場所に依存しない起業家の新たな時代の幕開け

Estonia e-Residency チームの Managing Director である Kaspar Korjus 氏による下記記事の翻訳です。

(原文:https://medium.com/e-residency-blog/a-new-era-for-location-independent-entrepreneurs-has-begun-ece91cbf8876 )


地球上のほぼすべての人にとって、ビジネスバンキングは抜本的な変化を遂げています。エストニアのe-Residency(電子居住権)プログラムはこのたび、ボーダレスなデジタルバンキングを提供するべく、フィンランドのフィンテック企業である Holvi と提携しました。これはEUでのビジネスバンキング(そして支払いカード)を完備した、完全なるEU企業が、すべてオンラインのみで設立できる、ということです。

目次

1. e-Residencyのビジョン

2. ボーダレスデジタル国家がどのように発展したか

3. Holviでボーダレスなビジネスバンキングにアクセスする方法

1. e-Residencyのビジョン

想像してみてください。もしも、誰でも、どこにいても、会社を興してグローバルにビジネスを展開できる、としたらどうでしょうか。

起業の民主化が進むことで、世界中の個人の生活を向上させるだけでなく、家族や地域社会、そしてその国々の利益にもつながります。世界の成長を促進し、世界をより良い場所にする新しいアイデアを、製品やサービスへと変えるのに役立つのです。

しかし現在、あまりに多くの人が起業家としてのポテンシャルを発揮できずにおり、その原因の多くが、彼らがいる「場所」なのです。

ビジネスアイデアや、それを実行する才能の欠落が問題なのではありません。信頼できるグローバル企業を設立し、経営するための財政的および官僚的な障壁があまりにも高いことが多い、というのが問題なのです。

私は、ウクライナのような新興市場で、信じられないほど才能のある起業家でありながら、オンラインで製品やサービスを販売できないという人を何人も見てきました。ペイパル(PayPal)などの国際的なオンライン決済プロバイダと取引してもらえないことが原因です。また、EU内でフリーランスとして働き、もしくは小さな会社を立ち上げたいと考えながらも、その規模の事業には不要であるはずのレベルの官僚主義と苦闘している人々もいました。そしてどこにいてもノートパソコンとWiFiさえあれば仕事ができるのに、訪れる国々で常に行政的な障害に悩まされる「デジタルノマド」にも会いました。

彼らをはじめ、多くの人々にとって必要なのは、国際的に信用され、オンラインビジネスを運営するために必要なツールをすべて備えた企業を容易に設立、また運営していく能力です。そしてここで必要とされるツールが、統合バンキングや国際決済ソリューションなどなのです。

ある特定の場所で登記することは必要です。しかし、場所の移動や、国境を超えて顧客や同僚、そしてパートナーと協働する自由を求める起業家が増えている今、その地に依存するべきではありません。このソリューションは、可能な限り低コストで負担の小さなものでなければなりません。

だからこそ、我々は2年ほど前、エストニアのe-Residencyプログラムを立ち上げ、世界の起業家のポテンシャルを引き出す支援を開始したのです。

e-Residencyでは、多国籍企業向けに、エストニア政府によるデジタルIDおよび公的電子サービスへのフルアクセス権を提供する制度です。これを活用すれば、誰でもEUを拠点としたビジネスを構築し、高度なデジタルインフラを通じて世界中のどこからでも経営管理することが可能です。

これはエストニアから世界への贈り物であり、地球市民のための新しいボーダレスなデジタル国家を作り出しているのです。

このプログラムは、電子居住者、そしてコミュニティのために新しい製品やサービスを開発してくれる民間のパートナーとともに成長しています。その詳細を確認したい方は、新たに設立されたウェブサイトまで: e-resident.gov.ee。

2. ボーダレスデジタル国家がどのように発展したか

e-Residencyはベータ版からスタートしました。ベータ版はスタートアップ専門用語で、まだ不完全であることは承知のうえで、その真の価値をすでに享受している真の「顧客」からのフィードバックを基に、改良を続けていく、という状態を指します。

e-Residency開始当初、事業を不備なく立ち上げる際には、エストニアに4回入国しなければなりませんでした。

プログラムの成長を導く我々は、非排他性、合法性、透明性に価値を置いています。つまり、e-Residencyは誰でも利用できるものであり、電子居住者が立ち上げた会社は信頼できるものであるべきで、また我々自身の取り組みや改良の情報は、常にオープンにしていきます。

今では信じられないことに思えますが、開設当初は、電子居住者になり、企業登記し、業務用の銀行口座を開設する、というプロセスを完了するには、とにかくエストニアに4回訪れる必要がありました。

我々は、場所に依存しないビジネスを提供することはできましたが、ビジネス立ち上げのプロセスは、「場所に依存しない」に遠く及ばないものでした。

しかし、それでも人々はやってきました。

実際、現在は138カ国から2万件以上のe-Residency申請が行われており、電子居住者がエストニアに訪れることで立ち上げてきた新会社の数は、現在までに1600社以上です。現在、e-Residencyを通じて経営される企業は3000社を超えています。

これは信じられないほど素晴らしいことで、世界中の起業家の未来にとって重要な意味を持っています。多くの人がグローバルな市民として認識されるようになり、場所に依存せずに暮らし、働くことを選択する人が増えています。e-Residencyはエストニア共和国の力で、住む場所や移動先によって阻まれる人のいない、新たなデジタル国家を作り出しています。

幸いなことに、今はエストニアに行かなくても電子居住者になることができ、また企業登記できます。これを実現するため、エストニアの警察・国境警備隊から世界各国にある大使館まで、エストニア政府が全面的に多大な労力を注いでいるのです。

しかし、業務用の銀行口座を開設するためには、今もエストニアを訪れる必要があります。そのため、世界でも、e-Residencyを通じて起業する、ことの恩恵を受けられる人の数が制限されてしまっています。そこで、パブリックベータ版の開発段階では、銀行へのアクセスを向上させることが我々の重要な焦点となったのです。

それでも皮肉なことに、エストニアへの渡航義務を排除することが、逆に多くの電子居住者をエストニアに呼び寄せることにつながる可能性があります。電子居住者になってから、多くの人がエストニアでのコネクションを強化するようになるからです。

銀行へのアクセスを改善するための第一の選択肢は、エストニアの従来型の銀行と協力することでした。エストニアの議会は電子居住者を支援するため、遠隔地からでもエストニアの銀行口座を開設できるよう法律改定を行いました。

これによって、すぐに何かが変わるかもしれない、と望んだ人もいましたが、e-Residencyはまったく新しいコンセプトなので、制度が適応するのに時間がかかるのも無理はありません。しかし、エストニアの銀行では、実際に銀行の支店窓口を訪れる、というプロセスをビデオ通話が置き換えることはできないだろうか、といった初の試みがすでに進行中であり、これは良いニュースです。

しかし、我々はまた、従来型の銀行に依存しない別の選択肢もあるとすでに述べました。以前のe-Residencyのブログでも述べたように、多くのフィンテック企業が銀行業界を覆すような計画を立てているため、2017年には地球上のほとんどすべての人にとって、ビジネスバンキングが急進的に変わることになります。我々は、電子居住者がこの変化によってできるだけ利益を得られるようにしていきたいと考えています。

多くの電子居住者の方からすでに、エストニアでの企業経営にオンライン銀行を利用できるかどうか問い合わせがありました。しかし、現実は見かけよりもはるかに複雑であるのが常です。これらの多くは個人的な銀行口座をビジネス用口座として販売しているもので、エストニアを拠点とした有限会社を経営する電子居住者ニーズに完全に応えるものではありません。

しかし、我々は引き続きこの問題に取り組み、今回、電子居住者向けに、エストニアを訪問する必要のない、初となる完全なビジネスバンキングソリューションを公開できるようになりました。

3. 電子居住者としてボーダレスなビジネスバンキングにアクセスする方法

フィンランドのフィンテック企業 Holvi が我々とパートナーシップを結び、当デジタル国家向けサービスを拡大し、e-Residency用ビジネスアカウントを開設してくれたことをここに発表できることを、光栄に思っています。

彼らは、今後電子居住者向けに、Holvi のビジネスマスターカードおよびビジネスを成長させるための有用なツールを組み合わせた、完全なデジタルビジネスアカウントを提供する予定です。

Holvi は自身について「創造者および実行者のためのバンキング」と称し、技術の力で世界の起業家のポテンシャルを引き出す、という我々のビジョンを共有してくれています。非排他性に関しても、我々と同様の価値観を共有しているため、双方ともに世界中の多くの人々が起業やeコマースの恩恵を受けられるよう、責任を果たしていきます。

Holvi Payment Services Ltd は、フィンランドの金融監督庁の管理下にあり、公認決済機関に指定されています。Holvi が発行した当座預金口座は決済のための口座で、保管された資金は分別された顧客資産して管理されます。彼らの口座は、エストニアのビジネス規制に準拠したEU IBANコードを持ち、電子居住者が運営するエストニア企業のニーズに特化して作られています。

重要なのは、地球上のどこからでも、すべてオンラインで申請できることです。

Holvi の口座開設第一号の電子居住者は、MoonriseのPete Boraso氏でした。

Holvi のe-Residencyビジネス口座は、すでに少数の電子居住者によるテストを経ており、限定メンバーによるトライアルやフィードバックは肯定的なものでした。テストに参加してくれた皆さん(そして秘密を守ってくださった皆さん!)に感謝いたします。そして、Moonriseを経営するイタリアのピート・ボラソ氏には大いなる祝福を送ります。彼は、はじめて遠隔地から口座開設した電子居住者第一号として、「場所に依存しない」歴史の第一歩を踏み出したのです。

これから、より多くの電子居住者がe-Residencyへと集まってくるでしょう。今ではごくわずかな例外国を除いて、ほぼすべての人が申請可能です。例外国で特筆すべきなのがアメリカですが、今後同国の電子居住者も扱えるよう、Holvi は取り組みを続けています。

我々は、Holvi とのパートナーシップが、e-Residencyの価値を高めると確信しています。なぜなら、成長する電子居住者コミュニティのニーズと、Holvi が提供するサービスがぴったり一致しているからです。電子居住者コミュニティの成長に伴い、e-Residency を取り巻く起業家のエコシステムもまた成長しているのです。

今やどこからでもバンキングを伴う、完全なEUビジネスをオンラインで立ち上げることができるようになりました。我々は、場所に依存しない起業家の新時代が始まったと確信しています。

そして最後に…

私は、既存の電子居住者の皆様、特にすでにエストニアを訪れてくれた方に、大変感謝しています。

この新しいデジタル国家は皆さんのものです。そしてその成長を支えることで、世界中の多くの人々が、「場所に依存しない起業」の恩恵を受けることができます。例えば、最近では、我々は国連とともに「eTrade For All」という新たなイニシアチブを立ち上げました。これは開発途上国の意欲に燃える起業家がeコマースの世界的成長に寄与できるよう支援するもので、すでに機能しています。

私たちは、e-Residencyを通して新しいビジネスが次々と台頭するのを目の当たりにし、非常に胸躍らせています。


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コメント1件

読ませて頂きました。形式も含め大変読みやすい文章をありがとうございます。私も将来「環境に依存しない」ビジネスをしたいと思っておりますが、おっしゃられるように、どう融資を受けるか(行政的な部分)とすぐにスケールできるほどの能力がないという壁にぶち当たっています。e-Rejidency素晴らしいサービスですね、この世界は誰のためのものでもなくて「みんなのもの」だからこそ、非排他性、合法性、透明性が必要であり、ECにおいて私の考えていることも客観的にみてそうであるのかなど非常に気になります。eTradeforAllにも非常に興味があります。投稿を見て、すぐコメントしているので、またサイトを拝見させて頂きます。エストニアからの贈り物を活用させて頂き、より多くの人に向けたサービスを実現できるように自分に足りないスキルや事業の展望など改めて考えたいと思います。これからの発展、また投稿を楽しみにしております。
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