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平成最後のNHK紅白歌合戦に、「サラリーマン」という平成の死語のポジティブな発露を見た

あけましておめでとうございます。

今年のNHK紅白歌合戦は、総合司会の内村光良が放った「なんか…幸せだ~」に象徴される「平成の幸福の寄せ集め」のような番組になりました。

「寄せ集め」というと少々けったいな、甘くておいしいものは全部詰め込みましたというファミレスのパフェのようなイメージがありますが、まあその通りなんだから仕方ないですね。
天童よしみの歌っている横でムキムキのお兄さんたちが筋肉体操を披露し、その後武田真治がサックスを披露する様はさながら、生クリームとプリンとポッキーをこれでもかと乗せたファミレスのパフェのようでした。
それでもおいしい、それでも子供を幸せでいっぱいにしてくれるのがファミレスのパフェです。
平成の幸福をこれでもかと詰め込んだ今年の紅白のコンテンツは、我々を幸せにしてくれました。

そんな中で、ひときわ輝いていたのが、何と言ってもサザンオールスターズの桑田佳祐。平成という一時代を築き上げた最強のエンタメ集団のトップとして、見事に番組を幸福で締めくくっていました。

みんな大好きな『希望の轍』でうっとりさせたかと思えば、すぐにフレディ・マーキュリーも顔負けのコールアンドレスポンスで『勝手にシンドバッド』に移り、大御所も若手も、演者も客席も、会場もお茶の間も関係なくひとつにして盛り上がらせてしまいました。

そこで、彼の本領発揮を見ました。

ご覧になった方なら覚えているかと思いますが、
勝手にシンドバッドの序盤から「サブちゃん!サブちゃん…!」と北島三郎に呼びかけ、彼の周りの中堅タレントのアテンドで宴台中ほどまで連れてこさせます。そして、にこにこする北島三郎にひたすら絡む、絡む。「今何時!?」でもしっかりマイクを向けていました。

そして、ユーミンとの掛け合い。サブちゃんとの絡みがひとしきり終わった後は、ユーミンのもとへ。「ユーミンありがとうございます」といいながら「胸騒ぎの腰つき」で見事に男女の絡みを披露し、コールアンドレスポンスでも、低い声で楽しそうな彼女の歌を引き出していました。

今回の紅白歌合戦における、歌謡界トップ2の大御所たちとの絡み。単に自分が盛り上げるだけでなく、そこにいる最も偉い人をステージの中心に借り出して主人公にし、楽しくしてあげるサービス精神。桑田佳祐が並のアーティストではないと理解できてとても感動しました。
その様子はまるで、大企業の忘年会で、一年に一度はと顔を出した大御所役員を、部長職の自身も偉いはずの人が身体を張って盛り上げているようでした。まさに『サラリーマン』という概念です。ただ、『サラリーマン』のカラオケは「みんな楽しくない」ことが往々にしてあります。そうではなく、大御所役員も、部長職も、中堅社員も若手もみんな、全員が楽しかったのが、今回の『勝手にシンドバッド』です。

その現れは、全員がステージの中央に集まってきた曲の終わり、桑田さんが放った三言にありました。
「ウッチャン!」「櫻井くん!」「すずちゃん!最高だったよ!」
会場中のすべての空気を持って行っているのは自分であるということをわかったうえで、4時間半司会を務めてきた3人への労いの言葉をマイクを使って放ち、彼らを目立たせるような手の動きをしてあげる桑田さん。3人とも桑田さんよりはかなりの後輩のはずですし、嵐の櫻井翔や広瀬すずのような(彼からすると)若手にはまったく触れなくてもいいくらい。それなのに、司会頑張ったから、ときちんと立ててあげる。


彼の振る舞いは平成のサラリーマンながら、後進の若手のこともしっかり気にかけてあげるめちゃくちゃ仕事のできる偉いサラリーマンでした。

いち大企業の社員の言葉で"桑田佳祐"ほどの人の振る舞いを表現するのはお門違いとはわかっていますが、私が自分の会社で尊敬する役員の方が言っていました。

「偉くなるには、味方を沢山つくることだ。上の人はもちろんだけど、下の人にどれだけ好かれるか、どれだけ味方になってもらうかで、偉くなるかどうかが変わる」。

桑田さんは、別に偉くなるためにああいった振る舞いをしているわけではありませんが、自身の才能を披露するだけではなく、大御所にも気を遣い、そして、若手の中心メンバーも立ててあげる様子は、まさに「大企業で偉くなるべきサラリーマン」。上も下も関係なく、彼を見ていたすべての人が、彼の味方になったことでしょう。

『サラリーマン』という死すべき概念は、死ぬというよりも、桑田さんのようにポジティブに変換されるべきなのです。

全日本にいる社会人の上司が、桑田さんのような人格者となることを願って、2019年仕事始めに備えたいと思います。

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