リトルフォレスト

「リトル・フォレスト」

by キミシマフミタカ

 橋本愛がひとりで故郷の山村に暮らしている。“小森”と呼ばれるそこは東北の寒村だ。畑仕事をしてとれた野菜を料理する。ときどき魚や鴨をさばいて食べる。夜は真っ暗だ。寝ていると、窓ガラスに虫たちが当たる音がする。都会で男と暮らしていたが、理由があって今は一人だ。高校生のとき、母親が突然家を出て行った記憶がある。今はじっとして羽化を待つ。料理をつくるときの彼女の表情は真剣で、それは孤独とは別のものだ。

 人気コミックが原作で、料理のメニューが主役だともいえる。あるいは里山の四季折々の自然。数少ない人間関係は、そのスパイスに過ぎない。橋本愛の棒読みっぽいナレーションが、移りかわる季節の風景によく調和している。ある意味でこれはフィクションではなく、筋書きのあるドキュメンタリーなのだろう。手の込んだご飯をつくって、一人で「いただきます」と言って食べる。しんとした孤独と美少女がよく似合うのはなぜだろう。

橋本愛のクールでぎこちない演技が秀逸 ★

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