小説: 何も無かった。(仮タイトル)

「別に誰でもよかったんだ。あいつが憎かった訳じゃ、ない。」

「  誰でもよかった  」のならば何故彼女をを標的にしたのだろう。

理由もなく私の娘は殺されたのだ。

今まで娘に私が費やしてきた時間、愛情、金、全てが水の泡だ。一体どう償うつもりなのだろうか。

あぁ

あの男は私の娘をどう思いながら殺したんだろうか。どうせ犯人は"ロリコン"だろう。
きっとそう。

幼いうちの娘を汚して犯して殺して

ありふれたただの快感を得たのだ。そんなものの為に彼女を使ったのだ、理由もなく湧き出る性欲を満たすために理由もなく人を殺したのだ。

でも

それならば尚のことなぜ娘なのかわからない。いや、理由はないのだろうけども。

彼女は病的なほどに美しく儚げな少女だった。
そう、もう「だった」なのだ。

性欲を満たせない奴に性的興奮を覚えられても仕方の無い程に、彼女は美しかった。


しかし前見た心理学系統の資料には、「ロリータ・コンプレックスの人間は幼さが強く残る、大人しそうで、地味な子を選ぶ傾向がある」と残されていた。
もっとも、娘は…それと真逆だったはずだが。

…本当に可愛い子だった。
大きな瞳に長い睫毛。

雪のように白い肌。

6歳とは思えないほどの、例えば悪いが化け物のような雰囲気の、美しく少しだけ大人びたような、憂いを帯びたような顔立ち。

最悪だ。どうして私の娘なんだ。
もういっそ殺してしまいたい。私のこの手を汚してでも!

こんな事件のせいで彼女の姉の憐花までも不登校になってしまった。

憐花は…あの子も美しい子だ。他の子では到底太刀打ちできない程に。

しかし…何というのだろう、表情が乏しいのだ。

ここ数年は一度も楽しそうに笑っているところも、怒っている所も見たことがない。
唯一見るのは殺されたあの子と同じような、いや、それ以上にミステリアスな、あの、憂いを帯びた哀しげな笑顔だけだった。

昔からあんな笑い方をする娘だっただろうか。

いや、違う。ような気がする。
昔はもっと心から笑っていた。多分。
可愛らしい、明るい女の子だった。はずだ。

いつからだろう

あんなになってしまったのは。

思い出せない。何故?思い出せない。頭が痛い、駄目、あ、そうだ、そうだった。あぁ、なんでわたしはいつも______



「お母さん!!!!」

ああ、私はまたダメだったのだ

「お母さんってば!!!ねぇ!!!」

憐花?どうして泣いているの?
「最善は尽くしました。」

はあ、何の?

「お母さん…お母さんまで私を置いていくのね…」

置いていくって、私をどこに連れて行くのよ

「そろそろ…」

最後?どういうことなの、

「うわぁああ!!お母さん!ねえ!!起きてよ!!!お母さん!!!」

あ、死ぬんだ私、意外とあっけなかったな

伝えられずに終わるんだ

ごめんね


ーーーーーー




「おかあさん……ぐすっ…」

「可哀想に… 「綺麗な子なのにねぇ…

「お気持ちお察しします。


馬鹿な人達だ。容姿が綺麗でなんだっていうんだ。

「綺麗」 なんて何の価値もないのに

妹は綺麗なせいで殺されたのに

私は…… 

綺麗なせいでこんなに毎日、毎日どれだけの、どれだけの思いをしてるのかなんてあの人達にはわからない

妹が死に

お母さんが死に

時間は楽しそうに過ぎていく。私の気持ちの整理をする暇もないくらいに楽しそうに。

遺品整理とかお香典とか、高校生の私にはよく分からない事ばかりだ。

いや、わかりたくもないのだけれども。



「れんちゃん…大丈夫だったかい?これからはどこに住むんだい?」

うわキモ…誰?

「あぁ、僕の事忘れちゃったかなぁ」

「はい、すみません…」

「いいよぉいいよぉ 僕はね、君のお母さんの弟なんだよぉ」

お母さんの弟?こんなに気持ちの悪い人が?

…嘘だ、絶対にこんなキモイ人がお母さんの兄弟な訳が無い、犯罪者が紛れ込む葬式なんて最低だ

「あの…私はこのままここに住みます。近所の人が支えて下さるので…」
わかったら消えろよ、キモジジイ。臭いんだけど

「ええ!?1人は危ないよぉ、おじさんと住も?ね?」

興奮して荒くなった息、
膨張する下半身、
危ないのはお前に犯される腐った未来のことか?

気持ち悪…
何このきったねえカス。本当無理なんだけど近づくなよブスがうつるんだよ死ねよ

お前みたいな汚いヤツから死ぬ世の中になれば良いのに。

「気持ち悪い…」

「…おじさんに向かってそんなこと言っていいのかい?」

「気持ち悪い人に気持ち悪いと言って何が悪いんですか。自分の下半身と顔、鏡でご覧になってみたらどうです?そっくりですよ。」

ガッ!

えっ な、なに? やだやめて!

「はぁ…ムカつく餓鬼にはお仕置きが必要だな…」

「やめて!離して!誰か!!ひっ…!!」

「ん…ふぅ…はぁ…おっきくて綺麗な胸だね…ふっ…あームラムラするなぁ」

「やっ、やだ…やめてよっ…!!!!」



「 おい !!!! なにしてんだ!!!!」

えっ…この声は…

「だ、誰だ!ぼ、僕達の邪魔をするなぁ!」

痛々しい音とともにジジイが倒れた。


「れん!!大丈夫か!」

みゆちゃんだ…来てくれたんだ…

「うっ…ぐすっ…気持ち悪かったよみゆちゃん…みゆちゃん…っ」


みゆちゃんはずっと私を抱き締めてくれた。泣き疲れて寝てしまった私を。誰にも愛されなかった私を。



「おはよ、れん」

あ……もう朝だったんだ……

「みゆちゃんまだ居てくれたの?」

「うん、あのね、私ここに住むことにしたから」

え?
ここに住む?

「いつでもれんのこと守れるようにしたいんだ。駄目かな…?」

「ううん、夢見たい。夫婦みたいだね、へへ…」

「ふふ、可愛いなあ。」

「あ…」

みゆちゃんの舌が、昨日汚いジジイに舐められた所を這っている。幸せってこういうことなんだぁ。

「もっとして…」

その言葉だけで、駄目になってしまった。
大好きだよ、みゆちゃん、どこへも行かないでね




れんを慰めると幸せになる気がする。
何度も何度も消毒するように 、昨日と同じところを舐めた。オジサンとの間接キスみたいでちょっとやだったけど。

気持ちよさそうなれんを見てると駄目になりそうになる。
もっと声が聞きたい。
欲しがる姿を見たい。

寝ている間に何度もした。

起こしてセックスもした。道具で。

愛し合っている私達には繋がれる物がこれしかないから。

れんには内緒でビデオを撮った。絶対にわたしから離れないようにした。脅したくないけど仕方なかった。

逃がしたくなかったから。

2人で暮らし始めた私たちは、毎日した。


朝起きて、昼は気まぐれで出先で。
もちろん夜は彼女と快感へ溺れた。お風呂で溺れるよりよっぽど気持ちがいい。
気持ちいい。ずっと溺れてたいな。2人して学校を辞めた。私たちは堕ちていくことにした。誰にも邪魔されないように

毎日して、れんのお母さんと妹の保険金で暮らした。最低だな、と思った。


私たちはセックスと金でしか愛を伝えられないから

とにかくたくさんして、金でなんでも買った。






お母さんと妹が死んで何年か経って

私たちは大人になってしまった。

ごめんね、私は貴方達が死んだことより

みゆちゃんと暮らせる幸せの方が可愛かったから

もうね、忘れちゃったの。

許さなくていいけど、許してね。



続きはまた〜

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