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布ナプキン論①

 本文章は、山田ノジル氏「婦人科系トンデモの代表格「経血コントロール信仰」は、アレと似ている!?」https://mess-y.com/archives/15457 の記事に対して、私が同じ結論に至ったことを軽率にも剽窃と疑ったことから始まっている。山田氏には、改めて陳謝したい。大変失礼しました、改めてお詫び申し上げます。

 スピリチュアル市場における「子宮系」についての見解は、わたしと山田氏とは完全に別れている。山田氏はあくまで現代的な事象であると設定しているのに対し、わたしは極めて保守的・歴史的な問題であり、産婦人科医療に反するどころか産婦人科医療と共に(いわば共犯的に)発展、展開してきたものととらえている。その点については、論文化したものがオンラインで公開されているので、そちらを参照いただきたい。

 だからといって、一瞬でも疑った自分を恥じ入るのみである。改めて深く陳謝したい。今後はこのようなことがないよう、気を付けます。

 さて、今回の論文では「子宮系」を支えてきた、布ナプキンについては取り上げていない。理由は、わたしは基本的に、特定の言説がどう社会を反映しているのかという言説分析を主な研究手法として使っている。いろいろ議論があるが、言説分析の手法の要にあるのは、言説の「質」ではなくて「量」だ。平たく言えば、大量の資料を読み込む必要がある。

 布ナプキンは興味深い対象であり、ナプキンはこれまでさまざまに論じられてきたが、肝心の布ナプキンに関する資料は論文に耐え得るほどの量が集まらなかった。なので、今回、noteとして公開することにする。

 布ナプキンについては、2000年代以降の日本社会に広まった「スピリチュアル市場」(有元2011)の早い段階で注目されていた。記憶によれば、2000年代後半の「すぴこん」にはすでに店舗が出ていたと記憶している。

 付け加えて説明しておくと、「スピリチュアル市場」とは、呪術=宗教的大衆文化や、心の変容や自己探求、自己実現といった精神的成長(島薗2007)を求める、スピリチュアリティが市場化したものである。新霊性運動・文化(new spirituality movements and culture)の一つとも言えるだろう。「スピリチュル市場」の出現は国内外にも広まっており、近代において半ば自明的な現象であると考えている。しかしその点についても、すでに議論しているのでそちらを参照されたい。    

 「スピリチュアル市場」では、妊娠・出産を重視する商品が注目されているが、その特徴をもっとも表しているのが、「布ナプキン」の人気である。
「布ナプキン」とは生理用品の一つで、形状や使い方の点で紙製のものと類似するが、機能性や洗濯を要するなど不便な点が多い。

 それでも、女性の体や、さらには「スピリチュアル」の面で利点があるとして、「すぴこん」や「癒しフェア」、アースデイなどのイベントや、雑誌、書籍などで広く取り上げられている。さらに、雑貨屋や自然食品の店、果ては「道の駅」にあるなど、さまざまな場所で売られている。そして、その「効能」の一つとして説明されているのが、今回、恥ずかしながらわたしがわたしが問題視した、三砂ちづる氏が提唱した「経血コントロール」である。

 現代において「布ナプキン」の一部がスピリチュアルと結びついて広まった背景には、女性が自分自身の身体とどのように向き合うのかということへの戸惑いとコンフリクトが見え隠れする。そして皮肉なことに、「布ナプキン」は本来であれば無関係と思われがちな、産婦人科医療とも密接に関係している。この点について、一つづ指摘していきたい。

 その前に、一度、これまで生理用品がどのように議論されてきたのかをまとめておく必要がある。なぜなら、そもそも布ナプキンと「経血コントロール」は、生理用品の社会的機能が推し進めてきた女性の身体性のあり方を、いわば逆行する形で人気を集めてきた。さらに興味深いことに、この布ナプキンは、商品それ自体の位置においても、海外のトレンドと逆行している。

 それは、少子高齢化時代を迎えて、「産む体」をどうするかという、現代の女性の迷いそのものを反映している。時代という射程から現代の月経と女性の関係を明らかにするためにも、これまで培われてきた女性とナプキンについての議論を精査しておきたい。

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mizuho_h

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