国連とe-Residencyが発展途上国の起業家支援で協力

Estonia e-Residency チームの Daniela Godoy 氏の下記記事の翻訳です。

(原文:https://medium.com/e-residency-blog/un-and-e-residency-join-forces-to-empower-entrepreneurs-in-the-developing-world-ea834005f85e )

UNCTAD(国連貿易開発会議)の「e-commerce Week(eコマース週間)」が開催され、世界中の政治家や起業家がジュネーブに集まりました。そこでは、エストニアのe-ResidencyプログラムとUNCTADが画期的なイニシアチブ「e-Trade For All」に向け、どのように連携しているのか、その経緯が話される。e-Trade For Allは、より多くの人がオンラインでビジネスを始められるよう支援することで、グローバルな成長を促す取り組みだ。

「我々はより透明性が高く、非排他的で、他者を思いやり、他者を支援する世界を作っていかなければならない」…ジャック・マー氏の言葉より

ジャック・マー(Jack Ma)氏は、オンラインビジネスを開始する以前、教師の職に就いており、33歳になるまでコンピュータを所有していませんでした。

現在の彼は、中国最大のオンライン小売業者を抱えるアリババ(Alibaba)グループの創設者およびチェアパーソンとして、世界をけん引するインターネット起業家です。そして、彼はUNCTADの特別顧問として、eコマースや企業の恩恵を世界中に普及させるという使命を負っています。

ジャック・マー氏は4月下旬のeコマース週間開催期間中、ジュネーブに滞在していました。ここでは、UNCTADが世界中の有力な起業家と政治家を集め、どうすれば世界中の、より多くの人々がオンラインで取引できるようになるのか、その方法について話し合いが行われました。

UNCTADの画期的な新イニシアチブ、「e-Trade For All」は、発展途上国の起業家がeコマースにアクセスできるよう支援するもので、エストニアのe-Residencyプログラムもパートナーとして創設に携わっています。

2000年、エストニアは国家として初めて「インターネットへのアクセスは人権だ」と宣言し、その概念は国連およびさまざまな国によって、様々な形で支援されました。世界中でインターネットへのアクセスが急速に拡大する中、誰でもオンラインで企業できるように支援するという形で、エストニアは今再び世界をリードしています。

ジャック・マー氏は、今後30年間で、全ビジネスの90%がオンラインになると予測しています。しかし、現時点では世界人口の多くが、その成長の恩恵を受けることができずにいます。多くの場合、その理由は「住んでいる場所」によるものです。発展途上国の人々や女性をはじめ、時流から取り残された人々は、今も非常に大きな課題を抱え、eコマースにアクセスしにくい状況にいます。

企業設立や経営に伴う財政的および行政上の障壁が高すぎるのかもしれないし、彼らのビジネスがオンラインで信頼を得られないのかもしれないし、国際的な決済プロバイダといった必須ツールを入手できないのかもしれない。

だからこそ世界の起業家のポテンシャルを引き出すために、エストニアのe-Residencyプログラムが必要なのです。つまり、意欲的な起業家は、エストニア政府が発行する安全なデジタルIDを申請し、それを利用して最小限の行政手続きでEUの企業を設立し、運営していくことができるのです。

4月25日、e-Residencyプログラムのディレクターを務めるカスパー・コリュス(Kaspar Korjus)氏はジャック・マー氏らとともにハイレベル会議に参加し、その後、スキーム拡大に役立つe-Trade For Allの新規オンライン・プラットフォームの立ち上げ支援を行いました。

e-Residencyプログラムは4月27日、あるハイレベル会議でUNCTADおよび国際貿易センターと共同議長を務め、発展途上国の中小企業がeコマースの恩恵を受けられるよう、現実的な取り組み内容の決定に参加。基調講演はイギリスの国際貿易大臣、リアム・フォックス(Liam Fox)博士が担当し、さらにe-Residencyの法務・コンプライアンス担当責任者であるVictoria Saue氏は、同プログラムがこれまでにどのようなソリューションを提供しているか、について語りました。

e-Residencyは現在、開発のパブリックベータ段階にあります。つまり、プログラムから利益を得ている実際の起業家のフィードバックに基づき、継続的に改善が加えられています。

つまり、この取り組みには、世界を変革させる大きなポテンシャルがあり、そのためG20はすべての参加国がe-Trade For Allとその主要政策分野を積極的に支持するよう勧告しています。

e-Trade For Allの実行

世界初となるe-Trade For Allの実行例の1つが、インドのデリーで進行しています。デリーでは、エストニアのe-Residencyを通じてオンラインビジネスを開始するために女性への支援が行われています。

インド工科大学デリー校は、WEE(Women Entrepreneurship and Empowerment、女性の起業とエンパワーメント)というインド政府の科学技術省が支援するイニシアチブを開始しました。

現在、発展途上国の女性はインターネットアクセスの恩恵を受けられない可能性が最も高く、WEEは参加者がビジネスアイデア構築をサポートし、それをe-Residencyを通じて実現できるよう支援しています。

WEEは、インドの女性の起業を目指しています。

インドのエストニア大使Riho Kruuv氏は、エストニアとWEEには「女性起業家に力を与え、国際市場への拡大を支援する」という共通の目的がある、と説明しています。

「物理的な境界をなくすことで、生まれた場所にかかわらず、デジタル世界で生じた新たな機会を人々に提供できるのです」とKruuv大使は言います。「これを行うことで、彼女たちは自国の成長の積極的な担い手にもなっていきます。」

インドのデリーに住むSakshi Gupta氏は、現在エストニアのe-Residencyを申請中。

デリー出身のSakshi Gupta氏も同プログラム参加者の一人です。彼女は常に、自分でビジネスを立ち上げたいと夢見ていますが、WEEイニシアチブに出会うまでは知識や自身が欠けていたといいます。

「指導者の方々からは的を射たアドバイスをもらうだけではなく、人生でなにか大きなことを成し遂げるための士気をずっと高めてもらっています」とGupta氏は言います。「そういった意味で、WEEは私の人生を変えてくれたのです」。

最近インドの人々は、次第に高齢の親族と離れて暮らすようになっているため、Saksi氏は、彼らがつながれるようなオンラインビジネスに好機を見出しました。彼女が立ち上げたZingoboxでは、若い人たちが年配の親族向けに、季節やホリデーシーズンに合わせたプライベートギフトを贈れるようなサービスを提供しています。

自身を「スタートアップのオタク」であると、誇らしげに自称するGupta氏は、エストニアが先進的なデジタル社会であり、スカイプ発祥の地であることは知っていました。しかし、WEEプログラムに参加するまでの彼女は、自分がその国にデジタルで参加できるとは、想像もしていませんでした。

「エストニアを訪れたこともない私ですが、e-Residencyプログラムには素晴らしい機会を与えてもらっています。電子居住者になった今なら、訪れたこともない国のデジタルの恩恵に、簡単にアクセスできます」。

エストニアから世界への贈り物

4月末、世界中の政策立案者は、e-Residencyがより多くの起業家に力を与えるポテンシャルがある、ということについて考察を行います。その際には、Sakshiをはじめとする人々の経験が脳裏に浮かんだことでしょう。

e-Residencyプログラムのディレクターのカスパー・コリュス氏は、UNCTADでのスピーチで、e-Residencyは単にエストニアのプロジェクトというだけでなく、すでに世界137カ国の起業家に力を与えていると説明します。

「小規模の企業も、グローバル貿易に統合することを待つ必要はありません」とコリュス氏は言います。「インフラ不足をすべての国が克服するのを支援する傍ら、彼ら起業家を応援してみませんか?」

「すでに国際化され、環境の整ったe-Residencyのプラットフォームを導入すれば、地域全体が即座に力を得ることができます。世界各地の企業 金融会社、政府そして組織が、自らの市民や顧客の利益のために、このプラットフォームに統合することができます」。

より多くの人々にオンラインでビジネスを開始する機会を提供することによって、e-Residencyは個々の起業家を成功させるだけでなく、家族、地域社会、国の利益にも役立ちます。

2018年に建国100周年を迎えるエストニア共和国は、その100年祭の幕開けを迎えたところです。国内外のエストニア人は、同国の節目に際し、それぞれの「贈り物」を提供したいという気持ちが高まっています。

同時に、どこにいても、誰でも起業家として成功する機会となるe-Residencyは、これからもエストニアから世界への贈り物であり続けるでしょう。

e-Trade For Allの詳細情報は https://etradeforall.org/  まで。また、世界中のどなたでもe-Residencyを申請できます。詳しくはこちらへ。

国連はこのほど、エストニアが開発したデジタル居住権プラットフォーム事業を開始し、発展途上国の起業家がより容易に企業を立ち上げられるよう取り組んでいくと発表しました。

「e-Trade For All」と名付けられたこの新規プログラムは、本日ジュネーブで明らかになった。同プログラムの顧問は、アリババ(Alibaba)創設者のジャック・マー氏が務めることに。

エストニアは、政府イニシアチブの一環であるe-Residencyサービスで世界の注目を集めたヨーロッパ北東の小国で、世界で最もデジタルフレンドリーな国の1つです。誰でもわずかな手数料で、政府が発行した安全なデジタルIDを受け取ることができます。これを使えば、事業の設立、契約書の署名、報酬の送受に使用する銀行口座の開設などが迅速に行えます。

このプログラムは現在、e-Tradeイニシアチブ支援のため、UNCTADと提携しています。

UNCTADはブログ記事で、マー氏が「今後30年で全ビジネスの90%がオンラインで実行される」と予測していると記した。しかし、先進的な地域の起業家が独占的に企業を設立するにつれ、政府や銀行のインフラが貧弱な地域が取り残さるリスクがあります。

プレスリリースによると、今後はUNCTADが世界中の起業家と協力し、エストニアのe-Residencyへの登録を支援していくという。

e-Residencyのプログラムディレクター、カスパー・コリュス氏は、「中小企業はグローバル貿易に統合するのを待つ必要はありません。「インフラ不足をすべての国が克服するのを支援する傍ら、彼ら起業家を応援してみませんか?」


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