赤鼻のトナカイ

クリスマスが近づいて定番曲がBGMで流れてきて、街歩いていても仕事しててもニュース聴いていてもハッとしていろんな思い出がよみがえってきたりする時期だ。

「赤鼻のトナカイ」Rudolph, the red-nosed reindeerも「ジングルベル」「サンタが街にやってくる」と並んで定番曲だ。アメリカで戦前に出版された児童書のストーリーに沿って戦後に作られた曲だというけど、日本では1956年からいろんな訳詞がつけられいろいろな歌手や合唱団に歌われてきた。

訳詞がたくさんあるというところが気になるけど、たぶん今歌われている歌詞の多くは「真っ赤なお鼻のトナカイさんは・・・いつも泣いてたトナカイさんは今宵こそはとよろこびました♪」というものだと思う。ほかのトナカイと違って鼻が赤くてピカピカ光っているというルドルフはみんなの笑いものだったけど、ある年、サンタが「暗い夜道はお前の鼻が役に立つ…」と橇引きの大役を任せ、いつも泣いてたルドルフが張り切って「今宵こそは…」よろこんだという訳詞だ。

失礼ながら誰の訳詞なのかわからないのだけど、ある意味で多様性を認めようとするサンタの存在の大事さを訴えているような気がする。人間社会でも効率を重視する余り、ルドルフのような人間が除けものにされて重要な役割を与えてもらえず埋もれていくことが少なくなかったし、今もそうだ。でも、視点を変えることで、多様な才能に光を当てれば、ユニークな能力を発揮する人が現れ、社会全体がより明るくなるんだと気づき始めた人も少なくない。大量生産、大量消費の時代は周囲と同じであることが好ましくて、何度でも同じことを繰り返せる力が重要視されるけど、社会は量的な豊かさを享受してきた果てに、失ってきたものにも目を向け始めている。

普通の人間社会にも、サンタのおじさんがもっと必要なのだと思う。自分の成功体験や常識に縛られず、自分にない能力に謙虚に目を向ける人がもっと多くなることが必要なんだと思う。ちなみに英語版では仲間外れだった赤鼻のトナカイが、They never let poor Rudolph join in any reindeer games…サンタのおじさんが大役を与えて仕事をさせると、All the reindeer loved him as they shouted out with glee, Rudolph the red-nosed reindeer, you'll go down in history! と周囲のみんなに愛され、歴史に語り継がれる、と書かれている。

自分がずっと赤鼻のトナカイで、サンタのおじさんなんて現れてくれないと愚痴る人も、きっと知らないうちに夜道を照らして多くの人から感謝されてきたかもしれないし、ちょっと角を曲がればサンタさんがいたのかもしれない。世の中、努力を忘れ気づかないままひねくれている人が多い。自分もその中の一人だ。理想を言えば、きっと、自分の中にサンタのおじさんがいて、自分が赤鼻のトナカイに大役を与えられる人になることなのだと思う。多様性を認めることは時にとても難しい。でも人の価値は多様だということは忘れたくない。

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