見出し画像

心と体の奥に残ってる

 小学生の頃、確か1年生か2年生。学校が終わって家に着いたが、鍵が閉まっていて家に入れなかった。

 すごくすごく不安になり、庭を抜けて道端で大泣きしていた。

 すると、80代か90代くらいのおばあちゃんに「大丈夫かい?」となだめられた。

 しばらく経つと朝勤から帰ってきた父親の車が見え、父親が車から出るとすぐにおばあちゃんにペコペコお辞儀して玄関の鍵を開けた。

 当時子供だった私はろくにおばあちゃんに礼も言えず、それどころか家が開くや否や、そもそも開いていなかった事に腹立ちながら玄関へ駆け込み、ドアをバンッと閉めた。

 それまでずっと、泣きじゃくっていた私のそばにおばあちゃんは寄り添ってくれたのに。











 中学生か高校生の頃、そのおばあちゃんが亡くなったと聞いた。




















 しかし、あの日の皮肉なまでの天気の良さ、ポカポカな気温、当時の身長の目線で見る情景、悔しくて悲しい喉の奥が詰まる痛み、おばあちゃんの手で背中や肩を撫でられる感覚。全部、心と体の奥に残ってる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?