某超大物YoutuberのYoutube liveにおける補足

先日、誰もが知るあの某超大物Youtuber様のYoutube liveで宇宙について少し語らせていただきました。Youtube liveのラグに慣れずちょっと話が途切れ途切れになった部分もあったので、一応ここで補足をしておきます。

量が多いので上から全部読むというよりは、気になるトピックを拾い読みしてください。コメント欄で質問もお待ちしています!!

自己紹介

ichinoseまたは一ノ瀬です。どっちかで読んでください。本名ではありません(笑)

株はこの1月からの新米です。6月にサークルに入るまではファンダもテクニカルも一切気にしない、優待と配当ばかりに目がいく情弱トレーダーでした(笑)いま順調に利益を出せているのは買い時さんのご指導の賜物です!!買い時さんを師匠と呼ばせていただきたいですw

宇宙の階層構造について

基本的には買い時さんのおっしゃった通りです。我々の地球から引きで見ていくと、地球→太陽系→銀河系(別名:天の川銀河)→局所銀河群→おとめ座銀河団と言った感じです。銀河群は数十個程度の銀河の集団で、我々の銀河系は局所銀河群っていうグループを作っています。そして銀河群の上位である銀河団は数百個以上の銀河が群れている集団です。さらに銀河団同士が集まって超銀河団という集団も形成しますが、これは宇宙にほとんど存在しない、とてもレアな天体です。

そして大規模構造ですね。これは図や映像がないと伝えにくいですね(笑)宇宙って銀河団よりも大きなスケールを引きで見るとこんな感じになっています。(これはシミュレーション結果の図です)

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実は銀河ってランダムに分布しているのではなく、この線(フィラメントという)に沿って分布しているのです!そして線同士が幾重にも交差した部分(中心の明るい部分など)でたくさん銀河が存在しているので、そこが銀河団となります。そしてフィラメント間の何もない空間が放送でも話したボイドです。

一個一個の銀河が小さくても、このようにフィラメント状に銀河が連なって数十億光年にわたる巨大な構造をつくっています。これが宇宙の大規模構造です。放送で述べたように「石鹸の泡みたいな構造」ということで、宇宙の泡構造とも呼ばれます。大規模構造を実感できる動画を貼っておきますね。

ブラックホールについて

放送でも述べましたが、ブラックホールって実は天体なんです。不思議な天体だけど、別に特別なものではないんですよ。放送でお話しした3種類のブラックホールについてご紹介しますね。

1. 恒星質量ブラックホール
これはみなさんが想像する、いわゆるブラックホールです。これらは太陽より30倍以上重い星が爆発して死ぬときに、その残骸として中心に残ったものです。昨年ブラックホールを直接撮影したというニュースがあったのは記憶に新しいですね!このブラックホールは太陽よりは重いのですが、いかんせん星だった頃の外層を吹き飛ばしているため重さは太陽の数倍から数十倍程度です。

2. 中間質量ブラックホール
放送では3番目に話しましたが、重さ的に2番目に重いブラックホールです。これは元々は1) の恒星質量ブラックホールと3) の大質量ブラックホールの質量差がえげつないので、その中間的なブラックホールもあるんじゃない??として考えられたものです。
実際に観測で見つかり始めたのですが、今度はこれがあったらあったで星が爆発してできるにしては重すぎるし、それにどうして中間質量ブラックホールの数が極端に少ないのか、といった新たな疑問が出始めました。今後発見数が増えることで、中間質量ブラックホールの形成過程などが明らかになると期待されています。

3. 大質量ブラックホール
これは銀河の中心に存在するブラックホールです。おそらく全ての銀河の中心に、この大質量ブラックホールが存在すると考えられています。このブラックホールが元気に活動している銀河のことをクエーサーとも言います。天の川銀河では射手座A*という天体が大質量ブラックホールだと推定されています。
これはめちゃくちゃ重くて、最低でも太陽の10万倍以上重いと見積もられています。こんな重いブラックホールがどうやって作られたのかっていうのは現代天文学の重要なトピックの一つです。
この大質量ブラックホールがビッグバンから138億年も経過した現在の宇宙だけで見られるならまだわかりますが、何とビッグバンから14億年くらいしか経っていない初期の宇宙でも大質量ブラックホールが見つかっています。恒星質量ブラックホールを合体させまくって作るには数も時間も全然足りないので、なぜ若い宇宙でこんな重いブラックホールがあるのかという謎が多くの天文学者の頭を悩ませています。

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ちなみに、ホワイトホールという天体は存在しないと考えられています。ブラックホールは重すぎて周囲のものを(光でさえも!)取り込むのですが、決して吸い込んでどこか別の空間に放出しているわけではないからです。

宇宙が急に崩壊したりしないの?

放送で述べた「エネルギー状態が急に変わってエネルギーの差分がインフレーションの時のように解放されて崩壊する可能性がある」というのは、いわゆる真空の相転移ってやつです(wikipedia何でも項目揃っててすごい)。相転移というのは、例えば氷が水になる、水が水蒸気になるといったように状態が変化することを言います。

今の真空が本当に最も安定な状態かはわからないので、何らかの弾みで相転移を起こして我々の宇宙が完全に変わってしまうという可能性を否定できないのです。でも仮に真空の相転移が起こったとしても、私たちが気がつく前に世界は完全に消滅するので怖がる必要はありません(笑)

宇宙って膨張しているの?

宇宙は膨張しています。じゃあどうやって膨張がわかったかというと、遠い銀河ほど私たちから高速で遠ざかっているという観測結果があるからです。

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これは空間そのものが膨張していると考えると説明がつきます。ちょっと変な例えですが、あなたが焼く前のレーズンパンになったと想像してください(笑)そしてあなたの意識はレーズンパンの中心にいます。オーブンで焼かれると生地は膨張し始めますが、あなたの近くにあるレーズンはほとんど動きません。ですがパンの表面近くにあるレーズンは、生地の膨張であなたからどんどんと遠ざかってゆきます。

宇宙も同じような感じです。宇宙空間が膨張すると近くの銀河は少しだけ遠ざかり、私たちから遠くにいる銀河はどんどん遠くに離れていくのです。こうやって地球にいながら、私たちの存在する宇宙空間が膨張しているという事実を突き止めたのです。

ダークエネルギーって何?

宇宙が膨張していることは何と1929年にはすでに判明していました。ところが、最近になって宇宙は膨張速度を加速させながら大きくなっているということが分かったのです。

空間膨張を加速させるためには、そのエネルギー源が必要です。全くエネルギー源は分からないのですが、加速膨張をしているという事実があるので、そのエネルギーをとりあえず「ダークエネルギー」と呼ぶことにしたのです。天文学者はよく分からないものをとりあえずダークと呼ぶ傾向があります(笑)

ダークエネルギーとは何なのか、そしてどんな性質を持つエネルギーなのかは現在でも全く分かっていません。しかしダークエネルギーにより宇宙の将来の姿が決まってしまうので、宇宙の命運はダークエネルギーが握っています。もし膨張から一転して収縮に転じるようであればビッグバンの逆再生のように宇宙の全てが一点に戻るビッグクランチが起こり、逆に加速膨張が続けば宇宙はどんどんスカスカになり、最終的に私たちですら素粒子レベルで分解されるビッグリップが起こると考えられています。

ワープってできるの?

これはちょっと科学者としては答えづらかったですね(笑)まあ可能性としてあげたように、我々が認知していない高次元を移動することができれば可能かもしれませんね。

私たちが認知するのは空間の3次元と時間の1次元を合わせた4次元空間ですが、超弦理論M理論では11次元という7つの余計な次元を加えたら色々なことが上手いこと説明できるということが分かっています。ですので、余剰次元は実際にあるかどうかはよくわかりませんが、現状では少なくともそれを考えれば理論がうまくいく、といったところです。これは数学の虚数に似ていますね。

他の宇宙ってあるの?(multiverseについて)

私が言いたかったのはグランドキャニオンではなく、ブライスキャニオンでした(笑)

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この頂の一つ一つのように、インフレーション期に物理条件の異なる宇宙が次々に誕生したという理論が「String theory landscape」です。この頂の一つに立って周りを見渡すと、そこには無数の子宇宙や孫宇宙が誕生している風景 (landscape) が広がっているということでしょうか。そしてここの説明で一点謝罪があります。私はString theory landscapeで誕生する宇宙の数を10の500乗の500乗個と申し上げましたが、正しくは10の500乗個でした!別の何かと勘違いしていたようで盛大に盛ってしまいました。。。謹んでお詫びを申し上げます。

このString theory landscapeは別の宇宙、multiverseを考える上ではかなり原理主義的な立ち位置です。そこまで完全に異なる宇宙を考えなくても他の宇宙というのは存在します。例えば、私たちの地続きの宇宙でも光が届かない範囲は別の宇宙と考えることができます。放送で話した「空間の膨張により光が届く空間が減ってくる」ということを考えると、私たちのUniverseなんて地続きの宇宙の中であっても滅茶苦茶ちっちゃい世界なんですよ。

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もしmultiverseにご興味があれば、東大物理学教室の須藤靖さんが書かれた「不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?(ブルーバックス)」がオススメです!!とても分かりやすくmultiverseの解説をされていますよ!

火星には住めるの?

多分住めます。でもそのためには二酸化炭素メインの大気から酸素メインに変える必要がありますし、そのためにはやはり何よりも水ですね。買い時さんから「天文学者間でこうだよねって話はないの?」的な質問がありましたが、私はいわゆる基礎科学の人間なので、そのあたりは多分宇宙工学などより科学を応用する分野の方々の方が詳しいかもしれません。

あとコメントで「水がなくてもOKな生命とか考えないの?」といった質問がちらっと見えました。確かに炭素ではなくケイ素でできた生命なども一部で議論されているようですが、正直私たちは炭素以外でできた生命を知りません。ですので謎の生命体が宇宙に存在したとしてもどんな環境でどうやって生きているのか想像すらできません。そこを含めると何でもありな議論になって収拾がつかないので、科学者は地球上にいる生命を基準に考えて議論をしています。

重さって宇宙のどこでも一緒?

ちょっと紛らわしい答え方をしたので整理しておきますね。まず重さと質量の2つを整理しましょう。

重さ:重力の大きさ(体重など日常生活でいう重さはこちら)
質量:その物質が持つ固有の重さ

ちょっと分かりにくいですね。皆さんは北海道と沖縄では体重が変わるという話は聞いたことがありますか?あれは地球の緯度によってあなたに加わる遠心力の大きさが変わるからなんです。だから地球上どこにいてもあなたの固有の質量は変わらないのですが、地球からどれだけ強く引っ張られるかによってあなたの重さ、つまり体重が変わります。

で、私が放送で言った「万有引力定数」ってのはその重力の大きさを決めるものです。これが一定なので、例えば遠心力などを考えなければ宇宙のどこに地球を持っていっても地球から受ける重力は一定です。もし宇宙のどこかで万有引力定数が半分の場所があり、そこに地球を持っていって体重測定をすればあなたの重さはなんと半分になります!でも残念ながら(?)万有引力定数は宇宙のどこでも普遍であると考えられています。。。

宇宙が膨張して破れたりしないの?宇宙の端ってどうなっているの?

これは説明が難しいですよねー。。。私たちが宇宙の隅々を知ることができないから、何とも言えないんですよね。私たちが観測可能な宇宙は光が届くごく限られた範囲だけなので、その先にある「別の宇宙」がどうなっているかは観測できないんです。。。

宇宙が膨張して空間に破れができたわけではないですが、位相的欠陥とよばれる相転移の過程で生まれる境界線的な不連続領域の存在は指摘されています。これは次元によってモノポールや宇宙ひも(超弦理論とは別物です!)と呼ばれていますが、残念ながらまだ実際には見つかっていません。

インフレーションの時の宇宙ってどうなっていたの?(ダークのおかわりもこちら)

放送で説明した通り、それを知ることができるのはインフレーション時に発せられた原始重力波が観測されてからですね。そういえばコメントで重力波って何?って質問がありましたが、作者は私ではありませんがここのまとめを見ると分かりやすいと思います(笑)

そしてインフレーションを光の望遠鏡じゃ見られないって話をしましたが、これは宇宙の晴れ上がり以前の光が私たちまで届かないからです。宇宙が誕生して間もない頃は高温・高圧という地獄なような状態だったので、全ての原子は電離してプラスイオンとマイナスイオンに別れていました。なので光が電子などにぶつかってまっすぐ進めず、私たちのところまで当時の光が届いてこないのです。その後宇宙が膨張して冷えるとイオンがくっついて中性的な原子となり、光は散乱されずまっすぐ進めるようになります。その出来事を宇宙の晴れ上がりと呼び、私たちが光で見ることのできる一番遠くの宇宙の姿です。宇宙の一番遠い姿はこんな感じです。

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この宇宙の晴れ上がりの光はあらゆる方面から電波として飛んでくるので「宇宙マイクロ波背景放射 (CMB)」と呼ばれています。あ、そうそう。ダーク好きな皆様に朗報です!この宇宙の晴れ上がりの後、初代銀河が誕生するまで宇宙を照らす光源が存在しませんでした。その期間のことを、宇宙のダークエイジ(暗黒期)って呼んだりしています。ほかにもダークギャラクシー(暗黒銀河)、ダークネビュラー(暗黒星雲)、ダークマター(暗黒物質)、ダークフロー(暗黒流)など、宇宙はダークであふれています(笑)

地球の自転って遅くなっているの?

まあ力学的に遅くなるのは妥当かなとも思ったのですが、正直聞いたことはありませんでした。調べると国立天文台のQ&Aにその答えがありました。なるほど、潮汐力の影響を受けるのですね。勉強になりました、ありがとうございました!

人類は太陽系の外には出られるの?

まあワープでも使わないと難しいですよね(笑)太陽系の外に出た初めての人工物を「チャレンジャーか何か」と言いましたが、コメント欄でどなたかがボイジャーと指摘してくださりました。ありがとうございます!

wiki情報によるとボイジャーがいま224億km離れたところにいるそうなのですが、太陽のお隣さんの恒星はプロキシマ・ケンタウリという約4.2光年~39兆km離れた星なので、現在の科学技術では隣の星に行くことすらいかに難しいかをわかっていただけると思います。。。

太陽って将来どうなるの?

太陽は水素をヘリウムに変える「核融合反応」を行うことで燃えています。燃料の水素を使いすぎるとどんどん軽くなって太陽が今の形を維持するだけの重力がなくなってしまうので、太陽の外層がどんどん膨らんできます。そして金星や地球の軌道をすっぽりと覆うほど太陽が大きくなるのです!ここまでくると地球は灼熱地獄になってしまい、海も全て蒸発してしまうので私たちはもはや住めません。一刻も早く大いなる宇宙へ旅立ちましょう!

その後太陽はますます大きくなり、もはや星の形を維持できなくなって外層が四方八方に広がってゆきます。この状態を「惑星状星雲」と呼びます。この惑星状星雲はこんな綺麗な天体なのです。私たちの子孫が宇宙に飛び立ち、かつての母なる太陽の見せる最後の一花をぜひ鑑賞してもらいたいですね!太陽が一生を終えるのは、今からおよそ50億年後と推測されています。

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最後に

宇宙ボイスで聞き取りづらくて申し訳ございませんでした。あとYoutubeの音声を聞きながら話したので、ラグで買い時さんと喋りが被る場面が多くて申し訳ございませんでした。。

live終了後、記憶を頼りに書いているため抜けがあるかもしれません。こうして振り返ると、地球、太陽系から始まり銀河団や宇宙の大規模構造といったスケールまで、そして果てには素粒子論や場の量子論が飛び出すなど守備範囲が宇宙一広い質問コーナーとなりましたね(笑)大切なlive配信の時間に対談してくださった買い時さん、株の話じゃないのに聞いてくださった視聴者の皆様、本当にありがとうございました!!

最後にMitakaのご紹介をしておきます。開発チームの4d2uは本当に職人気質の人たちが集うすごい集団です!