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嘘日記 7/18「比喩」


人の気持ちを分かることは一生できないのに、想像することはできる、ということが、驚いてしまうし怖い。

とはいえ自分が考えていることでしか人の気持ちは考えられないので、それはきっと、



「自己を拡張させているんだよね」

「そうかも」

「他人の人生に、自己を拡張させている。自分の支配下にあると思っている。だから、自分がコントロールできないと思うとイライラするんだ」

「ただ、難しいね。そういうのが全くないのが、いいわけではないし」



そう言いながらそのとき全く別のことを考えていた。

それが人と一緒にいることでもある、それが結婚の狂気でもある…と思っていた。


上野千鶴子が結婚していたことについて、ちょっとザワザワしていたけど、それに際して上野千鶴子が昔書いたコラムみたいなのが掘り起こされていて、詳細は忘れたけど、

「結婚という行為は確実に狂っています。他人によって自分の人生が変えられても良い、自分が他人の人生を変えても良い、互いがその約束に同意している。とても狂っています。そして、それを知りながらその約束を結ぶことは、とても素晴らしいことだと思います。」


みたいなことを言っていた。と思う。



好きな小説に、

「世界をすり潰して、その横で微笑むあなたを見たい」

という一節が出てくる。


「彼女ではなく、むしろ彼女を取り巻く世界のほうを変えたかった。ベイビー、ベイビー、ベイビー…」




自分以外の人間に自分を冒されたり、あるいは冒したり、そういう狂気を一緒に頑張りたい。


それが結婚なのかもしれないと、私は考えていた。

こうして目の前にいても、別のことを考えられるのも、人といることの一部だと思った。





「文フリとかさー、出してみたかった」

「出せばいいじゃん」

「えーでも、何書くのかなって」

「やっぱりエッセイじゃないの」

「そんなさあ、いいもんじゃないよ」

「人生と感性切り売り」

「やあ、誰も欲しくないよ」






「比喩だけじゃ生きていけないんだぞ。現実を生きろ」と言われたので、「わかった。へへへ」と笑っておきました。





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