂ければ幸いだ。

※なお、この記事は加賀美ハヤトがカバーした「ハミングバード」への感想であり、原曲に対する考察ではないことをあらかじめお断りする。


自分に向けて歌われているという幻

私がこの歌で強く感じたのが、「数多のふたり」が肯定されたということだ。

私たちリスナーは、現実的に考えれば チャンネル登録者数67.3万人のひとりでしかなく、もちろん彼がひとりひとりを知っているということもなければ、直接的に親密な関係性を望むべきものでもない。

それでも、私たちが彼の配信で笑い、彼の歌を聴いて時には泣き、時には強く励まされる、その瞬間に彼の心が自分に向けられたような錯覚に陥ることを、彼自身の歌によって肯定されたような気がした

そして、加賀美ハヤトが歌う「ハミングバード」に登場する「秘密の場所」とは、私たちが彼と繋がれたと感じた、ともすれば「夢」と切り捨てられそうな瞬間そのものを指しているのではないだろうか。

特別じゃないからこそ、ふたりになれる

そして、「自分だけが彼と2人」というわけでは決してないという事実が、逆に、「特別ではない自分も、歌を通して彼とふたりになれる」という安心感をもたらしてくれるのだ。

私事で恐縮ではあるが、私は人との距離の測り方をよく間違えてしまう。昔から、「親友」であったり「恋人」であったり、名前のついた関係性を以って「相手から特別に思われること」を求め過ぎて人に依存してしまい、逆に相手から距離を置かれてしまうということを繰り返している。

そんな私だが、加賀美ハヤトの歌う「ハミングバード」を通して、「大勢の中のひとりに過ぎなくても、それは繋がりと言えるのではないか」ということを初めて知った。

この感情は幻かもしれない。それでも、特別な存在でなくとも大切な人とふたりになれたと思える瞬間を知ったことで、大袈裟ではなく私は生きていける気がするのだ。

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