健康診断
会社の人に元気がない。何が起きたのかよく分からないけど出社できなくなってしまった。
ほんの2週間くらい前、その人も含めて5人くらいでお昼ごはんを食べに行った。和食の定食屋さんで、私はお刺身定食を、その人は焼き魚定食を食べていた。
その人は魚を食べるのがやけに上手くて、「何でそんな上手なんですか?」と聞いたら「なんか、できる。と思ってやったら、できました」と言っていた。
その時、好きだ…と思った。
私は、好きな人を、ただ好きだと思うだけでそれ以上は何もできない。飲み会とかでちょっと話せたらいいなあと思う。
でも、そんなこと何も関係なく、その人には元気がない。
会社ってよく分からず、その人のために何かしたいと思っても、会社の人という以上の先には行けないで、その人を思うなら行かないべきで、そういう間柄の人間が与えられる幸せを抱えて待っている。
昔はそれが寂しかった。でも今は何も寂しくない。
全員と溶け入るように仲良くしたい、その人の一部でありたい、その人にとって大切な存在でありたいとか、恐ろしいことだ。
なるべくみんなから、いる、ある、とだけ思われたいし、思っていたい。そのために、私は線とその人を守る。
ただ、私が、「結婚したら両家顔合わせとかあるじゃないですか。その時なんか割烹とかだったらお魚出るじゃないですか、絶対。そしたら上手く食べられないから、嫌だなあ、手巻き寿司にしようかなって思ってるんですよね」とか言ったこと、
元気がないその人の、意識にも及ばないようなところで、ぼんやりと何かの意味になっていたら救いがある。
きっと、なっている。
夏祭りに初めて来た赤ちゃんみたいに、覚えてなくても、何かどこか、生きていくところの一部になっている。
そうでないと、もう、
どうして、生きているやら…
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