あやぽんず

海とこしあんと黒柴銀太がすきな塾屋さんです。ものをかきます。短歌・エッセイのようなもの・そのほか。第四十五回全国短歌大会 東直子選者賞。三井住友信託銀行主催・第四回わたし遺産大賞受賞。 文をまとめているマガジンは「書くことが楽しくてよかった。」です。書くことをしたい。
固定されたノート

猫の手首

「#社会人1年目のわたしへ」

普通の人は、就職が決まったとき、どんなふうにするのだろう。しずかにガッツポーズをしたり、友だちに連絡して飲み明かしたり、家族でパーティーをひらいたりするんだろうか。華々しく、楽しい日として記憶されるものなのだろうか。

わたしの就職決定の日は、とてもしずかだった。その日の日記を、わたしは未だに、しっかり直視することができない。

「こんなにがんばったのに、いい子じゃ

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まだ書かれていない話のための挿絵

まだ書かれていない話が、世の中にはたくさんある。

この挿絵は、まだ書かれていない物語のためにかいた。

「二歳という名の犬」

「トマトの多すぎるハンバーガー」

「卵焼きフライパンに憧れるコップの話」

「あるテープカッターのための歌」

「ポンパドウル夫人の狂騒」

「トマトについて考えたことがあるかい」

「ぼくにはわからない窓の開け方」

「時計を忘れた日」

などがそうだ。

物語は書

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犬を飼うまで知らなかったこと

犬を飼うまで知らなかったことが沢山ある。

たとえば尻尾を振らないことだ。

尻尾はうつくしく丸まっていて、機嫌によってぶんぶん左右されることなどない。

それから伸びをすることも知らなかった。

人間のように、寝起きはちゃんと伸びをする。前足と、後ろ足を伸ばす。

それから散歩が嫌いなことも、犬を飼うまで知らなかった。

いったい、犬というのは散歩を至上の喜びとするいきものだと思って

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あること、ないこと

吉田篤弘「あること、ないこと」について書きたいと思う。

でも、実はまだ、読みおわっていない。119ページまでをいっきに読んだところで、もう、たまらなくなって、書いている。

このたまらなさは、何に似ているかと考えて、こんな光景が浮かんだ。

***

駅のホームに立って電車を待っている。となりは親子連れだ。お兄ちゃんは、6歳くらい。妹は、2歳くらいだろうか。なんでも、「そっちがいい」かつ「じぶん

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短歌の味わい方

短歌の味わい方

 塾の講師という難儀な職業に就いた今、短歌と「教材」として向き合わなければならないことがある。しかも、「定期テストで点数が取れるように」教えなければならないが故に、教科書に書かれているとおりに講義をする必要がある。学校の先生の苦悩に思いを馳せつつも、「体言止め」や「擬人法」、「次の鑑賞文はどの短歌をについて述べたものか答えなさい」というような問題のコツを説明する。そうしてテスト対

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